緑10:時代遅れ(ペガサス×海馬)


「デュエルにはこのデュエルリンクを使いマース」
「随分と時代物のシステムだが…いいだろう」



デュエル界からは引退し、カードデザイナーとしてのみの活動に切り替えたとは言っても、そのカードの生みの親でもある自分がまさか負けるなどとは思っていなかったペガサスである。
(フフフ…いいでしょう、海馬ボーイ。ユーに勝っても、私にはブルーアイズは必要ありまセーン。ですからブルーアイズの代わりに、私はユーを頂きましょうv)
半身ともいえる「青眼の白龍」のためなら、海馬はそれこそどんなことでもするだろう。
海馬にとって己の命と引き換えにしても惜しくないもの。
それは、最愛の弟であるモクバと、「青眼の白龍」のカードであるから。
その大事なカードをかけてのデュエルということは、海馬も並々ならぬ決意を抱いてのこととは想像にたやすい。
だが、
(キングダムから、ユーと私の力関係は変わっていないのデース。そのことをじっくりと教えてさしあげマース)



そうして始まったデュエルであったが、幕はペガサスの敗北で閉じることになる。



「アンティルールだ。この二枚のカードをもらっていこう」
「二枚? そんなはずは…待ちなさい、海馬ボーイ!」
ダメージの衝撃に耐え切れずリンクから弾き飛ばされたペガサスなど歯牙にもかけず、海馬が立ち去っていく。
デュエル開始前に、お互いレアカードの入ったケースをテーブルの上においていた。
勝った方が相手のレアカードを手に入れるアンティルール。
勿論海馬が賭けたのは、己の半身とも言える3枚の「青眼の白龍」で、ペガサスが賭けたのは ―― 密かに作っていた「神をも超えるカード」。
現在、「神のカード」3枚を所有しているのは、決闘王の名を冠した武藤遊戯。
その遊戯を倒すのは ―― 海馬瀬人しかいないと思っていたからこそ作り上げた、「青眼の光龍」である。
「青眼の白龍」3枚を生贄にして召還した「青眼の究極竜」を、更に生贄にしなくては召還することのできないヘビーコストのモンスターカードである。
だがその効果は ―― 墓地に眠るドラゴン族1体に付き攻撃力を300ポイント上昇させ、その上、このカードを対象にする魔法・罠・モンスターの効果を無効にすることができるというもの。
まさに最強の効果を持つ「神」に対抗できるカード。
だから、アンティとして海馬が持っていくならこのカードであるということは予想が付くのだが ――



身体中がきしむような痛みを訴える中、なんとかテーブルまでたどり着いたペガサスは、震える手でケースを開け、中のカードを確認した。
確かに、「青眼の光龍」の姿は消え去っている。だが、それ以外には ――
「妙デース。他にはなくなったカードはありまセーン。一体、海馬ボーイは何のカードを持っていったのでショウ?」
とりあえず、めぼしいカードは残っている。
特に ―― 海馬に見つかったら破棄されかねないカードも。
「Oh! 良かったデース。これを持ってい行かれては…私の楽しみも半減してしまいマース」
そうして
「クロケッツ、私の指示は滞りないですネ?」
「…はい、ペガサス様。海馬瀬人の画像データは既に入力済みです」
「ではすぐに海馬ボーイのカードを作りましょう♪」



「確かに時代遅れのデュエルリンクですが…デュエルディスクとは異なり、装着する必要がないのが良いのデースv」
そう言ってペガサスが大事そうにセットしたのは ―― 魔法カード「増殖」。
「この「増殖」の効果で、海馬ボーイでリンク中を一杯にしたら、さぞや素晴らしいでショウ♪」
そう浮き足立ってる主を遠い目で見ながら、クロケッツはポツリと呟いた。
「…本人に知れたら、今度こそ息の根を止められますね」






Fin.

アニメ補完シリーズ第二弾!…ということで、Movieからの妄想品です。
だって、なんだってあんな薄暗い、アヤシイ場所にリングがあったのか、すっごく気になってたんですよ!
絶対、ペガのことだもん。なんか疚しいコトをしていたに違いない!と。

そして、このことを知った海馬が逆切れして遊戯のクリボー&増殖を毛嫌いしたから、
遊戯は羽クリボーを十代に上げた ―― というのが浅葱的オチです。(←オチてないよっ!)

2005.02.12.

Silverry moon light