赤05:リセット(W遊戯)


『相棒、そこ違うと思うぜ。その前にアレを取りに行かないと…』
「え? あ…ホントだ。やっばいなぁ〜これじゃあSクリはダメじゃん」
明日は休みというウィークエンドの真夜中、遊戯ともう一人の遊戯は獏良から借りたゲームに夢中になっていた。
ちょっと前にブレイクしたTVゲーム。勿論、獏良が持っていたと言うだけあってスプラッタにゾンビが大量出演のサバイバルRPGである。
時間内にノーセーブでゲームを終了させると、Sランククリアとなって特別アイテムがGetできるということだったが、流石に1度や2度のチャレンジでは難しい。
既に時間も一杯一杯で、もう一人の遊戯に指摘されたアイテムを回収しに戻れば ―― 確実にタイムオーバーである。
「あ〜あ、今度はなんとかなるかなぁ〜って思ったのに…」
『でも、取りに行かないとクリアもできないぜ』
「だよね〜。ま、仕方がないか」
ふぅっと大きくため息をついて、遊戯はプレイヤーをUターンさせた。
『戻るのか?』
「うん、仕方がないよ。Sクリ狙いは次にする」
『リセットしないのか?』
時刻は既に午前1時半。ゲームは中盤に差し掛かったところで、このまま続ければあと1時間ほどでクリアはできるが、Sランク狙いでそのあともう一度となると確実に4時にはなるだろう。逆に今からリセットしてやり直せば、3時前にはSクリOKのはず。
Sクリできないのを承知で続けるとすると、楽しみが半減するという気もしないでもない。
しかし、
「う〜ん…リセットってあんまり好きじゃないんだ。折角ここまでやったしね」
『…そうか』
ふと苦笑じみた呟きを感じて、遊戯はもう一人の自分を見やった。
「どうしたの? リセットしたい?」
『いや、そういうわけじゃないが…』
「いいんだよ、Sランクでなくても。それだけがゲームの楽しみ方でもないからね」
そんなことを言ってゲームを再開する遊戯に、もう一人の遊戯は一瞬意表を付かれたような思いを感じ、ふわりと微笑んだ。
『そう…だな』



リセットしてゼロに戻すのは簡単だけど、それでは何の解決にもならないから。
例え回り道しても、その過程を楽しむ方がずっと面白い。
その分きっと ―― もっともっといろんなことを経験できると思うから。






Fin.

…私はリセットします。多分。(←オイオイ…)
っていうか、ゲーム、片付けないとな。
ちなみにこの話のイメージゲームは「BIOHAZARD」です。

2004.01.22.

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