赤09:ゴミ箱(闇バクラ×瀬人)


「社っ長〜 愛してるぜぇ〜!」
童実野町にあるKC本社の最上階。本来なら部外者は一歩足を踏み入れただけでエマージェンシーがかかるはずのセキュリティも難なくクリアして、バクラ(勿論、亡霊の方)はドアを開けるなり口説きにかかっていた。
と同時に、口説かれた海馬の方は銃口をピッタリと不法侵入者の額に向けたまま、視線はもう片方の手にあるカードに向けられている。
「俺は忙しい。狂犬は帰れ」
「あいっかわらずつれないねぇ〜。…って、何だ、デッキの構築中?」
「いや、買い漁ったカードが溜まったんで整理中だ」
見れば ―― マホガニーの机の足元には段ボール箱に無造作に放り込まれたカードの山である。
何せ、「カードの貴公子」と異名をとる海馬である。持っているカードはそれこそ∞。
現存するのは3枚しかない『青眼の白龍』は当然のこととして、レアなカードもかなりの確率で入手している。
ないものといえば ―― 『神のカード』くらいなものか?
尤も、そんなのカードをもっていても、自分のデッキに入れられるカードには限りがあるし、そもそも幾らレアでも使い物にならないカードもわんさかといるわけである。
だから、使い物になるカードは愛用のジェラルミンケースに、使わないカードは別の箱へと居場所を移されているようだ。
「ん? こっちの箱は何でぃ?」
海馬ほどのカードコレクターではないが、それなりにデュエルをしているバクラとしても、その山のようにあるカードには結構興味がある。
だから覗き込んで見ていたわけだが、愛用のジェラルミンケースと使わないカード入れの箱とは別に、鍵付でおかれた箱の中身を見て、怪訝に尋ねた。
その箱にはかなりレアであるはずのカード ―― しかも、思いっきり見覚えのあるものばかりが放り込まれていたわけで ――
「…ゴミ箱だ」
「ふ〜ん…って、はい?」
「だから『ゴミ箱』と言っているだろう?」
思いっきり嫌そうな顔でいう海馬に、バクラは苦笑しかできなかった。
その『ゴミ箱』といわれた箱に入っているカードといえば…
「ブラマジに…クリボーは当然か。ヒャーハッハッ、レッドアイズまで入ってるぜ」
「当然だ。あんな凡骨の持つカードなど、俺には必要ない」
他には遊戯の持つ<ブラックマジシャンガール>に<カース・オブ・ドラゴン>、それから城之内の<時の魔術師>や<スケープゴート>、さらにはペガサスの<トゥーン・ワールド>や<ドラゴン族封印の壺>とかイシズの<墓穴の道連れ>等など…。
思いっきり用途よりも好き嫌いで入っているのが見え見えである。
更に ――
「あ、酷ぇ! 俺の<ダーク・ネクロフィア>まで入ってるじゃねぇか!」
「ふん、当たり前だ。そんなカード使い物になるか」
「酷いぜ、社長〜。<ウィジャ盤>まで入れてんな…」



煩く喚くバクラを無視して、カードを箱に詰めると鍵をかけて封印して。
「本当に捨てられなかっただけありがたいと思え!」
と社長が言ったかどうかは定かではない?






Fin.

…確かに社長のデッキでは使い物にならないだろうし。
特にクリボーなんて速攻でポイだろう。
因みにうちの娘はアルティメットもブラマジもデッキに入れてますが…。

2004.02.01.

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