青15:履歴書(城之内&海馬)


新しいバイト先に出す履歴書を前に、城之内は頭を抱えていた。



大体、高校生の身分では、履歴なんて大したものがかけるはずもない。
自慢にもならないが、資格ももっていなければ誇れる趣味だってない。
いや、唯一の趣味については、一応自慢もできるのだが、
「M&Wならバトルシティで第3位ってことになってるんだけどな」
と呟けば、
「フン、決闘王(デュエリストキング)以外の順位など、意味等もたぬわ」
と、これまた同じ3位の海馬から手厳しい一言が飛んできた。
「でもよぉ、他に書くことがないんだぜ」
「そもそも高校生相手に資格など求めてはおらんだろう。健康良好とでも書いておけ」
「う〜ん、でもそれだけってのも寂しいな」
「ないものは書けんだろうが」
「そうだけど…」
と、なかなか納得はできないらしい。
「じゃあさ、ちなみにお前ならどんなことを書く?」
と聞くと、
「…」
暫く無言でキーボードを叩き、ふと手を休めた。
と同時にプリンターから数枚の紙が排出され、視線で促される。
「いいのか?」
プライベートを詮索されるのは極力嫌がる海馬にしては珍しいことで、城之内は一応断ってからプリントアウトされる書類を見た。
「貴様では、参考にもならんだろうがな」
「…」
今度は城之内のほうが無言になる。
(そうだよな。聞いた相手が間違いだった…)
見ているうちに ―― 頭を抱えたくなってきた。
城之内が聞いてしまった相手は、一応表向きは同じ高校生ではあるものの ――
世界に名だたる海馬コーポレーションの社長で、
ソリットビジョンや決闘盤(デュエルディスク)の開発者で、車どころかヘリ、あげくが戦闘機まで操縦できるというとんでもないやつだったりするのだ。
その履歴や資格に至ってはA4の原稿用紙数枚に及ぶため、通常の履歴書では書ききれるはずもない。



おそらく、プリントアウトされたそれは海馬が一般に公開しているデータの一部であろうが、それだけでも一介の高校生である城之内では太刀打ちなどできるはずもない。
(ま、最初っから張り合おうなんざ思っちゃいねぇけどよ)
そう思うことが、海馬に言わせれば「負け犬の…」と言うヤツなのだろうが。
更に思えば ――
(そう言えば、なんでコイツってば高校に通ってるんだ?)
学歴には、既に何とかカレッジを卒業とまで書いてある。カレッジといえば大学 ―― くらいの英語力は、流石に城之内も持っていて、
「お前って…大学出てんの? じゃ、なんで高校なんか通ってるわけ?」
と、つい聞いてしまった。
「…貴様に答えるいわれはない」
「なんだよ、それ。ケチ」
「ケチだと? 言うに事欠いて…」
「じゃ、教えて♪」
「 ―― 断る」
といったきり、再びパソコンの画面に釘付けになり、仕事に戻ってしまった。
(忙しいって言って、殆ど来れないくせに…)
ちなみに今だって、忙しいから帰れといわれていたりする。
(ま、帰る気はないけどな)
顔を見るくらい、いいじゃんと思って ―― あ、成程と納得した。
「海馬…」
名前を呼べば、忙しいといいつつも律儀に顔を上げてくれる。
「お前ってば、可愛いな♪」
「…一度、死んでみるか?」
カチャリと銃が向けられて、あわててブンブンと首を振る。
全く、素直じゃないな。



顔を見に行くくらい ―― 別にいいんじゃねぇの?






Fin.

後半…履歴書とは関係なくなったな。
なんか、甘々カップルですね、この2人…。
城之内君ってワンコってイメージが強すぎなんですよ。
つい、じゃれたくなったりして…。

2003.11.05.

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