006 ピストル (龍也×克己)


ベレッタ、コルト、トカレフ、H&K、ブローニング…
壁一面に飾られた拳銃を、克己は嬉しそうに眺めていた。
「龍也のお気に入りは、どれ?」
冷たい鉄の輝きに、酔いしれたように尋ねてくる。
「そうだな、普段持つならベレッタだが…やはり威力はパイソンがいいか?」
「ふぅ〜ん…」
「腕くらいなら、千切れるくらいの威力だぞ」
「じゃあ、頭を狙えば確実に死ねるね」



「ああっ…ん…」
ギシギシと軋むベッドの音にあわせて、克己が切ない嬌声を上げる。
白い身体が貪欲に快楽を貪り、俺を咥えて離さない。
「たつ…や…あ、いいっ…」
頬に流れる涙も、狂うように乱れる身体も、何もかもが愛おしい。
縋りつくように伸ばされる手をシーツに押し付けて、更に深く突き上げると、切なくあえぐ克己が許しを求めた。
「ああぅっ…もう…だめ…。逝かせて…」
「まだ、ダメだ」
「お願いっ…このまま…殺してよ」
「ダメだ」
解き放たれたい一心で殺してくれと頼む克己を、貪るように犯し続ける。
ベッドサイトには、克己が持ち出した銃が待っている。
『いつになったら殺してくれる?』
そういって、夜になれば死を願う克己に、俺の言葉は届かない。
届くのは ――
「そんなに死にたいのか?」
「…龍也に殺してもらえるなら」
「いつか…殺してやる」
「いつかじゃいや。今、殺して?」
「それはできない」
「…イジワル」
既に1人では立つこともできないほど衰弱しながら、俺だけを受け入れる克己の細い体。
このまま乱暴に抱けば骨だって簡単に折れてしまうだろう。
そんなになっても俺に抱かれることは拒まず、そのかわり生き続けることだけを拒み続ける。



たった一発の鉄の塊で、自由になれると信じているから ―― 。




Fin.


2003.10.07.

Melty Dark