ハロウィン、お菓子くれても悪戯するね


ハロウィンなんて、俺が子供のころには名前も気かなった気がするんだけど、最近では結構有名なイベントになってるみたいだ。
勿論、喜ぶのは小さな子供だよな。何せ、堂々とお菓子を要求できるんだから。



「ツナは知ってるのかしら〜? はろうぃんではね、とりっく、おあ、とりーとって言うんだよ。ランボさん、お菓子くれないとイタズラしちゃうからね!」
そう言ってギャハハハと笑っているのは、5歳児のランボだ。
「お前はお菓子をやったって悪戯するだろうが !?」
かといって、やらなければさらに何をしでかすかわかったもんじゃない。だからとりあえずキャンディを1個渡せば、
「あらら〜1個だけですか? こんなんじゃ、ランボさん、イタズラしちゃうよ?」
思いっきり不満そうに見上げている。
お前なぁ、そのもじゃもじゃ頭からはみ出てる包みはなんだよ? どうせ母さんやほかの人からも貰ってきてるんだろ? 大体、食べかけのキャンディまで詰め込んでるから、髪にくっついちゃってるじゃないか!
「今あるやつを食べてからにしろよ、ランボ。ちゃんとあとであげるから」
「ヤダーっ! ランボさんは今、欲しいんだもんねっ! くれなきゃ絶対イタズラしてやるんだもんねっ!」
そう言ってひっくり返って喚く姿は、本当に聞き分けのない子供のそのものだ。
しかし、
「うるせぇぞ、バカ牛。一度死ね」
と言うや否や、ランボの体がゴム毬のように壁や床に叩きつけられた。
やった加害者は ―― 言うまでもない。
「うわぁーん、リボーンがいじめたーっ!」
ああ、もう。勝手にやってくれよ。



そんな賑やかな1階を後にして自分の部屋に戻ってきたら、
「クフフ…相変わらず賑やかなものですね」
そこには、何故か黒いマントに身を包んだ骸がいた。
ああ、そうだった。もう一人 ―― お菓子をやったって悪戯しそうなやつがいたんだよな。
「Trucco o festa」
多分、これは吸血鬼の変装なんだろうな。黒いマントの下は黒いタキシード。そして、ちらりと赤い唇から覗く犬歯は…まさか手下のカートリッジじゃないとは思うよ、うん。
まぁそんなことはどうでもいいんだ。とりあえず…
「はい、キャンディ。お前の好きそうなパイナップル味にしておいたよ」
そう言って渡せば、流石にちょっと眉間のあたりがひきつった感じがしたけど…気にしない、気にしない。
ハロウィンだもんな。これくらいの悪戯はさせて欲しいよ。
しかし、
「これはありがとうございます、澤田綱吉。僕は甘いものは大好きですよ」
「だったらいいよな。ちゃんとお菓子をあげたもんなっ!」
「まぁそうですが…やはりここはお約束というものでしょう?」
そういうなり、骸はガバッとマントを広げた。
そして、そのマントで包むように俺を抱きかかえると、
「この世で一番甘いものは君自身です。ですから、君を頂いていきましょう」
「え? あ、ちょっと…持ってくなーっ!」



「因みに僕はお菓子の用意はありませんから、いくらでも悪戯していいですよ?」
「いえ、遠慮します、慎んでっ!」


初出:2007.11.11.
改訂:2014.08.02.

ぐらんふくやかふぇ