赤11:一酸化炭素(城之内×海馬)


珍しくモクバが差し入れにと、城之内にケーキの箱を持たせてきた。
「兄サマ、最近ちょっと疲れてるみたいだから…甘いものがいいだろ?」
「おう! サンキューな」
「べ、別にお前に食えって言ってるわけじゃないぜぃ! あくまでも、兄サマに!だからなっ」
「判ってるって」
とは言ったもののちょっと心配になって…そっと箱を開けてみたら、ちゃんと2つ入っていたので安心した。



「…で、何を貴様は見てるんだ?」
KCの社長室に来たはいいが、部屋に入るなり「仕事中だ」といわれた城之内は、珍しく一人で大人しくしていた。
目の前には、モクバから預かってきたケーキの箱。
勿論中身の方は既に数人いる秘書のお姉さんが用意してくれた皿へ移動している。
「ん? ああ、コレ」
いつもは仔犬の様に煩いヤツが静かだと逆に調子が狂うようで、気になった海馬が声をかけると、城之内は箱の中身を指差した。
「…ドライアイス…?」
「ん、何かお前みたいだな〜と思って」
冷たくて、でも指で触れると熱くて、火傷しそうで。
誰にも真似ができない孤高な恋人に良く似ている ―― と。



「そういやあ、この前テレビの推理小説で見たけど、ドライアイスって溶けたら二酸化炭素になるんだよな」
「それで?」
「一酸化炭素と二酸化炭素って、どー違うわけ?」
貴様は学校で何を習っているんだ!と怒鳴ってやりたいところだが、素直に聞かれるとそうはいえない海馬である。
だから思いっきり溜息をつきつつ、
「石油とか石炭とか、要は炭素を含む物質を燃やした時に、通常発生するのが二酸化炭素 ―― つまりCO2が発生する。だが、その時に酸素の量が十分でないと不完全燃焼になり、一酸化炭素、COが発生するのだ。まぁどちらも人体にはあまりよくない。どちらも無味無臭だから気付かず中毒になることが多く、気が付いた時には運動神経が麻痺して動けない、俗に言う酸欠だな」
律儀に説明してくれるところは相変わらずの手抜きを知らず、ちゃんと化学式やらなにやらと丁寧に教えてくれて、何となく判った気になるからやっぱり凄いと思う。
尤も、ココまで丁寧に教えてもらいながら「判りません」何ていったら ―― 脳天に風穴でも開けられかねないが。



「へぇ〜やっぱ、お前みたいだなv」
気が付いたときには麻痺して動けない ―― なんて。
囚われて目が離せない、孤高の恋人にそっくりだ。
そういう意味で言ったのに、
「フン、言っておくが、一酸化炭素も二酸化炭素も、濃度によっては死ぬぞ。特に一酸化炭素は瞬時で昏睡状態だ」



―― 尚更、似てるじゃん。
うかうかしてたら殺されかねない、キケンな恋人に。






Fin.

途中まで書いて…あ、ドライアイスは二酸化炭素、お題じゃないじゃんと思いつつ、残してしまいました。
冷たくて熱いって言うのを残したかったので。
ま、そこはご愛嬌(?)ということで?

2004.02.09.

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