逆転の女神 -Goddness of Reversal- (CGIゲームアイコンの御礼)


童実野高校の体育祭は、午前中に個人競技を中心として行われ、午後は団体戦がメインになっていた。
特に盛り上がるのは、全校男子による騎馬戦である。
それはその直前に応援合戦があり、そこで対抗意識を盛り上がらせた上での肉弾戦になるため、実際に戦う生徒は勿論のこと、応援する女子の方も熱が篭るというものである。
そして、その熱が冷めないままに紅白対抗のリレーとなって、フィナーレを迎える。
勿論、この二つはその勝ち点も大きいので、勝敗の左右を握っているといっても過言ではなく、逆に言えば、どれだけ応援合戦で意気高揚させるかが勝敗にも繋がるということで、例年の応援団はその力量を問われるところでもある。
そして、今年は ――


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「次は、全校生徒による応援合戦です。各応援団の皆さん、準備をしてください」
放送部のアナウンスにより全校生徒が盛り上がる中、遊戯はどこかブルーな気分に染まっていた。
『どうした、相棒?』
そんな遊戯を心配したのか、学校では極力外に出てくることはないもう一人の「遊戯」が心の部屋から声をかける。
「うん…ちょっとね」
『元気はないな。折角の運動会だろ? 楽しくないのか?』
元々派手なことや遊びは大好きな「もう一人の遊戯」である。そのため、こんなお祭り騒ぎはもってこいというのに、表の遊戯の方はそうではないらしい。
「楽しくないってわけじゃあないんだけどね…」
勿論、遊戯とてお祭り騒ぎは嫌いではない。しかし、
「この後って、騎馬戦なんだよ」
はぁっとため息混じりに呟くところは、楽しくないなどという感じではなさそうだ。
『騎馬戦って、この前の体育の授業で練習でやっていたやつだよな。確か、城之内君たちが馬になって、その上に相棒が乗って…自分のは取られないようにして、敵の鉢巻を取ればいいんだろ?』
「うん、そうだよ」
遊戯のグループは、騎馬役が城之内、本田、御伽で、当然のごとく遊戯が騎手である。それはこの組み合わせならごく当然の配役であろうと思われたのだが、
「ただ…ボクって弱虫に見られてるから、騎馬戦だと格好の餌食なんだよね。しかも城之内君や本田君はあの通りだから先輩達にも目を付けられてて…尚更狙われやすいんだよ」
勿論審判である教師の目が光ってはいるが、騎馬戦は例年乱戦になるのが恒例である。そのため、これに乗じて日ごろの鬱憤を晴らそうというものも少なくはなく、無傷で済ませるのは至難の業なのだ。
ましてや、騎馬が城之内に本田である。この二人に怪我するのはイヤだからなるべく逃げ回ってくれとは言えないし、いや、寧ろ ――
「心配するなよ、遊戯!」
恐らくもう一人の遊戯と話しているのを聞いていたのだろう。城之内がドン!と背中を叩いて肩を組んできた。
「俺と本田がいれば問題ないぜ! 例え先輩だろうがタメだろうが、迎え撃って、蹴散らして、絶対にお前を落としたりはしないからさ。な、本田!」
「おぅ! ドーンと大船に乗った気で任せろよ! 絶対勝って、逆転してやろうぜ!」
何せケンカなら任せろという二人である。しかもここまでの結果では、遊戯たち赤組が負けており、騎馬戦と対抗リレーで勝たなくては逆転の可能性は極めてゼロに近いとなっている。おかげで城之内たちはいらぬ挑発までしているようで、ひしひしと向けられる周りの視線も微妙に痛いというものである。
(うーん…迎え撃ってくれなくていいんだけどねぇ…)
心の底からそう言いたいのは山々だが、
「…ということらしいから、遊戯君も覚悟を決めた方がよさそうだね」
「…」
既にこちらは覚悟を決めたらしく、もう一人の騎馬役の御伽はこうなったら少しでも負担を少なくする方法を模索中のようだ。
となれば、遊戯も最後の手段である。基本的に学校では出てこないということになっているもうひとりの遊戯だが、こうなったら後で痛い思いや怖い思い ―― こちらの遊戯も、時としてとんでもないことをしてくれるので ―― をするのは我慢するとしても代わってもらった方が得策と思ったのだが ――
「心配要らないわよ、遊戯。ほら、」
不意に現れた杏子がニッコリと笑って空を指差せば、
―― バラバラバラ…
聞きなれたヘリの音とともに上空から華麗に舞い降りたのは、童実野町に住むものならその名を知らぬものはいないと言われている某アミューズメント企業の若き社長だった。



「流石、時間通りね」
グランドに降り立った海馬を迎えたのは、赤組応援団の一員でもある杏子であった。
「ちゃんと体操服に着替えてきてくれたんだ。助かるわ」
「フン、貴様がそう言ったのだろうが」
「まぁそうだけど…仕事だって言ってたから、スーツかなって思ってたのよ」
もう一人の遊戯以外で海馬にポンポンと声をかけられるというのは稀有なものでもあるが、そこは怖いもの知らずの杏子である。おかげで全校生徒の注目を浴びているのだが、どちらもそんなことは全く気にかけていないようだ。
というか、
「…海馬君の体操服姿…」
滅多に学校には来ない上に、体育の授業なんて受けることもない海馬である。そのため、体操服姿なんてものにはお目にかかったことは無きに等しく、その見事な脚線美には男女を問わずため息が漏れるところだ。
特に、
『俺の生足―っ! 海馬のヤツ、なんて格好を!』
服の美的センスについては色々と異議のあるもう一人の遊戯が騒ぎ立てるが、生憎、その声が聞こえるのは遊戯だけである。
そして、
「まぁいいわ。そんなことよりも時間が無いんでしょ? じゃあ、コレ持って。お願いね」
「…なんだこれは?」
「あら、知らないの? ポンポンよ。本当は使う本人が作るんだけど、海馬君のは私が作っておいたから」
そう言って杏子が渡したのは、赤のビニルテープでつくったポンポンである。
それを思わず受け取ってしまった海馬は、地を這うような低い声で
「俺が聞いていたのは、応援合戦に出るだけでいいという話だったはずだが?」
そう尋ねたが、それに怯むような杏子でもない。
「そうよ。だからチアリーダー役を用意しておいたの」
「何故、チアリーダーだ!」
それは、皆が見たかったから ―― というのは流石に言えず、杏子は少し引きつりながらも笑顔で答えた。
「だって仕方がないでしょ? 海馬君ってば学校に中々来ないから、学ランのサイズ合わせができなかったのよ。チアリーダーなら、いざとなればポンポンだけでもOKだしね」
尤も、本気で学ランにしようというのならば、幾らでもサイズ合わせなどできたはずでもあるのだが ―― それはそれ。
尚、学ランの準備は出来ていないが、スコートの準備は出来ていたりしており、あっという間に着せられてしまっているのだが、既に一杯一杯の海馬は気が付いていないようだ。
「まぁ細かいことは気にしないで。この後の騎馬戦には遊戯たちも出るのよ。海馬君の応援で意気も上がるってものでしょう?」
と言われると、そこで漸く遊戯もいることに気が付いた。
そこは、誰もが知っている宿命の二人である。邪魔をするものなど、いるはずもない。そのため、周りがさっと避けるように場所を空ければ、海馬の目の前には遊戯と城之内たちだけが立っていた。
ただし、今の遊戯は本来の「武藤遊戯」の方である。
「何? 貴様…騎馬戦に出るのか?」
「え? う、うん…一応ね」
「ほう…それで、騎馬はそこの凡骨と雑魚どもか…」
凡骨呼ばわりされた城之内たちだが、何せ目の前にいるのは戦の女神のような海馬である。日に焼けていない白い足には眼が離せなくてそれどころでもない。
そして、
「遊戯! 貴様は俺が唯一認めたデュエリスト! 例え騎馬戦だろうが、負けることは許さんからな!」
と言えば、
「ククっ、判ってるぜ、海馬。お前の応援があれば、オレは無敵だぜっ!」
いつの間にか入れ替わったもう一人の遊戯が、ドン☆!と言い放てば、赤組の優勝は決まったも同然である。



そうして、海馬の応援のおかげで殆どの騎馬がまともに立つ事もできず、遊戯たちが一人勝ちして騎馬戦は赤組の勝利となり、更に、
「判っているだろうが…負けたら罰ゲームだぜ☆」
「フン、死の体感再現ボックス用意してやってもいいぞ?」
そういわれた最後の種目、リレーの選手たちも死に物狂いで走った為、赤組は奇跡の大逆転となった。


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閉会式も無事に済み、全校生徒が帰路につく中、
「良かったわ。体育祭の後片付けって、負けた組の応援団がすることになってたのよね」
そう呟いた杏子の視線の先では、
「海馬! 今夜は二人で今日の勝利を祝おうぜ!」
そう言うなりヘリに乗りこんでしまった遊戯と海馬を見送ったクラスメイトたちは、
「まぁ、明日は日曜日だし」
「…月曜日も代休だったねぇ〜」
そんな風に妙に納得していたようだった。



Fin.

思い立って設置したCGIゲームで、ステキアイコンが見つからなかったので「誰か作ってくれないですかぁ?」と
下心ミエミエで書いていたら、なんと!流奈様から社長の4面相で頂いてしまいました!

あ、ありがとうございますっ!流奈様っ!大事に家宝にして、毎日褒め称えさせて頂いております!

そしてそのお礼に しもべになります リク承りますvと申し上げましところ、
闇海で体育祭(文化祭)かヘンクリで武術(デュエル?)大会と頂きました。
お祭り騒ぎな設定で、社長(クリス)が着飾ったりするとなお良し&
勝者にキスはお約束(それ以上は、別室にて続きを・・・笑)とのことでしたので、

社長のチアリーダーなんてどうでしょう!と。
そして、勝者にキス…というか、御持ち帰りで!(あ、でもヘリの行き先は海馬邸かKC社長室が確率大)

こんなものでよろしかったでしょうか?ご笑納いただけますと幸いです〜。

2006.09.20.

Pearl Box