紫07:宿題(城之内×海馬)


突然KCの社長室にやってきて、ぼーっとこの部屋の主を見つめていたら、
「言いたいことがあるならはっきり言え、城之内」
そう言われて ―― 気が付いたら唇を重ねていた。



「どういうつもりだ?」
身長は海馬の方が高くても、流石に椅子に座っていれば押さえ込むことは簡単だ。
大体デュエルディスクより重いものは持ったことなんてありませんって言われたら、そうですかって信じたくなるほどの細い腕に ―― 身体だ。
とはいえ、これが結構凶悪なことは十分承知していたはずで ――
キラリーンと目の前に突きつけられたのは ―― 細身ではあるがとってもよく切れそうな両刃の短刀。
「うわっ、危ねぇだろうが!」
「心配するな、痛みを感じる前に殺してやる」
「それは遠慮シマス」
慌てて飛びのけば、それ以上は海馬も短刀で襲ってはこなかった。
絶対、投げつけられると思ったんだけどな。
もしかして ―― 脈アリ ―― なワケはないか。
「…で、今の行動はどういうつもりだ?」
「え? ああ、だって、逃げなきゃおまえに殺されるんだろ?」
「ボケ犬っ! その前のことだ!」
そう言った海馬の顔はホントに綺麗で。
ああ、コイツってば普段の取り済ました顔もいいけど、怒ったときの顔もサイコーだ。白い頬がうっすらと紅潮して、蒼い瞳が気高く輝いて。
(最初は人形みたいって思ったけど ―― やっぱ、生きてるコイツがサイコーだな)
高邁不敵、唯我独尊、独立独歩 ―― どんな言葉で飾ってみても、決して飾りきることのできないセレストブルー。



「その前 ―― ああ、キスしたことか?」
「あ、当たり前だ。この俺に不埒な真似をしおって…」
不埒ときたか。
ま、モクバと仕事と青眼で一杯一杯の海馬のことだ。俺がどんな眼でみていたかなんて気が付いているわけないよな。
でも ―― 手ェ出しちまった以上は、誤魔化しもきかねぇよな。お前にも ―― 俺にも。
だから、
「悪ィな。つい綺麗だったから」
「 ―― なんだと?」
「いや、お前ってば、口は悪いし、態度デカイし、我侭だけど、マジに綺麗だからよ。つい見とれてたらふらふら〜と」
「 ―― ///」
あれ? 反論ねぇの? 反論しねぇと…止まんないぜ?
「取り澄ました顔も好きだけど、怒った顔もキレイだし。で、ビックリした顔はどーかなーと思って」
というと、
「それで俺を口説いているつもりか?」
綺麗な顔に浮かぶ挑戦的な笑み。
挑発されているのは ―― 俺だって判るわ。
だから、
「ああ、そうだよ、好きなんだからしょーがねーだろっ!」
そう開き直って言うと、一瞬、蒼い瞳が驚いたように揺らめいた。
っていうか、海馬、心なしか赤くなって ―― 照れてる? 嘘、マジかよっ!
だが、そんな動揺も俺と視線が合ったらすぐに消えて ―― チッ、可愛かったのにな。
そして向けられたのは、前にも一層に増した蒼い瞳。



「 ―― 却下だな」
「はい?」
「そんな陳腐な台詞で俺を口説き落とせると思うな」
って…いや、落せるなんて思ってませんけど?
なんたってコイツは海馬瀬人。普通の一般ピープルとは違うから。
でも、
「まぁいい、命知らずにもやっと行動を起こした努力は認めてやろう。口説き文句については次回への宿題にしておいてやる」
次回? 次回って ―― ええ?
「どうした? 俺が好きなのだろう、城之内。貴様もデュエリストの端くれなら見事口説き落としてみろ」
おいおい、マジかよ?
っていうか、デュエリストとどーカンケーがあるんだ?
…でも、まぁ、いいか。
「おうっ! 任せて置け。取って置きの口説き文句を考えてやるぜ!」
「精々気合を入れることだな。言っておくが俺の採点は厳しいしぞ?」
そういう不遜な瞳が、心持ちいつもより柔らかだったような気がした。






Fin.

城海? それとも海城でしょうか?
どっちともとれそうな話だ。
基本的に浅葱は海馬受けですが、リバでもOKです、社長がいれば!
(↑基準はソコらしい)

2004.06.14.

Atelier Black-White