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「綺麗だよ、咲綺・・・」
白無垢を着た咲綺は文句なしに綺麗で、連絡を受けて駆け付けた正毅もふたりの父である毅も、そこにいる咲綺の姿に驚いた。
「変じゃない・・・ですか?」
綿帽子を被っていて、白粉で化粧を施されている上、ましてや男らしさというものをあまり持ち合わせていない咲綺である。
咲綺が男だなんてわかりはしない。
「変じゃないから、堂々としてろ」
「そうだぞ、咲綺。・・・うう、綺麗だが娘が嫁に行く気分だ・・・」
父は本当にそんな気分を味わっていた。
尤も、咲綺は娘ではないし、例え嫁に行くとしても正毅のところなのだから今までと何も変わらない。
「正毅さん・・・お父さん・・・」
「せっかくだからそのまま帰ろう。持って帰っていいという話だしな」
そうして慣れない格好のまま咲綺は正毅や父とともに家へと帰る。
そこでまた大騒ぎだった。
「「えっ?!咲綺さん?・・・えぇっ??」」
「一体どうしたんですか?」
「とうとう若との結婚式っすか?」
そんな男たちの声に正毅も苦笑いを隠せない。
「見れただけ幸せだと思えよ?」
「「はいっ!!」
「「そりゃあもう、なんたって“あのうなじ!!”」」
白無垢というのは、普通の着物の時より襟をくる・・・つまり首がよく見えるように着る。
だからこそ、いつもは髪で隠れているうなじが香るような色気を醸し出している。
「そうだろう、咲綺は可愛い上に美人だからなぁ」
うなじまで綾子とそっくりだと父は喜んでいる。
「あの・・・もう脱いでもいいですか?・・・重いんですけど・・・」
普通の着物以上に重いそれに疲れて、咲綺が告げる。
「もう暫らくそのままで!」
「もうちょっとこのままで居てください!」
「そうだな、せっかくだし」
「「「お願いします!!」」」
だが、そう言われれば咲綺も逆らえない。
その日は見世物のようにたくさんの目に晒されてとても疲れた咲綺だった。
「ん?その夜咲綺と楽しんだかって? もちろん初夜のように恥らう咲綺と一晩中楽しんださ」
「もう・・・当分着物はいいです・・・///」
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