紫04:午前2時(闇遊戯×海馬)


開発中の新型機のバグに手間取り、海馬が自宅に戻ってきたのは深夜のことだった。
「随分と遅かったな」
自室の電気も点けずにネクタイを緩めると、バルコニーへと続く窓の辺りから声がする。
「…貴様か」
何しに来た?とは聞かない ―― 判っているから。
だがその日は本当に疲れていたので、それきり無視して上着を脱いだ。
開け放たれた窓から差し込む月光に晒された肌は、白を通りこして透けるように蒼い。
ここのところのハードスケジュールで、また少しやせた気がするのは ―― 絶対に気のせいばかりではないと思う。
「お前…またメシ抜いただろう? そのうち倒れるぞ」
「余計なお世話だ。そんなにヤワな身体ではない」
「…抱き心地が悪くなる」
ボソリと告げられた本音に氷の視線を向けると、再び無視してシャワールームへと向かった。



「午前2時に鏡を見ると、自分の死に顔が見れるって知ってるか?」
当然のようにシャワールームまで付いてきた遊戯がそんなことを言うのを、海馬は思い切り冷めた視線で聞き流した。
「この前、相棒と見てたTVでやってたんだ。丑三つ時って言うんだろ? 『草木も眠る丑三つ時』って言うんだってな」
「ふん、くだらん。そういうことはあの凡骨辺りに言ってやれ。喜んで悲鳴を上げるぞ」
それは確かにと納得しつつ、そういう非ィ現実的なものは信用しない恋人だったと改めて思い当たる。
あのTV番組が放映された翌日は、結構クラスでは盛り上がっていたのだが ―― オカルト紛いのものは一切を否定してかかる佳人は、恐がる気配などあるはずも無い。
(そういやあ、この前のオカルト映画も全然恐がってなかったしな)



「そもそも、自分の死に顔など見て何になる? 死ねば骨か灰になるだけのことだ」
そう言い放ってシャワールームに消えた恋人を、遊戯は苦笑して見送った。
「ハっ…確かに。キレイで、生きてるお前の方がいいもんなv」
そう呟くと、罵声が浴びせられるのを覚悟で、遊戯は自分もシャワールームへと飛び込んでいた。






Fin.

昔、小学校の図書室に、「午前二時に誰かが来る」っていう本が
あったような気がするんだけど…どなたか知りません?
タイトルだけで話しの内容とかは覚えてないんですけどね。

2004.01.20.

Atelier Black-White