赤14:エレベーター(モクバ&瀬人)


―― ガタンッ!
突然の大きな音と共に、一切の照明が消えてエレベーターが停止した。
「な、何だ?」
慌てる俺とは裏腹に、落ち着き払った兄サマは、すぐに襟元に仕込まれている通信機で管理室に連絡を取る。
「何事だ、磯野?」
『申し訳ありません、瀬人様。落雷による停電です。ただいま自家発電の方に切り換える作業を…』
「…わかった。すぐに復旧させろ」
そういうと、兄サマは壁にもたれて眼を閉じた。



閉じ込められたエレベーターに乗っていたのは、オレと兄サマだけ。でも…ヘンだな。辺りは真っ暗なはずなのに。何故か兄サマの姿だけは手に取るように判る。
「…どうした? モクバ」
「え?」
「不安か? ならばこっちへこい」
そっと手を差し伸べられて ―― なんでオレが不安なのがわかるんだろう?
「自家発電システムでは、全ての機能をカバーできない。どうしても機密関係のバックアップ体制が優先されるから、こっちへ電力がまわされるには多少時間がかかるのはやむを得まい」
「うん」
「電力が通じていなければ、エレベーターなど単なる箱だ。流石にこの俺でもどうしようもない。すまないな、モクバ」
別に兄サマが悪いわけじゃないのに ―― それに、
「大丈夫だよ。一人じゃないし…兄サマと一緒だから、恐くなんかないぜぃっ!」
それに今頃は、磯野が真っ青な顔で復旧に取り掛かっているはずだ。



尤も、こうして兄サマと二人きりなら、別に急ぐ必要もないしね。






Fin.

うわっ、短い! ホントにSSです。
ちょっと趣向を変えて停電…エレベーターで二人きりv なんて萌えな設定…。
これが王サマやバクラとだと、復旧しても出るに出られなくなるのは確実かと…

2004.02.15.

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