クリスマス、他のカップルに負けないくらいにくっついて


12月にはいれば町は既にクリスマス一色に染められて、何処もかしこも賑やかな雰囲気に包まれるようになりました。
本当に、日本人は面白いと感心しますね
年が明ければ神社に初詣に行き、夏のお盆には墓参りにお寺で法要。そして、クリスマスにはこの賑わいです。
全く、宗教のいいところ取りもここまで来れば天晴れと言うもので、寛容と無神経が紙一重とはよく言ったものです。
尤も神の存在など、僕もこれっぽっちも信じてはいませんから、どうこう言うつもりはありません。
しかし、
「…って、言うわけで、その…クリスマスは皆で騒ごうってことになったから…」
先ほどから一生懸命理由を告げるその少年は、本当に申し訳なさそうに俯いています。
何でも、クリスマス会を皆ですることになったと言うことだそうです。
先に僕のほうがその日の約束をしていたはずでしたが、言い出したのがあのアルコパレーノだと言いますから、仕方がないのでしょう。
元々、僕との約束も ―― 半ば強制のようなものでしたから。反故にしても気にすることもなかったでしょうに。
それなのに、
「だから…良かったら、骸も一緒に…」
全く、どこまでもお人よしですね、あなたと言う人は。
だから ―― 苛めたくなるんですよ? 判っていますか?
「いいえ、折角ですが、それはお断りします。折角のクリスマスをマフィアなんかと一緒に過ごすのは御免です」
そう僕が言い放てば、沢田綱吉は吃驚したような目で見上げてきました。
本当に澄んだ、綺麗な目です。少し寂しそうな、哀しそうな色をしているところが更に素晴らしいですよ。
「骸 ―― 」
そんな今にも泣き出しそうな目の沢田綱吉は、そう僕の名前を呼ぶだけで、返す言葉は見つからないようです。
本当に甘い人間ですね。だから苛めたくなるんですよ。
「気にしないでください、ボンゴレ。僕も一人ではありませんし、クリスマスはあの子達と過ごしますよ」
「でも、骸…」
「君は君のお仲間と楽しくすればいいですよ。お互い、折角のクリスマスでしょう?」
そうまで言えば、流石に
「違う、違うよ、骸。お前だって、俺にとっては大事な ―― !」
「大事な…?」
「だ、大事…だから…」
ああ、本当に。なんて素直なんでしょうね、君と言う人は。



「では、こうしましょう。クリスマスは彼らに譲りますが…今日は僕が独占します。それでいいですか?」
「え? あ…」
「今は、僕と君だけで過ごさせてください。できれば…そうですね。他のカップルに負けないくらい、イチャイチャとしましょうか?」
「なっ…何言ってんだよっ! 骸っ!」
そう言って真っ赤になった沢田綱吉は、それでも繋いだ手を離そうとはしませんでした。
クフフ…


初出:2007.12.25.
改訂:2014.08.02.

ぐらんふくやかふぇ