Bridal Fair

 ++ Subsequence case of T & K ++
(SIDE:CRIMSON PASSIONS)



「ううっ…こんな日が来るなんて…」
感涙に咽ぶ良介に、克己はほんのりと頬を赤く染めた。
「あ、あのね、良介クン?」
「俺、マジに克己さんをお世話してきた甲斐がありました!」
「えっと…その…」
「あ、俺が父親役って言うのは幾らなんでもおこがましいですね。やっぱり沢村のアニキ辺りが適任ですかね?」
「だから、ちょっと…」
「とすると仲人は加賀山のアニキですか? う〜ん、それもちょっと問題か…」
「ねぇ、良介君ってば」
「そうしたら…じゃあ、俺と伸治でフラワーボーイですか? うわっ、ちょっと、タキシード借りてこなきゃ…」

何をたわけたことを言ってるんだっ!

相変わらず見事なまでのクリーンヒットが後頭部を直撃し、良介はそのまま床に倒れこんだ。
「あ、アニキぃ〜。酷いっすよ〜」
「煩い、黙れ」
痛みでうるうると涙目になって見上げれば、まるで人外の者を見るような冷たい視線で。流石にこれ以上しゃべったら命の保証がないと確信して、良介は口を閉ざした。
しかし、
「ちょっと、龍也! 良介クンが可哀想じゃない!」
と肝心の克己がしゃがみ込んで手を伸ばそうとする ―― が、
「え? あ…ちょっと、龍也ってば!」
ふわりとした浮遊感を感じたかと思えば ―― 気が付けば龍也の腕に抱き上げられていた。



龍也に抱き上げられて赤い絨毯のバージンロードを行けば、流石に人目は思いっきり引くはず。
だから、
「ちょっと、龍也ってば! 降ろして、恥かしいよ」
「心配するな。入り口にはウチの下っ端で固めておいた」
と、涼しい顔で言われてしまう。
一応今日はブライダルフェアで、このホテルの屋上に作られたチャペルも一般開放されている。
だが、
「え? 固めてって…」
「折角のシチュエーションだからな。このまま挙式って言うのもいいだろ?」
と少し意地悪く言う龍也はいつもの黒のスーツだと思っていたら、一応、礼服のようだった。
あまりに当然のように着こなしているから気が付かなかったのだが ――
「な…ダメだよ! キリスト教では同性愛は厳禁なんだからっ!」
いや、そもそも日本では同性の結婚は認められてないだろ?と龍也も思ったが ―― そこはそれ。
「…なんだ? 克己はクリスチャンだったのか?」
「え? 違うけど…でもね、」
「それなら構わん。元々、神になど誓う気はない」
そう言い切れば、驚いたように克己が見上げてきた。
恐らくそれは、「誓う気がない」という言葉に反応したのだろうと思うのだが ―― 。
(馬鹿だな。これだけ俺が惚れてるというのに、まだ不安なのか?)
そう思えば ―― 自分だって不安だから束縛したいのだということは、この際おいておき ――
「俺はお前にしか誓わない。お前もそうだろ?」
そう囁くと、誓いのKissを深く交わした。



『勿論オーダーメードなんだもの。持って帰っていいわよ♪』
そうデザイナーの世吏加に言われていたので、遠慮なくそのままの姿でリンカーンに乗せると、龍也はまじまじと改めて克己の姿に見入っていた。
「しかし、よく似合うな。その辺の女だけじゃなく、トップモデルだって太刀打ちできないだろうな」
「そんなことはないよ。それに…」
余りに見つめられていると、流石に克己も恥かしくて頬を赤らめる。だが、ふとそもそもの理由を思い出し ―― 逆に龍也に詰め寄った。
「だ、大体っ! 龍也が爆破なんかするからこういうことになったんだよ! 判ってる?」
高級リムジンとはいえ流石に車内の広さは限られている。しかも克己の着ているドレスはふんだんにドレープをあしらったものだから、それだけで対面の座席一つを占領している。そんなドレスに埋まるような克己に詰め寄られても、全く龍也には効果はなさそうだった。
そもそも、
「フン、あんなの大したことじゃないだろ? それをお前が謝罪になど行くから甘く見られるんだぞ?」
「だって! 爆破なんかして…お金を払えばいいってモノじゃないでしょ?」
「それを言うなら、客のプライベートを撮影しようなんて方が問題だろ?」
といわれれば ―― それは正論といえば正論で。
「それは…そうだけど…」
だがやはりどこか納得できないと拗ねたように呟く克己に、
「…そうか、よく判った。じゃあ、この責任は身体で払ってやろう。やっぱり結婚式の後は新婚旅行だもんな」
「え?」



そうしてそれから一週間、克己が軽井沢の別荘に軟禁されたのは、また別のお話 ―― ?



Fin.


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