赤03:世界を変える方法(瀬人)


流石にチェスの王者というだけあって、そのゲーム運びはそつがなかった。
だが ―― ここで負けるわけにはいかない。



「チェスでオレがあんたに勝ったら、オレと弟をあんたの養子にしてもらいたいのさ!」



モクバのためだけじゃない。自分のためでもある。
もう、誰にも頼らない。
待っているだけでは世界は変らない。
それは、この施設ですごした2年間で学んだこと。
自分の運命は自分で手に入れるんだ
そのためなら ―― どんな手でも使ってやる。
例えそれがイカサマであろうと。



「ほう…面白い。良かろう、その条件飲んでやろう」
まずは、オレのことをたかが10歳の子供と甘く見ているこの男に、その第一歩とでも言うべく踏み台になってもらおう。
そして、この男の財力を利用して、オレはオレの夢を叶えてみせる。



攻略は既にできている。この男のゲームは可能な限り検証しつくした。
勿論この傲慢な男が、たかが10歳の子供に負けるという屈辱に耐えられるとは思えない。
イカサマがばれれば、どんな眼にあうかも承知の上だ。
それでも、賽は投げられた。



これから起きるどんな屈辱も、苦痛も ―― 悲しみも。
全ては自分が選んだこと。
世界を変えるということはそういうことだ。
全ての憎しみを生きる糧に変えて、オレは前だけを進んでやる。



他人に押し付けられたレールなどぶち壊してやる。
運命なんて信じない。
オレが信じるのはオレの生き方だけだ。



オレは ―― オレのロードを進むんだ。
世界を変えるために。
…世界を変えたために。






Fin.

…10歳で人生を悟ってしまった、社長。
ま、それもありかと。

2003.12.31.

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