青04:マシュマロ(城之内×海馬)


「なんだ、これは?」
海馬コーポレーションの社長室。
突然押しかけてきた俺が差し出した、いかにも女子高生が好みそうなピンクの包みに赤いリボンの小箱を目の前にして、海馬が不審そうに問い詰めてきた。
「お前にプレゼントだと」
「誰からだ?」
ま、俺がこんな可愛いものを持ってくるとは思わないだろうから、当然といえば当然の質問だな。
だが、
「…静香から」
というと、海馬は更に不審気な表情で俺を睨みつけてきた。
「なんで俺が、貴様の妹からプレゼントをされるんだ?」
「…それはこっちが聞きたいぜ」
そうだよ、なんでコイツになんだ! マジで俺が聞きたいぜ…っていうか、実際聞いたんだが、
『だって、お兄ちゃん、海馬さんに色々とお世話になってるんでしょう?』
…モチロン、深い意味はないはずだ。因みに世話になんぞなった覚えもないが。
おかげで本田と御伽は泣いてたぞ。なんで海馬なんだ〜って。
「なんでも、家庭科の授業で作ったんだと。それで、おすそ分けだそうだ。いつも俺が世話になってるからって…」
「…凡骨にはもったいない妹だな」
「うるせぇ! いらねえなら俺がもらう!」
「妹の好意を踏みにじるつもりか?」
淡々とした口調ながら、しっかりと小箱は手にしている。
「お前の妹に免じてもらっておいてやる。あけるぞ?」
「あ、ああ…」
口調は相変わらずだが、海馬はその細い指で丁寧に包みを開けていった。きちんとリボンを解いて、包み紙もテープをはがして破かないように。
「…家庭科で作ったと言っていたな?」
中に入っていたのは、真っ白なマシュマロだった。
白くてふわふわとしていて、まるで淡雪のようだ。
だが、海馬はそれを見るなり席を立った。
「お、おい…?」
まさか、ここまできて喰わないとか言うんじゃないだろうな!
しかし、海馬は据付の戸棚からティーセット ―― メーカーなんか俺は知らないぞ ―― をとりだすと、ポットにお湯を注ぎはじめた。
「そこに座れ。今、紅茶でも淹れてやる」
はい? 紅茶って…お前がか?
「それとも何か? 俺の淹れる紅茶は飲めないとでも?」
ぶるんぶるんと効果音が付きそうなほど、首を振る。



しかし、何をやっても絵になるやつだ。なれた仕草でカップに紅茶を注ぐと、俺の前に音も立てず差し出してきた。
もちろん、静香お手製のマシュマロもテーブルの上にある。
「甘いものには紅茶がいいだろう」
「あ、ああ…美味いな」
「当たり前だ。誰が淹れたと思っている」
取り澄ました表情でカップに口をつけるが ―― フフン、照れてんのはバレてるぜ。
「このマシュマロは静香が作ったんだぜ」
「フン…兄に似ないでよかったな」
「…なんだよ、それ…」
ま、いいか。
たまにはいいだろう、こんなティータイムも。






Fin.

なでりん師匠のお話で社長が紅茶を入れてるって話題が出て…
いいなぁ〜浅葱も飲みたいぜ〜という妄想からの結果です。
ま、城之内に紅茶の味がわかるとは思えませんが、
静香ちゃんお手製のマシュマロと一緒ならいいかな、と。
あ、でもごめん、浅葱はマシュマロ食べれないんだよね、実は。(苦笑)

2003.09.21.

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