06:この切なささえも、擁きしめて(青眼×瀬人)


最初の別れは、熱砂の国での出来事だった。
青い法衣に身を包み、最後まで戦火の前線に立って兵を指揮していたが、既に国力を失っていた軍に勝機など在ろうはずがない。
次々と押し寄せる敵兵を前に、抗う術など残っているはずもない。
しかし、
『ファラオからお預かりした国だ。みすみす奪われるわけには行かぬ』
そう言って最後まで敵に背を向けず、最後の最期まで退くことなく業火の中に消えていった。


その次は、凍てついた北の荒野。
全ての友軍が自壊し、または降伏していっても。最期まで剣を掲げ敵を切り捨てていった。
『言ったはずだ、××…。この俺を跪かせたいのなら、力ずくで俺を倒してからにしろ、と』
そう言っていたはずなのに。その敵に向かって放たれた矢を受けて倒れたときの、あの、大地を染めた血の色を忘れたことは一度もない。


わかっている。
人間を主とするならば、いずれは避けられぬ運命であるのは ―― 言うまでもないと。


悠久にも等しい己たちとは異なり、人の身であれば、その生は例え全うしたとしても知れたものだ。
ましてやかの主は、安穏の生など望む存在ではありえない。
どんな国に生まれようとも。
どんな時代に生まれようとも。
そして、たとえ何度生まれ変わろうとしても。


それでも ――





「…どうした? 青眼」
不意に気配を感じた海馬が目を開けると、そこには心配そうに見下ろす青眼たちの姿があった。
バーチャルシステムでも、勿論、夢や幻でもない確かな存在。
その、自分と同じ蒼い瞳に、心配だと訴えるものを感じたから、
「俺の体のことを心配してくれているのか?」
そう尋ねれば、青眼 ―― ジブリールは、Yesというように頬をこすりつけてきた。
「キュゥ…」
「すまん、確かに無理をしたな」
「グゥ…キュルル…」
「判った。もう少し休もう。1時間たったら起こしてくれ」
そう呟くと海馬は静かに目を閉じて、ひっそりと眠りについていた。


いつかはこの主とも別れを迎えることがあるだろう。
それは、主が人である限り避けられない運命だ。
でも、
「キュゥ…グルルル…」
(貴方の強さも弱さも…切なさも儚さも。全てをお守りしますから)


それは ―― はるか3000年の時を隔てて変わらぬ誓い。





Fin.

社長にとって、一番の癒し系はモクバと青眼です。
ということで、今回は青眼(ジブリール)にご登場v

当サイトでは、ジブリールは社長の専属ですので。
(アズラエルがセトで、イブがクリス)

社長の安眠を守ります、青眼。
勿論邪魔するヤツには、爆裂疾風弾!


2007.07.22.