Break Time sss01


時刻は3時過ぎ ―― 丁度、小腹がすく時間である。
外回りから帰ってきた田坂園子は、お茶でもしようかと給湯室に向い、そこで山積みになったお菓子の箱を眼にしていた。
「頂き物です。お好きなように食べてくださって構いませんよ」
一応、上司である飛島からはそう言われているのだが、よく見ればほとんどが甘いもので、有名和菓子店や高級洋菓子店のものばかりだ。
おそらく、どれもが一箱数千円以上。
中には万単位のものもありそうで、勿論そこは甘いもの大好きな園子であるから、遠慮なく頂きたいところではあるが…
「これって…」
「ええ、そう。みんな悟君への差し入れみたいね」
同じように一休みしようとやってきた三橋恵理子にそう言われて、園子はやっぱりという表情を見せた。
「そっちはこの前打ち合わせに来た工務店の専務。こっちは建具屋の親方さんからですって」



普通のサラリーマン家庭ではちょっと手が出せないような高級菓子。
この不景気だというのにそんなものをポンと買ってくるところは太っ腹だと思うのだが…
「これなんか、悟君が好きそうなお菓子ですよね?」
「そうよ。だから悟君用の戸棚にもおなじのがあるでしょ?」
そう言われてみれば、いくつかのお菓子と全く同じ箱がプライベート用のストック棚に入っている。
こちらは飛島が悟のためにと用意しているお菓子や昼用の食料品などが入っており、当然、他の人間は食べることは厳禁である。
そして、同じ種類の箱に書かれた賞味期限はこちらの方が後になっている。
それを不思議そうに見ながら、
「え? なんで同じもの…?」
「だって、悟君の目の前で頂いたんだもの。食べさせないってわけにもいかないでしょ?」
「食べさせないって…ダイエット中とか?」
「違う違う、飛島さんとしては、自分以外の人間からもらったものを美味しいって連呼されるのイヤなのよ」
クスクスと笑いながらさも当然と言うように語る恵理子に、園子の表情は微妙である。
「別に、お菓子には罪はないんですけどね」
「まぁそこが男心っていうものなんでしょうね」
そのおかげで(?)美味しいものを賞味できるのだからと、恵利子と園子は苦笑を浮かべながらとりあえず美味しいお茶を淹れることにした。






to be continued.

初出:2009.02.16.
改訂:2014.10.25.

Dream Fantasy