紫06:スペシャルサンクス(モクバ&瀬人)


「ええいっ、煩いわっ! 用が終わったのならさっさと帰れっ!」
童実野町中心部にあるKC本社の最上階。
その重厚なドアを叩こうとしたら、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。
「用は終わってないぜ、海馬。折角、相棒が持って行ってやるって言ってくれたるんだ。さっさと終わらせちまいな」
「それが余計な世話だと言うのだ。プリントくらい、自分で持って行くわっ!」
「そんなこと言って、前回も間に合わなかったんだろ? 何せ社長サマは学校に来れないほど忙しいらしいからな」
「貴様…誰のせいだと思っているっ!」
キングダムから帰ってきて、毎週と言ってもいいほどの日課になっている怒鳴り愛。
まぁこの最上階にくるには何重ものセキュリティをクリアしてこなければいけないし、ビジネスの来客なら秘書課から正式に連絡も入るからいいとして、
(でも、クールビューティな青年実業家のイメージが崩れちゃうよ、兄サマ?)
と嘆かわしく思うのは弟として当然のこと。
尤も、これだけよくもまあポンポンと言い争いができるボキャブリの豊富さは、流石兄サマ♪というところでもあるのだが。



DEATH-Tで遊戯に敗れた兄サマは、半年ほど精神だけココではないどこかに行ってしまって ――
その間にKCの株価は暴落、挙句にペガサスなんてアヤシイ外人に乗っ取られそうになり、今はその修復で大忙しだ。
お陰で学校にも殆ど行くことができず、折衷案として1週間分の授業のプリントを課題として提出することで何とか単位を確保している。
尤も、既にビジネスカレッジを出ている兄サマに、いまさら日本の高校卒業資格なんて必要ないと思うんだけど ―― それは、それ。
若干16歳でビジネス業界に入ってしまった兄サマに、少しは年相応の生活もして欲しいと思うのは事実なのだが ―― ワーカーホリックな兄サマだから、当然優先されるのは学業よりビジネスで。
でも、こうやって遊戯が来てくれると ―― どこか楽しそうに見えるのは気のせいばかりではないと思う。
まるで会社のためのロボットみたいだった兄サマが、笑ったり怒ったりと感情を見せてくれるから。
だから ――
闇から救い出してくれた遊戯には感謝している ―― 心から。
兄サマを、「人間」に戻してくれたから。
兄サマを ―― オレの元に返してくれたから。
でも ――



「…だからって、兄サマはぜーったいに渡さないぜィ!」
やっと帰ってきた兄サマを、そう簡単には渡さないぜ!と決意も新に、モクバはニッコリと微笑んでドアを開けた。
「ただいま! 兄サマ♪」






Fin.

開けた瞬間に ―― 慌てて遊戯から逃げる兄サマなんかが
見れたりすると…浅葱的にはヒジョーに萌えです♪
モクバと表遊戯と宿主サマ。
最強(恐)トリオ結成も近いかも?

2004.06.07.

Atelier Black-White