May I help your sweet night ?

− 龍也&克己 −


―― チャプン…
蒼神会本部ビルの最上階にあるプライベートエリア。龍也と克己にとっては愛の巣ともいえる二人で暮らしているフロアに帰ってくると、克己は早速バスタイムを楽しんでいた。勿論、バスルームの出窓にはパイレックスの皿に水を入れて、そこに先ほどの店で買ってきたフローティングキャンドルを浮かべている。
「ん…何か気持ちいいなぁ…」
白い身体をゆっくりとバスタブに沈めると、縁に頭を乗せて目を閉じる。
流石に夜勤明けで昼過ぎまで通常勤務となると、身体は限界近くまで疲れていた。だが、いつもならこのまま転寝しそうなほどに睡魔が襲ってくるところなのに、今日は妙に目が冴えてしまっていた。
「眠くないはずは無いんだけどなぁ。あ、さっきのお茶で、却って目が冴えちゃったかな?」
オーナーの話では眠気覚ましになるということだったし、そのせいかなと単純に思った克己だが、そこでふとあの店の奥の部屋のことを思い出すと、ゾクリと何かが身体の中で蠢いた。
「んっ…」
表向きは普通のおしゃれな癒しグッズのお店なのに、一歩奥に入れば ―― そこは恋人達の秘密の楽しみのためのアイテムに溢れていた。
(あんなに一杯あったってことは…やっぱり買いにいく人がいるのかな? どんな人が買うんだろ…?)
何せ克己自身のセックスライフはいたってシンプルだ。常に龍也のリードに任せ、思うが侭に翻弄されて極めさせられて。たまに無理矢理に拘束されることもあるが、それだって腕の自由を奪われる程度だ。何せ流石にジェルは使うことはあっても、克己の蕾に自分以外を入れるどころか触れさせるのも気に入らないという龍也だから、道具や器具のようなものは一切使ったことは無かった。
いや、そういえば ――
「あ…一度だけ…あった?」
そうあれは確か、同業というだけではなく個人的にも龍也が懇意にしているという二階堂組の正毅や緒方組の天と飲んできたといった夜。いつものように指で散々に解されて欲しくてたまらなくなっているところに埋め込まれた無機質の塊。だがそれは快感など微塵もなく ―― 寧ろ恐怖だけを克己に与えて、『龍也じゃなきゃ、いやだ』と泣いて強請ったのは確かだ。
それでも、世間の恋人同士では道具を使って楽しむこともあるということは克己にも判る事で、
(あんなものでも…気持ちよくなるものなのかな? それに…龍也も本当は使ってみたいのかな?)
ふとそんなことを考えて想像してみようとしたが、その瞬間、体の奥からゾクリと何かが蠢く感じが襲ってきた。
「あっ…やだっ…何を、僕…」
おそらくは、既にバスルームに充満しているアロマキャンドルの催淫効果のせいだろう。だがそれを知らない克己には、変なことを想像したがための結果と思い、それを振り払うように頭を振った。
しかし、
「あっ…ん…」
頭を振れば、当然バスタブの湯が波立つのだが、そのお湯の流れさえも克己の官能を引きずり出そうとするくらいで。足を閉じていても立ち上がり始めた雄茎は、流れる湯にまでも敏感に感じ始めている。
(やだっ…こんなところで…)
セックスに関することでは、毎晩のように龍也に翻弄されているはずなのに、至って初心な克己である。勿論この状態をどうすればいいのかなんてことは判っていたが、自分で触れることには躊躇いがあった。
そう、自分に触れてもいいのは世界中でただ一人。妖しい道具は勿論、例え克己自身でも ―― それは許してはいけないものだから。だから、何とか嵐が収まるのをこのまま待とうと、
「…やっぱり、絶対龍也じゃなきゃ、ヤだな。そもそも、あんなの絶対に入んないんだから!」
と、そう自分に言い聞かせて、思考を変えようとしたそのとき、
「何が俺じゃなきゃイヤだって? それに…何を何処に入れるだと?」
いつの間に入ってきていたのか、克己の耳に龍也の声が届いた。
「え? あ…いつの間に?」
「あんまり長いからな。また転寝でもしてるのかと思ってな」
そう言うと龍也はニヤリと意地悪い笑みを浮かべ、問答無用でバスタブに入ると克己を膝に抱き上げた。
「きゃっ…ちょっと、龍也?」
「ほら、ちゃんと聞いてやる。何が俺じゃなきゃイヤなんだって?」
「え? あ…なんでもないよ。///」
咄嗟にそう答えてプイと横を向き、何とか龍也の腕から逃れようとする。しかし、しっかりと腰を掴まれているために、その腕から逃れることは不可能だ。
それならばせめて自分の今の状態だけは隠しておきたくて、
「もう出たいから離して、龍也」
「フン…俺に隠し事をするとはいい度胸だな? それに、出したいのはこっちだろ?」
そう言って腰に回していた前に手を滑らせていけば、それだけで克己の身体はゾクリと震え上がった。
「ちょ、ちょっと、龍也っ!」
「何を想像してた? 克己。もう、こんなに硬くなってるじゃないか?」
「ひゃっ…ああっ…ん」
膝に抱き上げられたまま項に口付けられて、しかも既に立ち上がってしまっている雄茎をゆっくりと汲み上げられれば、快感を覚えこまされている身体を誤魔化すことなどできるわけもない。
「あ…んっ…」
「本当にお前は感度がいいな。この程度で感じるとはな」
「やだっ…言わないで…」
いつもなら、龍也に翻弄されて快感を引きずりだされる克己だが、今日は既に一人で感じてしまっていたということだけでも恥ずかしい。だから殊更囁かれる言葉一つにでも過剰に反応してしまうのだが、勿論、それだけが理由でないことは龍也には判っていた。
(この程度でこれだけ乱れるとは…コイツの感度の良さには感心するぜ)
勿論そう仕込んだのは自分であって、克己だって相手が龍也であるからということも判っている。
だが、どれだけ淫らに仕込んでも決して汚れないピュアな心を持つ克己を手にしていると、つい苛めたくなるのは男のサガなのだろう。
「あっ…ああっ…ん、龍也っ…」
「一人でこんなにして…何を想像してた?」
「何って…やっ…」
「言わなきゃずっとこのままだぞ?」
「あっ…ん…意地悪っ…」
バスタブの中だから実際には見えるわけではないのだが、既に立ち上がりきっている克己の雄茎からは先走りの透明な液が滲み出ていた。それに、触れられてもいないのに胸の飾りはプツリと熟れており、こちらもお湯がかかるだけでも克己に快感を与えているらしい。
「やだっ…龍也。も…だめっ…」
「イかして欲しいのか? だったら俺の質問に答えて欲しいな」
「だって…あン…恥ずかしい…」
「そんなに恥ずかしいことを考えてたのか? まさか、それで一人でココを弄ってたんじゃないだろうな?」
そう言ってキュッと雄茎を強く握れば、克己は白い項を晒すように仰け反った。
「きゃあっ! あっ…ああっ…」
既に細い足は自然と開いて、握り締められた状態が項越しに龍也の視線に晒されている。だが、龍也は膝に克己を抱いて雄茎を殊更ゆっくりと汲み上げるだけで、他にはわざと触れていなかった。勿論克己もカクカクと震えながら龍也の腕やバスタブの縁に捕まっているだけだ。
「やっ…一人でなんて…ないっ…龍也じゃなきゃっ…」
「そうだな。お前の身体に触れていいのは俺だけだよな?」
そう仕込んだのも龍也で。自分の身体なのに、克己はどうすることもできないもどかしさに涙を浮かべて強請り続ける。
「お願っ…たつ…やぁっ…」
「仕方のないヤツだな」
そう苦笑しながら囁くと、龍也はゆっくりと汲み上げていた動きを早め、
「ほら、イってもいいぞ」
「あっ…あ…ああっー!」
カクカクと震えながら、克己は湯を汚すことも気づかずに全てを吐き出していた。





少し逆上せたのと、思い切り達かされたせいでぐったりとしている克己を静かにベッドに下ろすと、龍也はナイトテーブルに用意しておいたピッチャーから冷やした御茶を飲ませた。
「んっ…あ、これ…」
コクリと喉を通せばその味には覚えがあって、
「ああ、良介に作らせた。風呂上りなら冷やした方がいいだろ?」
「うん、ありがとう」
すっきりとする喉越しは、確かに乾いた砂に浸み込むように克己の喉を潤していく。
それに寝室には既にあのキャンドルが焚かれていて、克己は心地よい感覚に身を任せていた。
だが ―― 当然、それだけで満足する龍也ではない。
「さて…と、さっきの続きだがな?」
「え?」
そっと覆いかぶさるように克己の身体を組み敷くと、龍也は意地悪そうに耳元で囁いた。
「風呂場で何を考えてたか…話してもらおうか?」
「あっ…やだ、なんでもないよ」
「ほう、なんでもなくて一人で感じてたのか?」
「そ、それは…」
ついさっきまで居たのはバスルームで、二人とも一糸も纏わない姿である。そのため羞恥に肌を染めた克己は龍也に全てを晒しており、つい先ほど達したばかりだというのに、龍也に囁かれただけで克己の雄茎は緩々と鎌首を持ち上げ始めている。
「身体は正直だよな、克己。今度は白状してもらうまでイかせないぞ?」
「そんな…龍也の意地悪。もう、その話はやめてよ」
こうなっては、今更止まるようなものでもないことは判っている。それに先ほどは克己だけが達しているから、それでなくても龍也の愛撫が執拗になるのも判っている。だから克己は甘えるように腕を龍也の首に絡ませた。
「フン…今日は随分と積極的だな、克己」
「え? あ、だって…ヘン?」
「いや、たまにはいいな」
奥ゆかしいというよりは誘うということさえ判っていない克己だから、そんな些細な仕草も大胆に思えて。龍也としては悪くないところだ。
(これも、あのキャンドルの効果か? まぁいいか)
そんなことを思いながらそっと唇を重ねた。
「あっ…ん…」
クチュッと水音を立てるほどに深く口づけあって、克己の細い腕が縋るように龍也の背中に回される。無意識に開いた足の間に身体を割り込めば、克己の雄茎はすでにしっとりと濡れそぼっていた。
それを
「さっきイったばかりにしては…随分と早いな」
「えっ? あ、や…やだっ!」
タラタラと透明な液を滲ませる雄茎を握れば、それだけで克己は背を弓なりにして仰け反った。
「風呂場でも、いやらしいことでも考えてたんじゃないのか?」
そんなことを囁きながら再びゆっくりと汲み上げ始めれば、既に克己は涙声だ。
「そんな…ただ、あんなモノを使うのはどんな人かなって…龍也も使ってみたいのかなって思っただけっ…」
「あんなもの? ああ、あの店にあったバイブか。なんだ、欲しかったのか?」
「そんなっ…ちがっ…」
フルフルと髪を振り乱すように首を振れば、瞳に溜まっていた涙がポロポロと頬を伝う。そんな姿も龍也には愛おしくて、愛しいからこそ滅茶苦茶に犯したくなる。
だから、
「ここに突っ込まれてみたいか?」
そう言って克己の蕾に指を突き立てれば、
「いやぁっ!」
その刺激だけで、克己は再び達してしまった。
だが、ドクッドクッと白濁の液を吐き出しながらも、その雄茎はまだ硬さを残している。おそらくはキャンドルに含まれる催淫効果のせいだろう。欲望を吐き出しても快感は持続しているらしく、克己は龍也に救いを求めた。
「あっ…やだ…ヘン…。龍也…助けて…」
「どうした? 今日は随分と乱れるな?」
そんな風にわざと何事でもなさそうに囁くが、その乱れ様は流石に絶品で龍也もゴクリと唾を呑み込むほど。それでももっともっと乱れさせて、自分を欲しがらせたいから、
「ね、龍也っ! お願い…来て…欲しいのっ!」
そう縋って強請る克己に、
「欲しいのか?」
「うんっ! 龍也が…欲しいっ…」
「…そうか、だが、その前に御仕置きだな」
そう告げると、ナイトテーブルの引き出しから小さな箱を取り出した。
その包みは、あの店の物と同じで、
「先に2回も一人でイったんだからな」
そういうと、克己が身を起こすよりも先に、その雄茎に金色のリングを嵌めた。
「や、な…に? やだ、龍也…っ!」
「暫く、イくのはオアズケだ。」
「そんな…やだ、龍也。意地悪しないで…っ」
「心配するな。ココにはちゃんと入れてやるさ」
そう言って克己が吐き出した精液を潤滑剤代わりに塗りこめると、ちゅぷっと音を立てて指を突き立てた。
「ああっ!」
既に快感を隠すこともできない克己である。指先からは血の気が引くほどにシーツを握り締め、立てた膝もカクカクと震えだしている。
それに、
「凄いな、克己。指が食い千切られそうだぞ」
その締め付けは、解されきっていないというよりは待ち望んでいた楔を離したくないがためと言うようで、
「や、やだっ…龍也…早く…来て…ぇっ!」
「まだ早いだろ? もうちょっと解さないとな」
「ひっ…やぁっ…あ…」
二本、三本と増やしながら解していけば、無意識に克己は自ら腰を振って更に奥へと誘い始める。それが、口ではイヤだと泣きながらだから、益々龍也の嗜虐性を煽るとも気が付かずに。
そしてついには、
「龍也っ…お願い、もう、何でもする…からっ…早く、来てぇ…!」
耐え切れなくなった克己は、それが悪魔との取引だと判っていてもそう叫ばずにはいられなく、
「何でも、だな?」
「うっ…する、何でもするから…もう、来て…外してっ…!」
泣きじゃくって強請れば、龍也は漸く指を引き抜いた。そしてクルリと身体を反転させ、腰だけを宙に高く突き上げるような格好にさせると、一気に己の楔を突き立てる。
「きゃあーっ! あ…ああっ…ん…っ!」
先ほどまでの指などとは比べようも無いほどの質量に、慣れているはずの身体が翻弄される。しかも、後ろは龍也に思うままに犯されつつも、雄茎は金色のリングで塞き止められ、逃げ場の無い快楽は克己の理性を食い破っていた。
「あっ…あっ…」
最早克己の口から洩れるのは、言葉にならない嬌声だけだ。
だが、そんな克己はいつもに増して壮絶に美しくて。
龍也は細い腰を抱き上げると、繋がったまま克己の身体を後ろ抱きに己の膝に抱き上げた。
「ああっー! やっ…あ、ああっ…!」
意図せず更に龍也を咥え込んで、二人が繋がった場所からはグチュグチュと卑猥な水音が溢れている。更に立てられた膝は大きく広げさせられているため、イヤでも克己は金色のリングを嵌めさせられた己の雄茎を見せられた。
下腹に張り付きそうなほどに硬く立ち上がって、だが欲望を塞き止められているからイくこともできない。しかしその先端からはタラタラと透明な液が滲み、糸を引いてシーツに染みを広げていた。
「堪え性のないヤツだな。ちゃんと止めているはずなのに、こんなに濡らして。そんなに気持ちいいのか?」
「うっ…だって…龍也…がっ…龍也だから…っ!」
狂わせているのは間違いなく龍也なのに。克己にはその龍也だけが全てだから。
だが、
「そういえば、バイブを気にしていたな。どんなものか、味わってみるか?」
そういうと、龍也は先ほどの小箱に入っていた小さなリモコンのスイッチを入れた。
―― ブウーン
ほんの僅かな、まるで蚊の羽音のような電子音。
だが、その瞬間、
「やっ、やだっ…何? ひぃっ…!」
指で汲み上げられるのとは全く異なる微妙な振動。しかもそれは、克己の欲望を抑えているリングが発するもので、
「くっ…凄い、締め付けだな、克己。そんなに気持ちいいか?」
「やだっ、やっ…やめっ…あっ、あっ…」
まさかそれにそんな機能まで付いているとは思わなかった克己だ。
流石に通常のバイブレーターのように、派手な振動は不可能なのだが
(あのオーナーの薦めだけあるな。凄い、締め付けだぜ)
体内に入れるタイプならそれなりの質量を必要とする分、モーターも大きいものを使うことができる。だがあくまでもこちらはリングであり、薄く小さく作ってあるから、振動自体に期待することはできない。
だが、達きたいのにイかせてもらえないもどかしさの上に、その欲望自体を抑えているリングからの刺激というのは、例え僅かなものであっても気が狂いそうなほどの衝撃であることは間違いなさそうだ。
「あっ…ああっ…も、だめ…龍也…ぁ…おかしくなりそう…っ!」
「いいぞ、克己。もっと狂え。善がり狂って、俺を欲しがれ」
そう命じて、更に突き立てる楔の運動を激しくすれば、
「やだっ…龍也、たつやーぁっ!」
「くっ…」
泣き叫ぶ克己の中に己の欲望を注ぎ込んだ龍也だが ―― まだまだ夜はこれからだった。



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『先日はご多忙にも関わらずご来店頂き、誠にありがとうございました。
当店の商品をお楽しみ頂き、光栄に存じております。
さて、本日は新製品の入荷となりましたのでご案内をさせて頂きます。
またお気に召す商品をご提供できましたら幸いです』

数週間後、夜勤で克己が留守の折にそんなメールを受け取った龍也は、ククッと一人微笑を浮かべると、
「良介、車の用意をしろ。克己を迎えに行く前に寄りたいところがある」
楽しそうにそう命じて、執務室をあとにした。




Fin.


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