Bridal Fair

 ++ Subsequence case of T & S ++
(SIDE:CRIMSON PASSIONS)



皇紀と魁に逃げられた後、そこにいたのはそれぞれのパートナーで。
「げっ、飛島、マジかよっ!?」
端から見ればイケメン集団であるのは確かだが、その中に思いっきりよく知った顔を見つけて、流石の悟も青くなった。
「悟さん…?」
実は他の連中も青くなったり慌てたりとしているが、そんなことを気に掛けている場合ではない。
「な、なんだよっ! お前、今日は駒沢のマンションの打ち合わせじゃなかったのかっ!」
「それは既に片付きました。そんなことよりもですね」
「じゃあ、八王子の件はっ!」
「…それは来週です」
「えっと、じゃあ…」
「悟さん?」
―― バン!
じりじりと後ずさりしていた悟だが、やがて壁まで追い詰められると飛島がその顔の両脇に手を付いた。
(やっべぇ〜、マジに切れてる!)
口調はあくまでも穏やかに。だが眼は据わっているし、怒っているのは間違いなしというところ。
だが、
「…ホントによく似合ってます。綺麗ですね」
「あ…Thanks」
―― 思いっきり、腰が抜けそうになる。



着せられたドレスは、悟にジャストフィットのオーダーメード。そもそも悟のサイズを聞いて唯月が特別に作ったドレスである。だから当然のようにお持ち帰りOKよと世吏加に言われたのだが、さらに一言つけたしがあった。
『そのドレスを着ている間はフェアの一環ですからね。会場で何をしてもOKよ』



「よしっ! 行くぜっ!」
いきなりガッツポーズで意気込む姿は、どう見ても「花嫁」には程遠く、悟らしいと言えばらしいのは事実なのだが、
「ちょっと、悟さん? どちらへいかれるんですか?」
そう聞きながら、飛島にはいやな予感は既にしていた。
「あ? 何言ってんだよ? 披露宴会場に決まってるだろ?」
「まさかお披露目しに、なんてことは…」
「はぁ? 何言ってるんだ? 試食に決まってるだろ? ここの料理ってメチャうまいらしいぜ。克己が絶賛してたからな」
…その克己に言いように言いくるめられてそんな格好をさせられているということは、既に念頭にはないらしい。
「試食って…悟さんっ!? まさかその格好でいかれるわけじゃないですよねっ!」
「しょうがないだろ? 着替えたら有料だって言うんだから」
悟が着せられているのはボディラインを強調したジャストフィットのカラードレス。元々細身の悟にはよく似合うのは確かだが、はっきりいって目の毒であることはこの上ない。
(冗談じゃない。こんな悟さんをこれ以上、人目に晒しておけますかっ!)
となれば、決断の早い飛島のこと。
「…わかりました。食事は私がご馳走しますから、今日はこのあたりでお暇しませんか?」
「…和洋中のフルコースだぞ?」
「バイキングレストランのおいしいお店にお連れしますよ」
そういえば、流石に悟も考えて ―― そこですかさずダメ押しも入れる。
「大体、そんな格好じゃろくに食べられないんじゃないですか? 着替えて出直したほうがいっぱい食べられますよ」
といわれて、流石に悟も納得した。
ついでに、
「あ…やばい」
「どうしました?」
つい先ほどは今にも飛び出しそうな雰囲気だったのに、悟はその場に立ち止まったまま ―― 心なしか頬を赤く染めて、やや顔をうつむかせながら呟いた。
「…ない」
「はい? 何がないんです?」
我に返ってみれば ―― どう言い繕っても「女装」である。その恥かしさを漸く思い出し、
「違うっ! 歩けねぇのっ!」
一応長身だから必要ないと言い張ったのだが、こういうものはセットものと言いまくられて履かされたのは5センチはあろうかというピンヒール。当然、不安定で普通に歩くにも全力を使い切りそうだ。
「仕方がありませんね。では…」
「抱き上げるのはなしだぞっ! 腕でいい、腕を貸せっ!」
当然のようにお姫様抱っこされかかり ―― 流石にこの格好でこの場所で、それは絶対にヤダっ!と言い張れば、
「…仕方ないですね。では、どうぞ」
そういって ―― 本当に残念そうに飛島は腕を差し出した。



(まぁ、こんなときでもなければ腕を組んで歩くなんてできませんからね)
これはこれでよしとするかと、飛島がほくそ笑んでいたことなど、歩くことだけに神経を使い果たしていた悟が気がつくはずもなかった。



Fin.


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