紫03:変換キー(海馬瀬人)


カタカタカタ…とキーボートを叩く音だけが室内に響き渡る中、瀬人は何度か忌々しく舌打ちを繰り返していた。
「ええい、忌々しい。やはりヤツらに使わせたのが間違いだったわ!」
瀬人が使っているのは、時間の余裕があったら学校にも持っていくご愛用のノートパソコン。
もちろん最高ランクの最新機種。
それを更にメモリもCPUも増強されているため、本来なら仕事がはかどる事この上ないはずなのであるが ――
「チッ、またか。ええいっ!あの疫病神め!」
赤い髪の疫病神が瀬人の脳裏に浮かんだのは言うまでもない。



先日、何とか時間の都合が取れたので久しぶりに学校に行くと、文部省の暇つぶしにつきあった学校が「ゆとり教育」とやらの一環で、「あなたの住んでいる町について調べて見ましょうv」などというふざけた自由研究をやらされていた。
勿論そんなふざけたものに付き合う気が瀬人にあるはずも無い。
しかも、グループ研究だとかで ―― メンバーがメンバーである。
遊戯に城之内、本田、御伽、獏良、そしてリーダーが杏子。
これは絶対何かの陰謀としか思えないのだが、その時間はいつもの通り、課題はお友達ごっこの好きなヤツらに押し付けて、持ち込んだ書類に目を通すことに専念したのだが、レポートを書くのにパソコンを貸してくれといわれて、貸したのが間違いだった。
勿論、大事なデータにはプロテクトがかかっているから、そう言った意味での間違いはない。
そもそも奴等が使ったのは、何の変哲もないワープロソフト。
だが、それが問題だったのだ。



本日の瀬人の仕事は、某企業との新事業に関する契約について。
その問題点や交渉についてをまとめていたのだが ―― どうやら単語の辞書登録機能を散々弄ってくれたらしい。
機種の色についてまとめようとすれば、『ブラック』は『ブラックマジシャン』、『レッド』は『レッドアイズ』と問答無用の強制変換。(『ブルー』で『ブルーアイズ』と出るのは許せるらしい。)
挙句が契約書の『第○条のうち〜』と変換しようとして『第○城之内』と出たときには、「凡骨風情がでしゃばるな!」と叫ぶ始末。
そして、それでもなんとか打ち込んで、最後に自分の名前 ―― 『かいば せと』を変換したら、
『愛してる 瀬人』
「おのれ〜痴れ者めが !!」
ハッと気が付いたときには、パソコン画面を数発の弾が貫通していた。






Fin.

辞書登録機能フル活用!
ちなみに浅葱は「瀬人」・「城之内」・「童実野」・「兄サマ」を登録しています。
あ、あと「あまあま」→「甘々バカップル」もね。

2004.01.12.

Atelier Black-White