◆◆ Hand Made Love ◆◆



それは今にも雪の降りそうな、それでも暦の上では春を迎えた2月のある日。
お昼ご飯を食べ終わり、今日は何をしようかな・・・と考えていた咲綺の元へ
電話が掛かって来た。

「咲綺です。・・・・・・明日ですか?私は大丈夫ですけど・・・」

電話の主は仲のいい友達とも言える、本条克己。
明日空いているかという内容の電話で、咲綺がそう答えると
咲綺の家へ来たいと言うことだった。

「うちへですか?いいですよ」

『本当?ありがとう!材料は僕が買って来るから!』

弾んだ声の礼が聞こえたかと思ったら、電話はそのまま切れた。
忙しい中、電話して来たのだろう。
それにしても・・・と咲綺は考える。

「材料ってことは・・・一緒にお料理でも作るんでしょうか?」

答えは出ないが、明日の楽しみにしておこうと、そして久しぶりに克己と会って
お話出来るのも楽しみだと咲綺はその顔に笑みを浮かべた。


「正毅さん、明日克己さんがいらっしゃるそうです」

夜、もう寝るだけとなり、正毅に告げる。
ふたり横になりながら唇にちゅっと軽いキスを何度もして、咲綺は言葉を続けた。

「材料は自分が持って来るからって。きっとお料理しにいらっしゃるんですね」

「・・・・・・克己って、確か料理出来ないって前に龍也から聞いた気がするんだが」

正毅が思い出したように呟くと、咲綺もあっ!と叫んで起き上がった。

「そう言えばそんなことを仰っていたような・・・」

「咲綺、怪我しないようにしろよ」

正毅は他人事のように笑って、咲綺を優しく押し倒す。
そして今度は濃厚な口付けを仕掛け、服に手を入れ肌に触れる。
その瞬間、咲綺の頭の中は真っ白になった後、正毅一色に染まるのだった。


   ――――――――――――――――――――――――――――


翌日、二階堂家はちょっとした騒ぎだった。
何しろあの有名な藤代龍也の恋人・克己がやって来たのだから。
天使のような清楚さと圧倒的な美貌は龍也の話題と共に常に囁かれる噂だが
実際にその顔を拝めることは滅多にない。
それを目に出来ただけでも幸運なのに、もうひとりの美人・咲綺と並んだ姿は圧巻だ。
当人たちだけが気付かないところでふたりを見つめる視線は数え切れない程あり
無意識に手を合わせる男たちもいた。

ちなみに咲綺の父・毅はこれまで機会に恵まれず克己に会い損ねている。
今日克己が来たことも後で聞き、がっかりすることになるのだ。


「あの・・・お料理をしにいらしたんじゃ・・・?」

「昨日言わなかったっけ。料理っていうか、バレンタインのチョコを作りたくて。教えてくれる?」

克己は購入して来たらしい、大量のチョコレートやお菓子を作る様々な材料を
並べながら恥ずかしそうに言った。

「チョコレートですか。・・・チョコと言っても種類がたくさんありますけど」

「え〜っとね、簡単だけど豪華に見えて、美味しくて、尚且つ愛情篭ってるって感じの!」

無茶なイメージをつらつらと並べ、克己は少し興奮気味に告げる。
克己の心は理解出来るからか、咲綺はこう答えた。

「じゃあ一緒に頑張りましょうね」

そしてふたりのお菓子作りが始まった。

「あの・・・克己さん、直火はダメですよ?」

「えっ?そうなの?ご、ごめんね・・・っ;;」

父が咲綺の為にとかなりの金額をつぎ込んでくれたこの自慢のドイツ製キッチン。
丈夫なことでも有名だが、少々その存在が消え去るのではないか・・・と
咲綺が危ぶんだのは何度だったか。

「すごく甘い匂い。龍也、大丈夫かなぁ」

「甘さ控えめにして、お酒も少し入れたらきっと大丈夫ですよ。
克己さんが頑張って作ったのだったら絶対食べてくれます」

それでも咲綺は懇切丁寧に教えた。
料理が愛情で作れるのなら、克己は絶えず恋人・龍也を想いながら作っている点で
素晴らしいものが出来上がることだろう。

「そう言ってもらえると安心するよ。それにしても咲綺は上手だね」

「去年はお菓子作りに凝っていて毎日のように作っていましたから」

克己は咲綺の言うことを頭では100%理解して作業に取り掛かるのだが
手がそれについて行かない。
外科医ということから考えても、不器用であるはずがない。
つまり、こういう作業に慣れていないだけなのだ。
だから慣れればきっと料理上手になるに違いない。

「同じように作ってるはずなのにどうしてこんなに違うんだろ?」

「最初からこれだけ出来れば充分ですよ。私だって最初は失敗してましたし」

後は冷やして固めるだけとなり、克己と咲綺はお互いのものを見比べてから
大きな冷蔵庫にそれを入れる。
それからぱぱっと咲綺が片付けて、ふたりはお茶をすることにした。


「正毅さんに、ですか?あまり甘いものは苦手みたいなので・・・少しだけ」

「そうなんだよね。美味しいのに」

「美味しいですが私もあまりたくさんはダメですね。こういうものならいいですが」

紅茶とともに出て来たのは、一口で食べられそうなプチケーキ。
モンブラン、チョコレート、苺のタルト、シュークリーム・・・などなど全部が小さくて
いろんな種類があるようだ。

「これも可愛いけど、まさか作ったの?」

「いえ、これはお店で買ったんです。最近見つけて、ぜひ克己さんにも食べていただきたくて。どうぞ」

じゃあいただきます、と口にした克己はその甘さと美味しさに思わず笑みを浮かべる。
それに倣うように咲綺もひとつ手に取り、口へ運んだ。

「私の母は、自分のお母さんから殆ど料理を教えてもらわなかったって言ってました。
手伝おうとしても、自分でする方が早いからって。
逆に母は私に早くから手伝いをさせてましたよ。
自分は記憶にある味を頼りに作っていたけど、ちゃんと習って作るのとはやっぱり違うからって」

時間が掛かっても大丈夫、食事は絶対必要なことだからいつか美味しいものが作れるようになる。
料理以外のことも、していればいずれ上達する。
それが母の教えだった。

「いいお母さんだね。僕もこれを機に頑張ろうかなぁ・・・」

「でも克己さんには立派なお仕事がありますし、時間が出来てからゆっくり覚えるといいですよ」

優しい咲綺の言葉に、克己も頷く。
ここに良介などがいたら「俺の仕事取らないでくださいよっ?!」と叫びそうだが・・・。

「あ、そろそろ時間ですね。見てみましょうか」

「うん。ちゃんと出来てるかな〜」

いろんな話をしていると、チョコが固まるのを待っている時間もあっという間だ。
ふたりで再びキッチンへ行き、冷蔵庫からそっと取り出す。

克己と咲綺が作ったのは、一粒チョコ。
キャラメルを混ぜたり、カカオをまぶしたり、スパイスを効かせたり・・・と数種類が並んでいる。

「上に金粉をほんの少しかけたり、アーモンドの欠片を乗せてもいいですよ。
どれか味見してみますか?」

「そうだね。じゃあ・・・」

克己が自分の作った中からひとつを取り、食べてみた。
咲綺も、いただきますねと克己の作ったものを食べる。

「・・・・・・ヘンな味なんだけど・・・苦いっていうのとはちょっと違うかな・・・?」

「・・・そ、そうですね・・・」

なんでこんな味がするんだろう?と咲綺は疑問に思い、必死に克己が作っていた様子を思い出す。
大きな間違いはなかったはずだが、小さなミスはところどころにあった。
もしかしてその集大成がこの味なのだろうか?
ちなみに咲綺のは・・・?とまたふたりで食べてみる。

「美味しい。・・・・・・どうして?どこが悪かったの?」

当然だが咲綺のチョコは売り物のように美味で、克己はしゅん・・・となる。

「か、克己さん!私の教え方が悪かったのかもしれませんし・・・」

「咲綺は悪くないよ。判りやすかったもん。きっと僕が・・・・・・」

克己は泣きそうになり、咲綺はそんな克己におろおろとするばかり。
きっと亡き咲綺の母・綾子はふたりを「あらまあ・・・可愛いわねぇ」と笑っていることだろう。

「バレンタインデーまでまだ日数もありますから、もう一度挑戦しましょう。
今度はきっと美味しいチョコが出来ますよ」

「本当に・・・?また教えてくれる?」

なんとか涙は零れずに済み、そっと差し出された手の温もりに縋るように
克己は咲綺を見つめた。

「はい。せっかく作るんですから自分の最高のものをあげたいですよね」

咲綺の言葉に頷き、克己は数日後再び訪れる約束をして帰って行った。


「今日は疲れただろ?もう寝るか?」

いつものように寝る前に正毅と今日の出来事を報告し合う。
正毅は想像していたより克己が料理下手でないことに安堵していた。

「正毅さんは?私、欲しくない・・・?」

「そんなこと言うと朝まで寝かせないぞ?・・・・・・咲綺」

淋しそうな声で呟く咲綺へからかうように笑いかけ、次の瞬間には真剣な目で名を呼ぶ。
そこから濃厚な口付けが始まり、ふたりはお互いを求め合った。


「それでね、休みなのに何処に言ってたんだ!ってすごく問い詰められたよ。
せっかく内緒にしておいて当日びっくりさせようと思ってるのにさ」

数日後、京子に頼み込み(本来なら利行に、なのだが権限は京子と婦長が握っている)
休みを取った克己は再び二階堂家へやって来た。
今度は咲綺が材料を用意していて、克己はお茶菓子持参だ。

「克己さん・・・そういうことはちゃんと仰ってからいらしたほうが・・・。
きっと心配してらっしゃいますよ?」

「いいんだよ、子供じゃないんだから。それより作ろう♪」

とにかく美味しいチョコレートを作ることばかりが頭を占めているらしく
克己はそれ以外のことに考えが及ばないようだ。
咲綺は後でこっそり正毅に連絡して、龍也に連絡を入れたほうがいいのではと相談してみようと決めた。

ちなみに克己がしているネックレスで居場所も克己が何をしているかも全て知っている加賀山だが
克己の意思を尊重して龍也には報告していないのだった。
後で怒られることを考えたら克己さんのチョコくらいもらわないとな・・・なんて考えていたりする。

「ゆっくりでいいですから、ひとつひとつの作業を丁寧にやりましょう。
手の中で、龍也さんへの想いを形にするように。・・・ね?」

「うん。・・・あ、わからない時は聞くから咲綺も自分の作って?」

克己は笑顔で頷く。
バレンタインデーは数日後に迫っていて、咲綺も克己の言葉に甘えることにした。

「うわっ!・・・・・・あぁ、びっくりした・・・」

「・・・・・・あ・・・っ!・・・こうじゃなかった・・・」

背後で克己の危うい独り言が度々聞こえて来る。
咲綺が大丈夫ですか?と聞いても、大丈夫と返事をするだけだ。

そしてそして、以前のように冷蔵庫で冷やしている間お茶をして
いよいよ運命の時がやって来た。

「じゃあ食べてみましょうか」

「う、うん・・・」

神妙な顔つきでふたりは克己作のチョコレートを頬張る。
ふんわりと独特の香りが広がり、舌の上で溶けて行く。

「もしかして・・・美味しい?」

「もしかしなくても美味しいですよ。よかったですね」

「本当に?咲綺のお陰だよっ!」

感激して克己は咲綺に軽く抱き付き、今にも飛び跳ねそうだ。
何度もこれが夢ではないことを確認して、ふたりで成功を喜ぶ。

咲綺が用意していた箱にそれを詰めて、克己からは自然と笑みが零れる。

「克己さんの手作りの愛情、きっと喜んでもらえますよ」

咲綺の言葉に大きく頷いて克己は気分よく帰って行った。


   ――――――――――――――――――――――――――――


バレンタインデー当日。

平日で正毅が仕事をしている間、咲綺は朝から関係のあるところに
チョコレートを配って回っていた。
毎年その数は増えつつあり、2月に入ると今年も楽しみにしているという声が聞かれ
咲綺からチョコレートをもらうことは関係者たちにとって恒例行事になっている。

それが済んで夜ご飯の準備をしていると正毅が帰って来た。
今日はいつもより早く帰って来るからと言って、それを実行してくれたことが咲綺は嬉しかった。

「今日は疲れただろ?来月また凄いお返しが届くな」

「別にお返しが欲しくてしているわけじゃないんですけど・・・」

咲綺は作ったチョコを正毅の口に運ぶ。
毎年驚く程の量を作るが、正毅の口に入るのは咲綺の手から運ばれるいくつかのみだ。

「俺からは?」

「ん・・・正毅さんからのは欲しい」

ふたりはチョコの甘さとともにお互いの唇の甘さを堪能する。

「で、克己の作ったチョコはどうだって言ってた?」

そう聞いた正毅に、咲綺はさらっと爆弾発言した。

「食べてみます?まだ残ってますよ」

「あ?・・・龍也にやる為に持って帰ったんじゃないのか?」

「こっそり入れ替えておきました。
もちろん殆どの作業は克己さんがされたんですが最後に私が手を加えたものを
自分が作ったものと思って持って帰られましたよ」

実は固まるのを待っている間、咲綺はトイレに行く振りをして克己の作ったチョコを先に味見していた。
それは前回とあまり変わらない味で、これでは克己ががっかりするだろうと思った。
だから片付ける時万一の為と残しておいた、克己が作ったチョコの残りで味を変えて作り直したのだ。

「上手に作るより同じ形に作る方が難しいってつくづく思いました」

「咲綺、お前・・・やり手と言うか策士というか・・・」

正毅は感心したように呟く。

「・・・しないほうがよかったですか?」

不安そうに聞いて来た咲綺に、どうしてそんな大胆なことが出来るのに不安になるんだと正毅は言いたい。

「克己が龍也の為に頑張ったのは本当なんだからいいんじゃないか」

そう告げて正毅が何か言い掛けた咲綺の口を塞ぐと、咲綺はそれに流されるように目を閉じた。
克己が龍也と素敵なバレンタインを過ごせますようにと祈り、後は正毅のことだけを考える。


「・・・・・・ん、・・・正毅さん・・・。・・・好き・・・っ」

縋り付き、正毅の逞しい身体に腕を回す。
   そうするとそれ以上の力で引き寄せられ、このまま溶けてしまいたくなる。

「咲綺・・・・・・咲綺・・・どうして欲しい?」

「あ・・・っ・・・、・・・愛して・・・正毅さん・・・・・・」

その瞬間、咲綺は鈍い痛みと熱を感じる。
無意識に漏れる断片的な甘い悲鳴は、正毅の唇に塞がれた。

「・・・・・・・・・っ、・・・・んっ・・・・・・!」

音にならない響きが空気中を彷徨い、暫くするとふたりは深いところで繋がっていて
特に咲綺はうっとりとした表情でいる。

「そんなに気持ちいいか?・・・可愛いな」

「・・・あっ、あぁ・・・っ!・・・正毅、さ・・・・・・っ・・・」

正毅が軽く笑い、動き出すと咲綺はそれに翻弄される。
次第に激しさを増すと、正毅もだんだん余裕を失くして行く。

「咲綺―――――・・・っ」

「正毅さんっ・・・・・・あぁ・・・・・・ん・・・っ!・・・」

互いに名を呼び、同時に絶頂を極める。
その後しばしぼんやりしている咲綺に、正毅は愛してる―――と告げて
顔中にキスを降らせた。


一方、克己と龍也はというと・・・・・・。

朝起きて、本当は仕事から帰った夜にチョコレートを渡そうと考えていた克己だが
龍也の反応が早く見たくて、まだベッドに乗ったまま箱を渡した。
これがそもそもの間違いかもしれない。

「咲綺にね、教えてもらって手作りしたんだよ」

この間出掛けていたのも、それを内緒にしておいたのもこれの為だった・・・と言われれば
龍也も怒るわけにはいかない。
加賀山のヤツ・・・だから言葉を濁してやがったんだな?ったく・・・と思いながらも
龍也は口元がニヤけないように気を引き締める。
何しろ克己が初めて手作りしてくれたのだ。嬉しいに決まってる。

「龍也が甘いもの苦手なのは知ってるけど・・・甘さ控えめに作ったから食べてくれる?」

「ああ。克己の甘い唇や肌は大好物だけどな」

そんな龍也の台詞に顔を赤くしながらも、克己はドキドキと心臓を鳴らしている。
龍也は、克己が初めて作ったものだからどんなに不味くても食べられる自信はある、と
自分自身に確認して箱に入ったチョコのひとつをぱくっと口にした。

「龍也・・・どう?」

「美味いぜ。ほら・・・・・・」

想像より遥かにマトモな味・・・いやいや、美味だったことに密かに安堵し
龍也は克己を引き寄せ、僅かに残るチョコレートを口移しで与える。
それだけでは済まず、すぐに舌を絡ませ合うキスへと変化した。

「・・・・・・ふ、・・・っん・・・。・・・もう、龍也ってばっ!」

「な?美味かっただろ?」

長いキスが終わり、龍也がニヤリと笑う。
そうするとまた克己が顔を赤くすることを知りながら。

「でもよかった〜。やっぱり手作りなんて僕には無理かなって思ったんだけど龍也の為に頑張って」

天使の笑みで克己が告げる。
それに龍也の本能がぴくっ!と反応した。

「そうか・・・。じゃあたっぷり礼をしないとな」

「えっ?ああ、ホワイトデーのこと?まだ先だよ〜?」

押し倒されたのに、状況が掴めていない克己はのん気だ。

「そうじゃない、たった今の話だ。何しろちょうどベッドの上。これはもうするしかないだろ」

などと勝手に解釈し、龍也はまだ何も纏っていなかった克己の肌に触れ始める。

「ちょ、ちょっと・・・龍也?今は朝だよ?僕、今から仕事だよ?!」

「・・・良介、今日克己は急病で休みだ。連絡入れとけ。・・・これで問題ないな」

扉の向こう側にいるはずの良介に声を掛け、龍也は続きを再開する。
克己は抗議の声を上げるが、龍也に敵うわけもなく・・・・・・。

「あっ・・・・・・龍也・・・ぁ・・・っ・・・」

明け方近くまで龍也を受け入れていた部分はまだ濡れていて、龍也が指を入れると
またすぐに溶け出したようだ。

「ほら、克己の身体も欲しいって言ってるぞ」

龍也の指を奥へと誘い込むように蠢いている蕾、そして龍也の台詞。
克己は羞恥心で一杯になりながらも、もう龍也とひとつになることしか考えられなくなる。

「・・・ふ、ぁ・・・あ、・・・・・・ぁ・・・んっ・・・も、・・・龍也・・・」

「克己・・・欲しいか?」

「ん、ね・・・お願、い・・・。龍也・・・欲しいよ・・・っ・・・!」

克己から望んだ台詞を引き出し、龍也は口の端を上げた後
ゆっくりと克己の中へ雄を埋めて行った。

そして馴染むの待ち、克己のいいところを中心に責める。
その激しさと絶え間なく襲ってくる酷い快感に、呼吸も止まりそうな程だ。

「あっ、はぁっ、・・・ぁん・・・っ、・・・っ・・・・・・あぁっ・・・」

「・・・克己・・・っ・・・!」

ほぼ同時に達した瞬間、克己は流石に昨夜からの疲れもあり
意識を失ってしまったようだ。

「・・・・・・克己が作ったにしては美味すぎな気もしたんだが・・・。
まあ不味いよりマシか」

カンの鋭い龍也はチョコの入った箱を一瞥し、克己の身体を抱き締めて
唇へ軽いキスをしてからともに横になる。
克己はやはり、幸せそうな天使の寝顔をしていた。


後日。

「それで・・・お仕事に行けなかったんですか?」

「・・・うん・・・」

後日克己と咲綺は一緒にお茶をして、バレンタインデーのことを報告し合っていた。
克己は頬を染めながらもしっかりと惚気ている。
そんな様子に咲綺は龍也の独占欲の強さも思い知り、これはとてもチョコ入れ替えの事実が
バレないようにしなくては!と改めて思う。

「ねぇ、他の皆はどんなバレンタインを過ごしたか知ってる?」

「えっと・・・呉羽さんは天さんと京くんにあげたと仰っていたような・・・。
あと皇紀さんは何か楽しいことをしたと聞きましたけど」

「そっか・・・。でもこんなに盛り上がるんだからクリスマスと合わせて国民の休日にでもしてくれればいいのにね」

克己の提案に世の恋人たちもそう思っていることだろう。

「ホワイトデーが楽しみですね」

「・・・先に休みを申請しとこうかなぁ・・・」

克己の小さな呟きに思わず笑ってしまった咲綺だった。


End

サイト開設3周年記念に、「wish」の皐月様から頂きました。

丁度バレンタインと季節があうので、
克己に咲綺ちゃんのところへ修行に行ってもらいました。
まぁ結果は…ですね。(苦笑)
克己が作ったチョコレートの行方が微妙ですv

皐月様、いつもありがとうございます!


皐月様へのサイトへは↓

「wish」 皐月様


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