ヤキモチ焼きの年下彼氏 おまけ


事務所に戻ると、悟はそのまま二階に上がってしまい飛島は残っていた事務仕事に追われていた。
「仕事が終わったら上がって来い。メシにするぞ」
内線電話がそんな台詞を告げたため、ビックリした飛島が残りの仕事も放り出して階段を駆け上がった。
するとキッチンにはなんとエプロン姿の悟が待っている。
「早かったな。もう終わったのか?」
「いえ、まだですが…何やってるんですか?」
「見て判るだろ? メシ作ってるんだよ」
「…本気ですか?」
はっきり言って、悟とは長い付き合いであるが、いつも尽くすのが飛島で悟が何かをしてくれるということは皆無に近い。
というよりも ――
「ちょ、ちょっと待ってください。判りました。私が悪かったです。もうヤキモチなんか焼きませんから!」
「フン、この前だってそんなこと言ってただろうが! よくもまぁ言えたもんだなっ!」
「すみません、ホントにこの通りです!」
片やエプロン姿で仁王立ちの悟に、両手を合わせて謝る飛島。
流石に謝らせれば悟の機嫌もよろしくなるのは当然のことで ――
「…ま、判ればいいさ。じゃ、マジでメシでも食いに行こうぜ。なんか作ろうと思ってやりかけたんだけど、やっぱ面倒だ。ああ、後片付けは後で良いよな」
勿論、お前の奢りと言われ、出かけていった。
基本的に悟は、機嫌が悪くなるのは腹が減っているからという考えの持ち主で、何かあると食事に行きたがる。
まぁ旨い物を食えば機嫌が良くなるというのは間違いではないのだが ―― 。



「…なんでこうなるんです?」
おなか一杯旨い物を食べて満足して戻ってみれば、キッチンには料理道具の残骸の山。
設計という仕事柄、手先は器用であるはずなのになぜか料理となると道具を破壊してしまう悟の後片付けに、飛島はつくづくヤキモチも程ほどにしようと心に誓うのだった。






Fin.

初出:2003.12.20.
改訂:2014.10.25.

Silverry moon light