青05:バランス(闇バクラ×瀬人)


「んっ…」
不意に隣に眠っていたヤツが身じろぎをして、オレ様は瞑想の闇から現代へと意識を戻していた。。
真っ暗な部屋の中、月明かりだけが寒々と差し込めている寝室。
見れば先ほどの情事の名残か、ヤツはギュッとシーツを握り締めたまま深い眠りに堕ちている。
「…ったく、そんなに我慢することねぇだろうに」
苦笑交じりにそっとその手を開かせると、白い身体が冷え切っていることに気が付いた。
「ちゃんと布団もかけろよな。風邪引くだろうが…」
起きているときには絶対にいえない台詞だな。ま、コイツも寝てるときでもないと、こんな風に素直に受け入れることもないだろうが。
そんなことを自嘲交じりに考えていたら ――
『ふぅ〜ん、キミって海馬君には優しいんだね』
ふと俺の中で宿主様が目を覚ました。
『うわぁ〜海馬君、キレイ…』
「おいこら、勝手に見るな」
『キミが見てれば見えちゃうじゃない。それに、減るものでもないでしょ』
「うるせぇな。コレはオレ様のだぞ」
『海馬君は海馬君でしょ? それに…』
宿主が無理やり左腕だけ意識を回復させ、そっと海馬の鎖骨に指を滑らせた。
『コレは…キミじゃないね。遊戯君の付けた痕?』
宿主じゃなかったら殺してやりたくなるような台詞を吐きやがる。
首というよりは左肩に近い辺りと鎖骨のラインにつけられた朱色の所有印。相変わらずの独占欲にこっちの方が辟易するぜ。
今夜はイヤだと抜かした理由がコレだということは、すぐにわかった。
ま、それでやめるオレ様でもないがな。
尤も、ハラがたったからつい限度を超えた気もするが…。
そんなオレ様の気配を察したのか、宿主サマは心配げな感じで海馬の顔を覗き込んでいる。
『海馬君…大丈夫?』
「これくらいで死ぬタマじゃねぇよ、コイツは」
自分の目的のためなら、手段は選ばない ―― 当然、身体なんかどうでもいいヤツだ。
そのことに関しては、今も昔も変わりはない。
おかげでオレ様もいい思いができるのだが ―― 相変わらず、哀れなヤツだ。
本気で惚れているヤツはただ1人のクセに、そいつには素直になれない。
それでも心が乾くから、他のヤツで隙間を埋めて、「大丈夫だ」と確認する。
そんな危うい方法でしかバランスが取れないコイツの心は、まるで諸刃の剣だ。
うかうかしていたら、いつかは殺られる。
上等じゃねぇか? 死と背中合わせの「恋」なんてよ。
甘っちょろい馴れ合いなんざ、真っ平だ。
奪うか奪われるか、その絶妙なバランスが心地よい。
「ま…オレ様に掴まったのが、コイツの運の尽きだな」
クククっと笑って海馬の身体をかき抱く。元々低い体温が、オレ様の熱を吸収していくのが心地よい。
このまま一緒に地獄に堕ちるのも一興だな。
そんなことを考えながら、オレ様は眠りに堕ちた。
だから、そのあと宿主が漏らした言葉なんぞ、オレ様は知らない。



『そうだね、でも、掴まったのはキミも…遊戯君も一緒だよ』






Fin.

最近、お気に入りの闇バク×瀬人です。
でも…やっぱり社長が寝てますね。
最近、仕事が忙しいのか知らん?
そういえば、これってもしかして、社長は一晩に2人の相手ですか?
そりゃあ…起きないよな、鬼畜攻だもん、ウチの闇サマは…。

2003.09.26.

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