黄04:未成年(ペガサス×海馬)


初めてペガサスが海馬瀬人と逢ったのは、彼がKCの社長となってすぐのことだった。
先代社長の海馬剛三郎とも面識はあったが、それはあくまでも一企業家としてのこと。
当時はあくまでも軍需産業をメインとしていた剛三郎とは話しの共通点などあるはずもなく、企業家どうしのパーティで顔をあわせたときに挨拶をした程度だった。
だから、その後を若干16歳の少年が継いだと聞いても特に何も思わなかった。
そしてKCが、軍需産業から手を引いてアミューズメントに進出したと聞いても ―― 所詮子供のお遊びだろうとしか思わなかったのも事実。
それが一変したのは ―― KCがソリッドビジョンの開発に成功し、しかもその開発を手がけたのが、新しく社長の座に着いた16歳の少年だと聞いたとき。
そして ―― とあるパーティでその姿を見たときだった。



「Oh! ユーがカイバボーイですカ? はじめまして、ペガサス・J・クロフォード、デース」
ソリッドビジョンの話を聞いて以来、なんとか海馬瀬人との接触を考えていたペガサスは、それがこうもあっさりと成功するとは以外だった。
ペガサスはアメリカ、海馬は日本をホームとしているから、まさかヨーロッパで会える機会があるとは思わなかったのである。
「ペガサス? ああ、I2社の…」
そう小さく日本語で呟くと、海馬はゾクリとするほどの笑みを向けて手を差し伸べた。
「はじめまして、KCの海馬瀬人です。貴方の描かれたM&Wは日本でも好評ですよ」
そう声に出された会話は見事なクィーンズ・イングリッシュ。
しかも生粋の英国人でも真似のできないような正確さであった。当然、その場にいた誰もが、一瞬息を呑むほどに。
欧米人から見れば、東の果てにあるちっぽけな島国の住人など、相手にもならないと見下すものであるが、わずか16歳でありながら、海馬はそんな偏見の眼など全く介することなく平然とやり過ごしていた。
もともと外見からして日本人離れしていたのも事実。手も足も長く、スレンダーな肢体に蒼い瞳。
アジア系には到底思えない白い肌ときては ―― 欧州のどこぞの王家の血でも入っているのではと思わせるほどの高貴さであったから。
まだ大人として完成されたものではないが、子供のように未熟とも言い切れない。
大人と子供の境界線にいる、『未成年』という美しい生き物 ―― 。
「今度、ゆっくりお話ができるといいデスネ。Oh、その時を楽しみにしてマース」
別の来賓に挨拶を求められて、別れしなにペガサスがそう告げると、海馬は一瞬ゾクリとするほどの笑みを浮かべて囁いた。
「ええ、そうですね。今度ゆっくりお話しましょう。是非、楽しみにしていますよ」
どこか淫蕩な、それでいて決して眼を離すことはできない妖しさ。



その後姿を見送ったペガサスは、そのパーティの後、自らの腹心にこう告げていた。
「クロケッツ、私はあのボーイが欲しくなりました。何とか手にいれる算段を考えなサーイ」






Fin.

王国のちょっと前という設定で、ついでにこの頃の社長は何でもアリと…。
やばいな〜また話が長くなりそうだわ。

2004.01.19.

Silverry moon light