赤01:ゆびきり(ファラオ×セト)


「結婚しようゼ! セト」
そのは、王宮では王と王妃の結婚10年の祝賀が行なわれている、いわば国の祝日とも言えるめでたい日。
流石に煩い王子も両親の祝賀に参加しないわけには行かないはずだから、いつものように邪魔されることなくゆっくりできる ―― と、そう、そう思っていたのに ―― 突然の台詞に、セトの身体が硬直した。
「な、何を突然…」
見れば、一応祝賀には出ていたらしい、いつもよりはまともな格好の王子が、ニコニコと満面の笑顔でセトを見下ろしていた。
「突然じゃないゼ。前から「好きだ」って言ってるだろ?」
聞いてなかったのか? と顔を覗き込むように見られると、流石に火照るような熱を感じる。
「もう、逢ったときからず〜っと「好きだ」って言ってたじゃないか。お前、モーロクするには早すぎるぞ」
「モーロクなんぞしとらんわ! 大体、そんなふざけた事をまともに聞いてもらえるとでも思っていたのか!」
「…ひどいな。オレのことが信じられないのか?」
「信じろという方が無理だな」
あっさりといいのけてやると、流石にショックだったらしい。王子は落ち込んだようにがっくりと頭を垂れ、セトの背中合わせに座り込んだ。
「…ったく、なんで信じないんだよ。こ〜んなに誠意を尽くしてるのに」
「フン、悪ふざけにも程があるわ。そもそもなぜオレが貴様と結婚なんだ? そんなもの、できるわけがなかろう」
結婚は男と女がするもの ―― そう言う意味で言ったのに、
「何でできないんだ? だって、母上は『王子も大人になったら大好きなヒトと結婚しなさいね』っていったんだぞ。好きなヒトと一緒になるのが結婚だろう!」
「…貴様、それを本気で言っているのか?」
王宮など、色事に関しては入り乱れているのが世の常のはず。それを、ヘンなところで世間ずれしているこの王子は…説明するのも面倒になってくる。
そもそも、そういうことは親がしっかり教えておけ!とも思うのだが、流石に現人神であるファラオ夫婦に向かってはそんなことはいえるわけもない。
但し、その子供であるこの王子になら ―― 問答無用であるが。
「ところで、大人っていつになったらなれるんだ? あ〜別に子供でも結婚しても構わないと思うんだけどな」
そう思うだろ?と同意を求められたので、思いっきり否定してやると ―― しかし、王子はセトの話しなど聞いてはいないようである。
「あ、じゃあ、まずは『婚約』だな。セト、手を出せよ」
と言うなり、がっしりと腕を捕まられて、小指と小指を絡められた。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ます! 指切った!」
「…なんだそれは?」
またどこかで怪しい呪文でも覚えてきたのかと、一瞬嫌な予感がする。
だが、当の王子はケロッとしたもので、
「よくは知らないが…約束をするときはこうするらしい。破ったら、バツとして針を千本の飲まなきゃいけないらしいゼ」
「冗談ではない! そんなもの、守れるか!」
「でも、もうしちゃったゼ」
「 ―― !」
「細かいことは気にするな、セト。幸せになろうゼ♪」






Fin.

一応…初のファラセト。8歳くらいのつもりです。
このときの「バツ」が後々あとを引いて…というコトかな?
ちなみに王子(ファラオ)の両親は、負けず劣らずの年中ラブラブ夫婦ということで。

2003.12.09.

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