月明かりに晒された白いシーツの上には、更に白い身体が横たわっていた。
やや血の気の少ない肌には朱の花びらが舞い散って、匂うような艶っぽさに彩られている。
それでいてその寝顔は幼子のようにあどけなくて。
これがつい先ほどまで、掠れるほどに己の名を呼びながら快楽を強請った者だとは到底思えない。
尤も、晒された後ろの蕾からは龍也が欲望の果てに残した残滓が筋を作っているし、克己自身も白濁の液で濡れている。
だからそれを確かめるように指でなぞれば ――
「…ん…やっ…」
フルッと身体を震わせて、克己が身じろいだ。
「イヤか? 克己…」
「ん…はぁっ…ん、」
くちゅりと音をさせて蕾に指を突き立てれば難なく飲み込むだけではなく、淫らに更に欲しがるようで。
そのくせ真紅の唇から洩れる言葉は、拒絶を告げてくる。
「やっ…龍也、もうっ…ダメ…」
「こんなに咥え込んでおいてか? 説得力ないぞ?」
「ああっ…ん、やだっ…!」
突き立てた指でぐるりと抉って、一気に3本に増やせば ―― 流石に克己が背中を反らせて歓喜に震える。
ゆっくりと開いた瞳は情欲に濡れて。
それでいても、そのキレイな魂が汚されることは決してない。
「も…ダメ…これ以上は、壊れちゃうよ」
「心配するな。壊れたら…俺がどんな破片でも全部拾い集めてやる」
「あ…んっ、ヤダっ…」
ぐちゅぐちゅと音を立てて蕾を解して、中に残った残滓をかきだすように動かせば、克己のきれいな身体に火がつくのは早かった。
どこをどう煽ればこの体が天使から娼婦に変わるかは熟知している。
そして一度豹変すれば ―― それは更なる快楽を得られるまで、冷めることがないということも。
「はぁっ…やっ…やめ…あっ…」
「来いよ、克己。お前は誰のものだ?」
「あっ…龍也…たつやの…」
教え込まれた言葉と共に、克己はその細い腕を精一杯伸ばして龍也に縋りついた。
天使のように優しくて、綺麗で、清純で。
克己と自分では、住む世界も全く違っていたはずだ。
光の世界に住む克己と、極道と言う闇に属する自分とでは ―― 余りに違いすぎるはず。
だが、最早克己を手放すことなどできないから。
だから ―― 貶めて、傷つけて、犯して手にいれた。
手の届かないはずの至高の場所から引き摺り下ろし、汚して濁らせて己と共に闇に沈めて。
それでも決して染まらないから ―― こんなにも心を奪われるのかもしれない。
いつか克己を本当に傷つけることがあるとしても。
そんな不確定な未来より、共に堕ちる今があればそれでも良いと思う。
だから今夜も陵辱して、光の世界になど戻れないように烙印を刻んで。
「堕ちて来い、克己。俺から離れず…この闇に沈んでしまえ」
そう願うのは ―― その闇の中にあっても、決して濁らないことを知っているからかもしれない。
Fin.
2004.08.23.