緑11:かぐや姫(闇遊戯×海馬)


学校の宿題とやらでうなっていた相棒が、ふと思いついたように呟いた。
「キミって、かぐや姫みたいだね」



昔々、あるところに竹取の翁が住んでおりました。
ある日、いつものように竹林に竹を取りに出かけた翁は、そこで根元から光を放つ竹を見つけ、斬ってみました。
すると、中からは三寸ほどの姫が現れ、翁は家に連れ帰って育てる事にしました。
姫は日に日に美しく成長し、やがてその美貌は都でも評判のものとなりました。
そのため、連日多くの貴人が姫のもとにやってきては求婚したのですが、姫は断り続けておりました。
やがて姫の噂は時の帝の元にも入りますが、姫は帝からの求婚でさえ断ります。
実は姫は月の世界の住人で、いずれは月に帰ることが決まっていたのでした。
そして十五夜の夜、月からの迎えが来ると、姫は育ててくれた翁夫婦に不老不死の妙薬を残して月へと帰ってしまうのでした ―― 。



「…それで、どこが貴様と似ているというのだ?」
白いシーツにぐったりと身体を沈めて、海馬は律儀にも聞き返してきた。
勿論その声は掠れているし、喉はカラカラ。
ついでに言えば、指一本動かすのも億劫そうだ。
「いずれは月に帰る ―― ってところらしいぜ。俺もいずれは帰るべきところに帰らなくてはいけないからな」
俺の本当の姿は ―― 3000年前、古代エジプト王朝のファラオである。
あの石版といい、時折鮮明に脳裏に浮かぶビジョンといい、それはほぼ間違いがないはずなのだが、どうもこの話になると、海馬はすこぶる機嫌が悪くなる。
「フン、記憶もないというのに、偉そうなことを言うな」
そう言って忌々しそうに睨みあげると、プイっと拒絶するようにオレに背を向けてベッドに沈んだ。
常に「俺のロード」を驀進する海馬にとって、過去云々の話は気に入らないことこの上ないらしい。
そのくせ ―― 当事者の俺自身が記憶をなくしているあやふやなものであるというのに、オレ=ファラオについては否定することがないのだから ―― 意外だぜ。
それこそ「もしかして、お前には過去の記憶があるのか?」と問いただしたくなるっていうもんだ。
だが、
「念のため言っておいてやろう。俺は天地がひっくり返っても貴様に求婚などせんし、そもそも引き止める気もない。帰りたいのなら、さっさと帰って二度と来るな」
「おいおい、つれないこと言うなよ。オレがお前をおいていけるわけがないだろう?」
「フン、それこそ笑止だわ。大体貴様はいつだって…」
そういいかけて ―― ハタと海馬が口を閉ざす。
一瞬、オレの好きな蒼い瞳がいつもより更に潤んで艶めいて。まるで置いていかれた子供のように縋ってくる。
そんな目をさせるのはいつもオレで、また ―― なのか?と問い詰められているようで。
「いつだって…なんだよ?」
だからそう尋ねれば、当然、海馬が応えるはずなどなくて
「煩い、なんでもないわ。俺は明日も仕事で忙しい。静かにできんのなら、さっさと帰れ」
「なんでもないって言う感じじゃないな。大体、明日は学校も休みで折角相棒から身体を借りてきたんだ。そう簡単には帰れないぜ」
「貴様は休みでも俺は仕事だといっておるだろうが!」
「あー判ってるって。あと1回で許してやるよ」
「貴様に許してもらおうなどと、思っておらんわっ!」
さっきまでの物憂げな気配は一散されて、テンションが回復した海馬はバトル続行って感じだ。
「ええいっ! 貴様が月に戻ったら、二度とこちらには来れないように月ごと破壊してくれるわっ!」
「全く、素直じゃないな。寂しいから行かないでって言ってもいいんだぜ?」
「誰が言うかっ!」






Fin.

…一瞬想像してしまった。
かぐや姫=闇遊戯。
めっちゃ恐い…(←それもヲイ)

せめて表ちゃんなら十二単も可愛いかも?
っていうか…どうみても三人官女?(季節柄、ですか?)

2005.03.05.

Silverry moon light