赤08:オープンカー(W遊戯?)


「ところでさぁ、KCグランプリに優勝したら、優勝パレードとかするわけ?」
何とか第1戦を勝ち残った城之内は、次のデュエル ―― とりあえずこれから始まるというレベッカ対ヴィヴィアン戦を見に行く途中で、モクバに尋ねていた。
「優勝パレード? いや、特には聞いてないぜぃ。優勝者にはユウギへの挑戦権ってコトしか…」
「え〜っ、折角なんだからよぉ、パレードしようぜ! ついでに優勝旗とか作ってさ、オープンカーに乗って街を練り歩くの!」
勿論そういう城之内の脳裏には、オープンカーに乗ってみんなに祝福されている自分の姿が思い浮かんでいるのは間違いない。
「…野球や相撲の優勝パレードじゃないんだから…」
そう呟くのは、このメンバーの中では数少ない常識を持つ杏子である。
「でもよぉ、確かにキングダムでも賞金はゲットしたけど、優勝の披露式なんかやらなかったし、アルカトラズでの決闘王のときなんか、海馬の閉会宣言だけじゃんか」
あげくに島ひとつ潰してるしと言われると、流石にモクバも笑うしかない。
そもそも、最強のデュエリストと評される遊戯や、カードの貴公子と呼ばれる海馬などは既に知名度はアイドル並であるから、今更そんな売名行為は必要ないし、第一、楽しいのはデュエル自体であって結果はある意味二の次である。勿論、勝利に越したことはないが。



『優勝パレードか…』
ふと首からかけた千年パズルがキラリと光って、心の中にもう一人のユウギが現れた。
「もう一人の僕?」
しばらくデュエルはお預け状態の別人格の方は、ここのところすっかり暇をもてあましてよからぬコトを企んでいる。
実は、どうせデュエルができないなら、先日レセプションが行われたHOTEL KAIBAのスイートで挑戦者を待ち受けていたいと駄々をこねたのだが、城之内やレベッカが出るからと表人格に却下されたというのも事実。
(ちなみに、スィートには接待係として海馬をご指名するつもりだったということも、バレバレである)
だから ―― 何か楽しそうにされれば、必然のように嫌な予感がするわけで、
「何を考えてるの? また…悪いことでしょう?」
『そりゃあないぜ、相棒。オレがいつ、そんなことを企んだ?』
思いっきり図星を差されながらユウギが聞き返せば、返ってくる答えは速攻である。
「いつもじゃない」
『うっ…酷いな、相棒』
と言葉を詰まらせながら、それでも誘惑には適わない。
『オレはただ…優勝パレードの時には隣に海馬がいてくれれば、俺たちのラブラブ振りを世間に公表できていいなって思っただけだぜ♪』
「…海馬君が一緒に乗るわけないでしょ?」
『う〜ん、そうだよな。結構アレで恥かしがり屋さんだからな、海馬は♪』
「…」
例えば〜と妄想の世界に旅立ってしまっては、もはや遊戯に反論する気は皆無である。



『あ、優勝賞品が海馬っていうのもいいな♪ よ〜し、なんか燃えてきたぜ!』
「燃えてきたって無駄だよ。キミの出番は暫くないからねっ!」
と一応言ってはみても、全ては無駄であるなんてことは良く判っている。
(大体、海馬君も海馬君だよね。幾らKC建て直しのためって言っても、もう一人の僕を出せばあとで大変だって、いつものことなのに…)






Fin.

オープンカーと聞いて、相撲の優勝パレードしか思いつかないっていうのも…。
あとは車種…スーパーセブンとかロードスターとか?
でも社長には合わないよね。
ベンツとかリンカーンとかじゃないと…?

2004.01.31.

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