紫09:暗がり(青眼×3)


ずっと ―― 本当に気の長くなるような年月を、我らは待っていた。



身体と心は3体に分けられても、我たちは本来は1つの存在。
この世に降臨したとき、自分達を創ったもの ―― その「何か」が告げた言葉だけは覚えている。



―― お前達は、光を司る最強のしもべ。誇り高い竜族の長となるだろう。
  その力ゆえにお前達を欲するものは多いが…お前達は自分の目で主を見極めるが良い。



「…本当にこのままここに残る気なのか、イブリーズ?」
魂を分け合った兄弟の声はどこか悲痛で、だが、我は既に決めた決意を翻す気はなかった。
「我ら竜族はそう簡単に滅することはないが ―― それでも人間界にとどまれば霊力は削られてしまうぞ。ましてやコレほどまでに邪気が満ち始めた人間界だ。瘴気に長く晒されれば、我らとて…」
「人とは…死しても魂は再び蘇る。それまで我らとともに精霊界で待てばよいではないか?」
魂を分け合った兄弟 ―― アズラエルとジブリールは、そう口々に告げたが、最早我には迷いもなかった。
「もはや言うな。我が決めたことだ」
人間という生き物が、その生を全うしてもたかが100年足らずで滅んでしまう脆弱な存在であることはわかっていても。
我たちが選んだのは ―― 後にも先にもただ一人の主。
実際に仕えることができたのは、竜族の永遠ともいえる寿命からしてみれば、ほんの僅か ―― 瞬きをするほどの刹那の時間でしかなくても。
あの主とともにあった時間は、決して幻ではなかったから。
人とは思えぬほどの孤高の魂に、己を信じて揺るがない絶対の自信。
そして何よりも、我たちにだけ向ける信頼の情は間違いなくて ―― 。
だから今更、精霊界の王が支配する世界になど、我には向うことなどはできぬから。
「例えこの先、人間界が暗黒に支配されても我には構わぬ。我を屈することができるのは、我が主のみ。主以外のものに屈するくらいなら、我は滅亡を選ぶ」
それは我ら3体の滅びとも同義で ―― 。
しかし、
「そうか…そこまでイブリーズが言うのであれば仕方がない。我もこの地に残ろう」
「アズラエル?」
「そうだな。我も…主のいない世界で、更に我ら3体が離れてなどは過ごせぬな」
「ジブリール…」



例え全てを覆う闇の暗がりに身を置いても、唯一の主の魂は必ず我らの呼びかけに応えてくれるはずだから。
必ずめぐり合うはずの奇跡を信じて ―― 今はただ、永久に近い眠りに着こう。
この暗がりを ―― 主の魂が呼び覚ましてくれるまで ―― 。






Fin.

…初めて書いた、青眼only。
神官セト様がお亡くなりになった後のことですね。
ホントはクリスに見つけられるとこまで書くつもりでしたが、気がついたらこんな感じでした。

うちのイブ(青眼No.2)は、3体の中でも一番セトちゃん似です。
我侭でタカピーで有言実行、独立不羈…唯我独尊。

しかし、お題にあっているのか? ビミョーなトコです。(苦笑)

2004.07.11.

Atelier Black-White