青10:病み上がり(闇遊戯×海馬)


「ハークシュン!」
盛大なくしゃみを響かせて、遊戯は少し寒そうに肩を震わせていた。
「大丈夫か? 遊戯」
「ん…多分…」
後ろの席の城之内が囁くと、ちょっと身体を後ろに反らせてニコリと笑っている。そして、教室の前に視線を戻す一瞬に、斜め後ろの席にいる海馬と目が合った。
「フン…」
遊戯が微笑む前に海馬は視線を外し、授業とは全く関係のないノートパソコンに見入っている。
それを少し寂しそうに ―― しかしどこか安心したように見て、再び遊戯がくしゃみを連発させた。



「なんだ、もう帰るのか?」
午前の授業を終えると、さっさと帰り仕度をはじめた海馬に、いつの間に入れ替わったのかもう一人の遊戯が近づいていた。
「たまには一日学校にいるってできないのか?」
言外に無理をするなと言っている様であるが、風邪を引いて赤い顔をしている遊戯に言われても、説得力がないというものである。
だから、
「午後から会議が入っている」
と答えれば、
「そうか、大変だな」
「貴様に心配されるいわれはない」
などと、つい冷たく取り澄ましてしまうわけで…。
しかし、
「そういう貴様の方が…」
と言いかけて、止めた。
そもそも遊戯の風邪の出所は、自分である。
でも、感染されるような真似をしたのは遊戯の自業自得であって…。
だから、
「折角回復したというのに、貴様に感染されでもしては元も子もないからな」
そう言い放つと、さっさと教室を後にした。多少、後ろ髪が引かれる思いはしたが、
(元を正せばヤツが悪いのだ)
と自分に言い聞かせて学校を後にした。



そんな海馬を見送った遊戯は ――
『とりあえずこれで安心した? もう一人の僕?』
心の部屋から、表の遊戯が話し掛けてくる。
『良かったね、海馬君、元気になったみたいで』
「ああ悪かったな、相棒」
『クスっ…じゃあもう帰るよ? ウチに着いたら約束どおり代わってもらうからね』
そういうと再び人格が入れ替わって、表の遊戯が帰り仕度をはじめる。
寒気はするし喉は痛いし咳もくしゃみも止まらない。
「全く…海馬君が治ったか心配で寝てられないなんて、もう一人の僕も我侭なんだから」
ふらふらする頭でそう呟くと、遊戯もまた学校を後にしていた。






Fin.

…ということで、病み上がりなのは社長です。
闇様は「病気中」。
一応、浅葱のお話の続きということで…。
あっちではおバカな闇様でしたが…
こういうささやかな思いやり(?)って好きだなv

2003.11.05.

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