青11:宅配便(城之内×海馬)


アパートに帰ってきたのは、既に朝日が東の空から姿を見せかけている頃だった。



昨日は俺の誕生日で、いつものメンバーで徹夜のカラオケだった。
いまどきカラオケ…とも思ったが、人数が入れて騒いでも問題なくて、軽く飲み食いできてと言うことを考えれば丁度いい。
それに、高校生でどんちゃんと言ったらこんなもんだろう。どこかの御曹司のバースディパーティとは格が違うってモンだ。
ま、楽しかったということにかけては比べモンにもならないがな。
やっぱり気の合うメンバーで騒げるのは、嬉しいし楽しい。
ホントはもう1人、来て欲しかったんだが ―― お忙しい社長サマは海外出張中だ。
大体、例え日本にいたとしても、このメンバーだと知ったら絶対に来ないだろうしな。
「ま、しょーがねぇよな」
多分、昨日が何の日かなんてことだって覚えてちゃくれまい。自分の誕生日だって忘れるくらいだし。



しかし、流石に徹夜…喉が痛いし、眠い。
「今日はバイトもねぇし、さっさと寝ちまおうっと」
階段を駆け上がって部屋の前に立ち、鍵を開けようとして ―― 新聞受けに入っている黄色い紙に気が付いた。
手にとって見れば ―― 宅配便の不在票。
荷物の差出人は、「Seto Kaiba」の文字。
「まさか…な」
とにかく部屋に入ってじっくり見る。
不在票に書かれた届け日は、もちろん昨日の日付。送り元は「US., NY」って書いてあるから、それは海馬から聞いていた出張先と一致する。
まさかとは思うけど、でも…。
『俺などとよりも、お友達とでも騒いだ方が楽しかろう? 第一、俺は仕事だ』
そう言って、全く気が無いって感じだったくせに。
これははっきり言って、「リバースカード、オープン! 魔法カード発動!」的な攻撃だ。
しかも時間差攻撃 ――
「ちっ…幾らなんでもまだ営業所が開いてないか。」
昨日は宵の口から遊戯たちと遊んでたから、折角の「時間指定」も意味が無かったな。
大体、荷物を送るなら一言電話でもしてくれればいいのに。
そうしたら、ちゃんと待っててやったのによ。
…ま、海馬に限ってそんな恥ずかしいことできないか。



「帰ってきたら…礼に行かなきゃな」
でも、アイツがどんなモノをどんな顔して選んだのだろうと想像していると、なんだか楽しくなってきた。
コタツにもぐりこんで携帯と不在票を並べて置いておく。あとは、時計との睨めっこだ。
時刻は ―― 不在票に書かれた営業時間よりまだ早い。だから、それまでの間アイツの顔を想像しながら一眠りして、待つとするか。






Fin.

…社長、いないじゃん。おいおい…。
最近このパターンが多い気がしますね。
ところで、城之内君の誕生日っていつでしたっけ?
確か冬だったような気がするのですが…?

2003.10.10.

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