緑02:うたた寝(モクバ&瀬人)


外は冷たい北風が吹き荒れている。
でも、サンルームの中は小春日和の陽だまりに包まれて ――
その中で、カタンと音が一つした。



「あれ、兄サマ?」
物音に気が付いて顔を上げたら、ロッキングチェアに身を委ねていた兄サマがいつしか小さな寝息を立てていた。
物音の正体は ―― 兄サマの手から滑り落ちた単行本。
「キュゥ〜」
「しぃ〜、寝かせておいてあげよう、ブルーアイズ」
ミニチュア版モードのブルーアイズが落ちた本を拾おうとしていたが、オレはそれをやめさせた。
だって、ホントに久しぶりなんだ。
兄サマの寝顔を見るのは。
「ここのところ、忙しかったから…疲れてるんだゼ」
人の気配には敏感な兄サマは、滅多なことでは人前でなんて眠ったりしない。
そう、多分兄サマの寝顔を見ることが出来る人間は、口惜しいけど、もう一人の遊戯くらいなんだろうな。
でも ――
「あ、でもこのままじゃあ風邪引いちゃうゼ」
オレはそっと席を離れると、部屋に戻って毛布を持ってきた。
勿論、その間に逢った使用人たちに、サンルームへの立ち入り禁止を告げたのは言うまでもない。



「じゃあ、あとは頼むゼ、ブルーアイズ」
そっと兄サマの身体に毛布をかけて、オレは再びサンルームをあとにした。
ホントはもっともっと兄サマの寝顔を見ていたかったけど、きっとオレがいたら兄サマは起きちゃうだろうから。
兄サマの護衛はブルーアイズで大丈夫。
あとの邪魔するヤツはオレが排除して見せるぜぃ!
「磯野! 屋敷周りの警備をランクAからSにアップだ。特にサンルームへの通路を重点的にガードして、何人足りとも近づけるな!」
「は、はいモクバ様!」
オペレーションルームで全ての警備システムをチェックする。
よし、兄サマの安らぎを守るのはオレの役目だぜぃ!






Fin.

海馬邸では、主がうたた寝一つするだけでもエマージェンシーがかけられるらしい…。
流石、「兄サマの幸せを守る会」会長モクバです。
(↑あるのか、そんなの?)
ま、確かにレアだけど…写真くらい撮らせて欲しいと思うのはやっぱりダメかしら?

2003.12.21.

Silverry moon light