織姫と彦星も、私たちのように会えたらいいのにね


学校から帰って来たら、家の中はいつもに増して賑やかだった。
「ランボさんも飾るーっ!」
「イーピンも作るね」
パタパタと廊下を走り回っているのは、最近ではすっかりうちの子と近所にも認識されているランボとイーピン。今度は何を始めたんだ?と思って居間に行ったら
「おや、おかえりなさい、ボンゴレ。お邪魔していますよ」
何故か居間に当然のようにいたのは、黒曜中の制服を着た六道骸だった。



「今日は七夕ですよ、ボンゴレ」
そう言ってニコニコと楽しそうに折り紙を切って飾りを作っている骸は、本当に子供のようだ。
その隣には、
「ツー君も一緒に作らない? ほら、折り紙もたくさん買って来たのよ」
何故か一緒になって七夕飾りを作っている母さんがいる。
何なんだよ、この組み合わせはっ!
っていうか、何で、さも当然って感じに骸がここにいるんだよ!
そんな俺の内心を読んだのか、
「…骸様、イベント好きだから」
ポツリと呟いたのは、メガネの側近だ。
いや、イベント好きなのは知ってますけどね。
だからって…なんでうちなんだよ!――って内心でツッコミを入れてたら、
「クフフ、それは当然でしょう? 今日は恋人達が再会を祝う日なんですよ」
なんてことを、あっさり言ってくれた。
再会って…今朝だってお前、迎えに来てたじゃないか!
それに! 恋人じゃないだろっ!
(いや、それ以前に、七夕の認識も違ってるよ)
とはいえ、すっかり上機嫌の骸にそれを言っても、どうせ聞き入られないことも判っている。
ホント、どうしてこう俺の周りの人間って、自分のことしか考えないヤツばっかりなんだろうな?
しかも、
「おや、そう云えば、犬はどこに行きましたか?」
「家の中でじっとしているのは性分に合わない様で…」
「おやおや、困った子ですね」
そんな事を言いながらクフフと笑う様子は、なんだかちょっと怖いんですけど?
骸って、自分の好きなことは皆でやらなきゃ気がすまないってヤツ?
何となく、柿本君の苦労がわかる気がするよ…?



「さぁどうぞ。何でも好きなことを書いていいですよ」
どうやら骸は短冊を切っていたようだ。そう言って出来上がった短冊をランボやイーピンに渡せば、二人は大喜びで早速願い事を書き始めた。
ランチアさんもだけど、骸も結構、子供好きなのかな。なんかイメージ違うなぁと思っていたら、
「ああ、忘れていました」
ピタリと空気が凍る気がして、イーピンとランボもその場に固まる。
「ボンゴレは僕のモノですから、ボンゴレと相思相愛になりたいとか、結婚したいとか、そういうことは書いてはいけませんよ」
そう言って ―― おいおい、左目が変わってるって!
(っていうか、イーピンやランボがそんなこと書くわけないだろっ!)
その上、
「たかだか仕事をサボったくらいで恋仲を引き裂くとは、天帝とやらも随分と狭量なんですね。でも、心配しないで下さい、ボンゴレ。僕はどんなことが合っても貴方から離れたりはしませんからね」
ひぇぇぇ〜。こんなところで、地獄道発動させるなよっ!



「ところで、ボンゴレは短冊にはなんて書きますか?」
「いや、今年はやめておく」


初出:2007.07.07.
改訂:2014.08.02.

ぐらんふくやかふぇ