紫05:○△□(バクラ×瀬人)


ぐったりと崩れるようにベッドにうつ伏せになって、海馬はようやく己から離れたバクラを忌々しく見上げた。
「貴様…散々、好き勝手をしおって」
零れる言葉は先ほどとはうって変わっての冷たい台詞。だがどこか掠れているのは、気のせいばかりではないはず。
「ああ? ンだよ、社長だって悦ンでたじゃねェか」
「黙れ、下司」
口調はいつもの毒舌であっても、見上げる蒼い瞳にはつい今しがたの情欲に濡れたままだから、逆に壮絶な色っぽさで。
勿論それが、海馬なりの照れ隠しである事は判っているし。
そもそも本当にいやならば ―― 今ごろバクラの頭には風穴が開けられている事だろう。
「大体、社長ってば体力なさすぎだぜ」
「貴様は無駄な体力ばかり持っているからな」
「無駄じゃねぇだろ? 社長のために日々精進してんだぜェ?」
「何の精進だっ!」
がばっと起き上がれば、流石にそういう行為は久々だった上に鬼畜なバクラのこと。
いくら気の強い海馬でも身体中の関節が悲鳴をあげ、すぐさま崩れるようにベッドに戻った。
「ほら、無理すんなって。ちょっと待ってな。今、何か飲み物持ってきてやるわ」
誰のせいだと怒鳴ってやりたいところでもあるが、そんな気力さえ既に皆無で。
大人しくしていれば割と甲斐甲斐しいバクラのこと。世話をさせてやるというのは、海馬としても満更でもないようだった。



バトルシティが終わってアルカトラス脱出とともに海馬がアメリカに渡ったのはつい1ヶ月ほど前の事。
勿論、独断専行、速攻即決な海馬の事だから、最愛の弟であるモクバ以外の人間にはアメリカへ行く事なんて伝えてはいなかった。
それは、秘書兼ボディガードの磯野にも同様で。(おかげで日本本社も大変だったらしい)
当然バクラにだって話の断片さえ伝えていないのは至極当然のこと。
尤も、バトルシップでマリクとの闇のゲームを繰り広げ、闇に封印されていたバクラと連絡を取れるはずもないのも事実だが ―― 。



「ほらよ。社長の好きなミネラルウォーターだぜ」
と差し出せば、一瞬、胡散臭げな表情をしつつ手にとる。
「本当にただの水だろうな?」
「ああ? なんだ。何か入れて欲しかったのか?」
「馬鹿者! 確認しただけだ!」
怒鳴れば身体のとんでもないところから痛みが響くというのに、それでも一々返してくるところが海馬らしい。
そのくせバクラからグラスを受け取って、そっと口をつけて飲み干せば、それはどこかkissを強請る仕草にも似ていて ――
(ったく、なんでこう、コイツはオレ様を煽るかね?)
どんなにその身体を貪って貶めても、決して穢れる事のない孤高の魂。
それは遥か昔、時の彼方においてきた記憶でもそう告げていて ―― だから、離せないし、離さない。



「社長、向こうで毛唐に襲われたりしなかったか? 仕事だからって俺サマ以外に足を開くなよ?」
「誰がそんなことをするかっ!」
誰をも自分と同じように考えるな!と怒鳴る海馬だが、言われたバクラにしてみれば、
(ンなこと言ったって、ペガサスといいキースといい、アンタを狙ってるやつなんかそれこそゴマンといるんだぜ?)
他の事ならばスーパーコンピューター並みの解析能力を誇るのに、色恋沙汰には ―― 特に自分に関する事には ―― 本当に疎い海馬である。
尤も、そのおかげでコチラでは数倍の経験値(←何の経験値だっ!)を盾にあんなこともこんなこともし放題…とまではいかないが。
「しょーがねぇな。折角の帰国だから、○○○とか△△△とか□□□とか。とにかく片っ端から試してみるか?」
「なんなんだ! その伏字わっ!」
「知りたかったら教えてやるよ。実地でな♪」
「 ―― !?」



そして ――
翌日からの会議が目白押しにキャンセルになったのは言うまでもない。






Fin.

最近、びみょーに鬼畜好きィ〜の浅葱には、やはりバクちゃんにがんばってもらうしかないかな?と。
本番は外しましたが、一応、コレでもピロートークです。
おかしいな、浅葱の本命は闇海のはずだったのに…。
でもお互いアブナイ性格同士のバク瀬人って、最近思いっきりツボに入ってます♪

…しかし、いいのかこんなんで。お題にあってるのかな?

2004.05.31.

Atelier Black-White