青09:新入生(闇バクラ)


「獏良 了です。よろしく…」



あわれな宿主サマはこれで何度目の転校だっけ?
この「日本」という国じゃあ、宿主様ぐらいのガキは昼間は「学校」とやらに行くのが普通で、街中をウロウロしていれば「少年課」とかいう役人に捕まることがあるらしい。
別に掴まっても、このオレ様の手にかかれば逃げることなんざ朝飯前だがな。
それにしても限度ってモンがある。
更に言えば行動可能範囲の狭さも問題だ。
宿主様の家族と一緒に住み続けるとしたらな。
だから、こうやってあちこちに「転校」とやらをしてくれた方が、オレ様としては好都合なわけだ。
更に今回は ―― 大ビンゴだぜ。
「あれ? 何か千年リングが動いた気がしたけど…気のせいかな?」
気のせいなんかじゃねぇよ。ここに千年アイテムを持ったヤツがいるのは間違いないぜ。



「獏良くん!」
おっと、早速お呼びだぜ、宿主様。うまく誘い出してくれよ。
「あ、みんな!」
「明日、迷惑じゃなかったら学校の帰りに獏良くん家で『モンスター・ワールド』をやりたいんだけど…どうかな?」
ククク…これはまた、エモノのほうからやってきてくれるとは好都合じゃねぇか。
しかし、宿主様は断りやがった。
ったく、面倒なヤツだ。
今まで、厄介ごとが起きれば逃げ出すしか能がなかったくせに、今回に限って更に敵前逃亡か?
冗談じゃねぇぜ。やっと千年アイテムの一つを見つけたって言うのによ。
今回もいつもと同じように闇のゲームに引き込んで、アイテムさえ奪っちまえばおさらばでかまわねぇんだよ。
それでまた転校してくれれば、千年アイテムを探すには好都合なんだからな。



しかし、この時代の奴等は平和で反吐が出そうだぜ。
「新入生」って言葉一つでちやほやしたり、えらく親切にしてみせたり。
生ぬるい平和ボケにつかったガキどもの考えることは判らねぇな。
だが、それももう少しだ。
千年アイテムをそろえれば、オレ様はきっとあの場所に帰ることができるだろう。
「遊びに来たぜ、獏良」
「一緒に『モンスター・ワールド』をやろう!」
ククク…もちろんだとも。
さぁ、ゲームのはじまりだぜ。






Fin.

…「新入生」と聞いて、獏良くんしか思いつかなかったのですが、
なんか、タイトルと全然あってない気がする。
ま、いいか、ワイルドなバクラって好きだし。

2003.10.05.

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