青20:青信号(闇遊戯×海馬)


目の前の交差点で、信号が赤から青に変った。
途端に周りが動き出し、多くの人間がクロスしていく。
ぶつかってもおかしくないと思うのに、みんなそ知らぬ顔ですれ違い、まるで水の中を泳いでいるみたいだな。
スルリとぶつかる寸前で交し合い、それでいて相手のコトなんか見ちゃいない。
知らない人間、知らない人、知らない ―― 空間。
こんなに人が沢山いるのに、妙に寒々とした気分になって、オレは足を踏み出せないでいた。
誰も見ていない。オレのコトなんか。
この群集に埋もれて、いてもいなくても同じような気分になる。
と、その時。
「…何をしている?」
ふと聞こえてきた胸を差すような声に、オレがここいいることを知らされる。
「さっきから見ていれば…貴様、まさか交差点も渡れないとか言うのではないだろうな?」
「か…いば?」
「こんなところで立ったまま寝ている気か? 一度、轢かれなければ目も覚めんか?」
見ていた? どこで ―― と聞きかけて、そういえばこの向こうにはKCの本社ビルがあった。
童実野町の中心に立つ海馬コーポレーションの摩天楼。
その最上階には、蒼い眼の支配者の部屋がある。
丁度、そこから見下ろせば、この交差点は足元に見えるはず。
「フフン…なんだ、迎えに来てくれたのか?」
「///っ馬鹿もの! そんなのではないわっ!」
「いいってv 照れるなよ、海馬。しょうがないな〜、同伴出社ってのもいいよな♪」
「 ―― ///っ!」
再び変る、青信号。
「迎えに来てくれたお礼に、今日は眼一杯サービスしてやるぜ☆」
「せんでいいっ! 離せ、遊戯!」
「イ・ヤ」
手をつなぎ、海馬と交差点を渡る。



必ず見つける、オレの青。
最愛の恋人の蒼穹が ―― オレが先に進める青信号。






Fin.

…とりあえず、「青」のお題コンプリート!
アニメの闇様がず〜っとヘタレてたので、ちょっとブルーにしてみました。
でも…やっぱ闇様は異様な自信に満ちてられる方がいいな。

2003.12.02.

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