黄05:夜逃げ(城之内×海馬)


「うるせぇーっ! ないもんはないんだ、しょーがねーだろっ!」
威勢のいい声といえば聞こえが良いが、単なる開き直り ―― もしくは、やけっぱちとも取れるその声に、海馬はふと立ち止まった。
見れば、今から向おうととしていた古いアパートの一室には、既に先客がいて。
実質上の部屋の主 ―― 流石に名義は父親らしいが、その家賃の殆どを負担しているのは未だ高校生の息子の方 ―― が、どう見たって仲のよいオトモダチとは思えない、強面の男数人と言い合いを繰り広げている。
どう見ても、典型的なヤクザという感じ。
しかも、幹部クラスとかでは到底思えないチンピラ風の柄の悪さ。
一応、スーツを着てはいるが、はっきり言って似合っていない。(口には出さないが)
仕立ては悪くなようなのだが、着ている人間に問題があるのは一目瞭然である。
そして、
「邪魔だ、どけ」
男達の背後から地を這うような不機嫌そのものの声でそう言い放つと、海馬はさも当然というように城之内の部屋の中へと入っていった。



―― バキッ! ボガッ! ドスン!!
見事な三重奏の後に「覚えてろよぉ〜」という情けない声が続き、いつしか外は静まり返っていた。
「〜ったく、来るなら来るって、前もって連絡して欲しいですぜ、社長サン」
炬燵に海馬 ―― はっきり言って似合わないのだが、そこはそこ。
城之内は海馬の正面にもぐりこむと、ニカッと笑ってそう呟いた。
すると、
「ほう、どうやって? 電話も携帯も停められているヤツに?」
「え? うそ、マジ? そういやあ最近静かだと思ったぜ」
そんなことを言ってあははと乾いた笑い声を立てられると、流石に海馬もキレる寸前になる。
勿論海馬の財力を持ってすれば、城之内が背負っている借金など、その場でキャッシュで払えるのは当然のこと。
実際何度かそれとなく肩代わりを提案したこともあった。
しかし、
「そっか、ゴメン。心配かけた?」
「…そんなわけあるか。暇だから来てやっただけだ…///」
返す言葉は素直じゃないが、その表情は言葉以上に盛り上がっているのはおきまりのことで。
「いずれ、夜逃げでもするつもりか? 不甲斐ない家族がいるというのは、結構大変らしいな。」
そんな風に言ってやると、
「夜逃げなんかしないさ。大事な宝物をおいて、雲隠れなんかできないからな!」
稀に見る真剣な表情に一瞬ドキリとし、しかし何事もなかったかのように冷たく取り澄ます。



「…当たり前だ。俺から逃げようなどとしてみろ。地の果てまでも追いかけて、こき使ってやる」
そんなことを呟く海馬に、城之内は
「どーせなら、お前と逃避行〜何ていうのも良いよな♪」
「…ばか者。///」






Fin.

ありゃ? い、一応、単語は出てきたからお題でいいですか?
なんかなぁ〜。ま、いいか。
うちの城海は、一応、闇サマが消えた後がメインのつもりなんですが、どーもノリが今ひとつ。
あ、どっちか判らないような書き方になったけど、一応、城海スト−リーのつもりですからねっ!

2004.03.15.

Silverry moon light