Tea Partyの後で…


「呉羽!どうしてあんなところに?しかも・・・」
呉羽を大急ぎで迎えに来た天は、その呉羽を連れ、車で帰宅していた。
父の陰謀により、呉羽は天の知らない間に、蒼神会の茶会に招かれていたのだ。
「・・・どうせ似合ってないんですから、そんなに見ないでください」
しかもそんな姿で――その台詞が安易に想像出来てしまい、呉羽は一向に離れない天からの視線を自分から剥がしたかった。
「違うぞ!似合ってるんだ。似合い過ぎて驚いてるくらいだよ。そうじゃなくて、どうして着物なんか着てるんだ?」
取り澄ましたような、冷たい感じのする呉羽の美貌は、着物をその身に纏うことで尚更磨きを掛けている。
女性が着物を着ているよりも、呉羽に惚れ込んでいる天にとってはとても色っぽく映る。
女性は華――よく着物を着た女性がそう称されることはあるが、まさにそうだ。
「・・・天さんのお父さんに騙されたんですよ。今思えば。上納金を500万も払うだなんて・・・!」
呉羽の怒りの矛先は、着物を着せられたことよりも、高額な金をこのくらい当然だとばかりに、簡単に支払おうとした天の父に向けられていた。
「まあ、呉羽。他のふたりといろんな話が出来て楽しかったんだろ? 親父には俺がちゃんと言っておくから、な?」
迎えに行ってすぐには、“一緒に寝てくれるでしょ?”と言われ、天は有頂天だった。
しかし車に乗せ、呉羽の意識がはっきりして来ると、呉羽の機嫌はあまりよくない。
天は呉羽がしてくれたオネダリを、自分の為にも叶えたいが故、呉羽のご機嫌取りに走った。


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「克己、どうなってるんだ?これ・・・」
龍也は少々酒に酔った克己を祖母の企みの場から急いで連れ帰っていた。
そして、少々残念ではあるが着物を脱がせているのだが・・・。
「知らないよ。雅さんはぱぱっと着せちゃうし・・・。って龍也、何持ってるの?」
「いや、この際面倒だからナイフで切ってしまうかと思ってな」
脱がせるのが面倒で、その脱がせ方もわからない龍也はナイフを持ち出した。
「ダメっ!切っちゃダメ!着物ってひとつひとつがすっごく高価だし、しかもこれは京子さんの・・・」
「じゃあ仕方ないな」
そう言った龍也の顔が微かな笑いを含んでいたことを克己は気付かなかった。


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「咲綺、あれ程酒はダメだと言ってるのにちっとも懲りてないな?」
正毅は、父が勝手に連れ出した咲綺を迎えに行き、ついさっき帰って来たところである。
咲綺は茶会の席で飲んでいた甘酒で酔っており、帰宅途中の車の中では頭を正毅の肩に預けて、眠り込んでいた。
「ん〜っ・・・だってぇ、とっても美味しかったよ・・・?」
染まった頬、しかも今日は着物を着ている咲綺。
許してやろうか、なんて仏心も出そうになるが、咲綺は正毅の心配を理解していない。
「はぁ・・・。・・・全くっ!親父も勝手なことしやがって。咲綺、わかってるのか?」
わかってないだろう。そして話も聞いてないに違いない。
「暑い〜・・・。ねぇ、正毅さぁん・・・これ、暑い・・・。ね、暑いから脱がせて?」
正毅の言葉を無視して、咲綺は無意識に煽り始める。
「・・・ったく、脱ぎ終わったらお仕置きだからな?」
しっかりわからせておかないと、困ったことになる。
正毅は自分の楽しむことも合わせて、今日はどんなことをしてやろうかと考える。
自分が与えてやる全てを咲綺は何でも受け入れてしまい、あまりお仕置きは効を為さないこともあるが・・・。
正毅が考え事をしている間に、咲綺は綺麗に着物を畳んでしまっている。
すると、
「おやすみなさい」
と、三つ指をついて丁寧に頭を下げた後、咲綺はひとりで布団の中に入り、さっさと寝てしまった。
「咲綺?おい、咲綺!」
咲綺はくーーっと心地よい寝息が聞こえて来そうな程、幸せそうな表情で眠っている。
「・・・明日の朝、覚えてろよ?」
正毅も、咲綺の耳元にそう囁くと、寝る準備を始めた。


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「ちょっと!確かに切らないでとは言ったけど、何もこんなこと・・・」
克己は不満の声を上げた。
着物の腰紐などが解けず、それに苛立った龍也が紐を切ろうとしたので克己は止めたのだが、それならと龍也は脱がせないままコトを始めてしまった。
裾を着物、長襦袢・・・と捲って行くと、実は脱がなくても足や繋がる部分は露わに出来るのだ。
「切るなと言ったからこうしてるんだぞ?克己も合意したんだ、楽しむんだな」
唯一簡単に解ける帯〆で龍也は克己の腕を拘束している。
「・・・龍也ぁ・・・。汚しちゃったらどうするの・・・?」
「心配するな。大丈夫だ」
その根拠はどこから来るのか――・・・?
とにかく龍也は、肌蹴た着物を身に纏った克己と思う存分楽しむことにしたのだった。

克己はその後着物を見る度にこの日の記憶を蘇えらせ顔を赤くした。
そして着物はもう2度と着ない、と誓ったのだ。


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「ちゃんとしておかないと皺になるよな?」
「そうですね・・・」
機嫌の直った呉羽は、天に手伝ってもらいながら自分たちの家で着物を脱いでいた。
「やっぱり・・・脱いでみるとこんなに重かったんですね。着物って」
「そうか?」
「ええ。これは振袖なので、袖が長い分だけでも重いんです」
きちんと畳み、揃える。
「呉羽、一緒に寝るんだろ?」
「・・・はい。天さん、一緒に・・・」
道具にも頼らず、お互いだけを求めるふたりは、着物も真面目に脱いでから寝室へと向かう。
そして穏かな快楽の波にふたりで漂うように、愛を確かめ合った。


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「・・・・・・?・・・っ・・・ぁ・・っ??」
咲綺は衝撃を感じて、眠りから現実へと引き戻される感覚に目が覚めた。
「起きたか?咲綺」
なんだかいつもと違う。
正毅の声がとても近くに感じるし・・・そう、お互いの身体を反響しているように・・・大抵こう聞こえるのはひとつに繋がっている時・・・。
「・・・あぁっ!・・・正毅さん、どうして・・・?」
咲綺は正毅を全身で受け入れていた。目が覚めるほんの少し前から。
「昨日勝手に俺を煽るだけ煽って眠ってしまった咲綺が悪い」
「・・・・・・・・・っあぁんっ!」
身体を起こされて、正毅と向かい合う形で深々と正毅の雄が更に奥へと入り込む。
「今日はずっとこのままでいようか?」
悪魔のような囁きは、咲綺の身体中をゾクリ・・・としたものが駆け巡る。
「・・・っ・・・ぁっ・・・ごめんなさい・・・っ・・・」
昨夜の記憶は微かしかないが、正毅が怒っているのはわかる。
こんな風に朝から行為に及ぶことは滅多にないから。
「咲綺はお仕置きしてもちっとも懲りないようだからな」
「・・・・・・んっ・・・っ正毅、さん・・・っ!・・・」
だが例え怒っていても、咲綺を愛しているからに他ならない。
どれくらいで許してやろうかと、それを考えるのもまた楽しいかもしれないと正毅は密かに思った。

咲綺はその後も父や正毅に騙されて、何度も着物を着せられることになる。
思った以上に似合っていたと、特に父は喜び、金に糸目を付けずいいものを誂えるのだった。


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「天!お前から取り成してくれないか?」
天の元に、父からの連絡が入った。
「親父が悪いんだろ?呉羽を怒らせるから」
呉羽の怒りは天の父へと向かい、呉羽は天の父からだと電話にも出ないし、会っても口を利かない・・・などなど低次元だがそれらを繰り返していた。
天の父には、例え低次元だろうとお気に入りの呉羽にそっぽ向かれるのはかなり堪えた様子で、息子に泣き付いていた。
「だから、俺が悪かった。な?この通り!」
「自分で呉羽に言えよ。ま、当分は謝罪も聞いてもらえないと思うけどな」
自業自得だと、取り成した所為で今度は自分が呉羽の怒りに触れたら大変だと天はそれを拒否した。
哀れな天の父が呉羽に許されるのはいつの日か―――?


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茶会は雅に華にされた3人のことはもちろん方々に噂が広がっていた。
特に呉羽が組関係の公の場に出て来ることは今後もまず有り得ないことで、しかも中原財閥との血縁者ということや、氷の美貌。
そして咲綺は、箱入り娘のように大事にされていて屋敷の奥で暮らしていることもあり、滅多に顔さえ拝めない。
克己は天使の微笑みに腕のいい医者ということ、何より蒼神会のアイドルだ、などと噂の要素は多分にあった。

極道界の三大奇跡と噂される幻の「姐」達に会いたいという人間は
この茶会後更に、大幅に増えたとか・・・。

End


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