青06:正直なヤツ(闇遊戯×海馬)


静かな社長室にカタカタとキーボードを叩く音だけが響き渡る。
画面に食い入るように見入っている海馬は、相変わらずのポーカーフェイスだ。
多分、オレの存在だって忘れきっていることだろう。
仕事が忙しいって言ってたから、暫くは遠慮して来なかったんだが…たまに来た時くらいは相手をして欲しいぜ。
ま、尤も、アポもなしに来たんだから、オレも悪いのか?
でもモクバは『急ぎの仕事は終わった』って言ってたんだけどな。
大体コイツは仕事のしすぎだと思うぜ。そんなに仕事をして金を儲けたって、忙しくて使う暇もないくせに。そもそも寝る間も惜しんで仕事なんて、高校生が普通するか? そのうち身体を壊すぜ。
あれ? そういえばちょっと顔色が悪いし、また痩せたんじゃないのか?
そう思うと ―― 確かめずにはいられなくなった。



「な、何をするっ!」
そっと忍び寄って背後から抱きしめる。うん、やっぱり痩せてる。
「離せ! 仕事の邪魔だ!」
「もう、いい加減にしろ。また無理して…この前より痩せてるじゃないか」
「う、うるさい! キサマにいわれる筋合いはないわっ!」
「おいおい、それはないだろう? これ以上痩せたら、抱き心地が悪くなるぜ」
「な…///」
カッと白皙の肌が朱に染まる。こればかりは見事な反応だ。しかも…小刻みに肩が震えているのは怒りだけのせいではないはずだな。
「どうしても今日中にやらなきゃいけない仕事なのか?」
耳元で囁くと、ビクンと身体が跳ねるのが手に取るように判る。
「モクバに聞いたけど、『急ぎだった仕事は終わった』って言ってたぞ?」
「…」
「急ぎでないんなら、たまにはゆっくりしようぜ。オレもここにいるんだし」
「…」
「海馬?」
いつもなら高笑いと共に『何でこのオレが貴様のような暇人の相手などせねばならんのだ!』とジェラルミンアタックもしくは鉛の弾が向かってくるはずなのに、今日の海馬はやっぱりヘンだった。
「…思わなかったんだ」
「ん? 何…」
珍しくうつむいて殆ど聞こえないような声が小さく呟く。
「貴様が来ると…思わなかった…。だから仕事をいれて…」
「え? だってお前が忙しいって言ってたから…」
と言いかけて、やめた。
『来るな』は言えても、『来てくれ』は言えないよな、お前の性格じゃあ。
ましてや『待っている』なんて自覚もできないだろうし…。
要はオレが来ないから拗ねて無理矢理仕事を入れてってことか。ホント、わかりやすい性格だぜ。
「悪かったよ、でもほら、ちゃんと来ただろ? だから相手になってくれるよな?」
耳元で囁くと、海馬ははにかんだような顔を一瞬見せて、
「ふん、仕方のないヤツだ。少しだけなら構ってやる」
そう言いながらも白皙の頬は羞恥で赤く染まっている。
こういうところは正直だよな。嬉しそうなのが見え見えだぜ。
ま、それ以上にオレの方が浮かれきってるけどな。



「今日は相棒からお許しも出てるから、ちゃんと泊まってってやるからな♪」
「な…じょーだんではないわ! オレは明日も仕事だ!」
「え〜いいじゃないか〜。久々の逢瀬なんだから、イチャイチャとしようぜ♪」
「ええい、離せ、離さんかっ!」
「ったく、もっと正直になれよ、海馬。可愛がってやるからさ」
まあ、口ではなんていっても、身体は正直なヤツだからな。
「愛してるぜ、瀬人♪」
「…///恥ずかしいヤツめ」






Fin.

たまにはいいかな〜こんな甘々バカップルぶりも。
しかし、社長は可愛いっすね♪

2003.09.28.

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