黄13:グレープフルーツ(城之内×海馬+モクバ?)


バイト先で貰ってきたと言って、城之内がグレープフルーツを抱えてやってきた。



「どーよ、でかいだろ〜」
「ホントだ。でも、こんなにたくさん、ど−するんだよ?」
抱え込んだ紙袋からゴロゴロと転がるグレープフルーツは合計10個。
応接セットのテーブルの上を転がって落ちるのを、モクバと2人で追いかけている。
「どーするって、食うに決まってんじゃん」
「これ全部かよ?」
「おうよ! …で、これってどうやって食うんだ?」
生活費には少々不自由している城之内のこと。貴重な食料をわざわざ持ってくるとは珍しいと思っていたら、そういう理由があったらしい。
「う〜ん、一番オーソドックスなのは半分に切ってスプーンで実を食べる、だぜぃ」
「皮は食えねぇの?」
「そうだなぁ〜。マーマレードやジャムにはできそうな気がするけど…」
未だ仕事中の部屋の主をほったらかして、2人で盛り上がっている様は少々煩いが ―― そこは弟に対してはとことん甘い海馬だから文句も言わない。
しかし、
(…皮まで食うつもりか、あの駄犬は…)
それが冗談でないことは眼に見えているので、既に呆れるのも通り越している。
しかもあれ程の数である。これで10日分の食事は確保!とか言いかねない。
「とにかく、厨房にいってウチのシェフに聞いてみるか? 色々作ってくれると思うぜぃ」
そんなことではしゃぎながら、城之内とモクバは部屋を出て行った。



暫くして ――
―― トントン
規則正しいノックと共に、海馬邸では古参のメイド頭である滝山が姿を現した。
「瀬人様、お飲み物をお持ちしました」
「…そうか」
ふと見ると ―― カップの中は透明に近いホットドリンク。
「これは?」
「城之内様がお持ちになったグレープフルーツで作ったホットジュースです。疲労回復の効果があるそうですわ」
それだけいうと滝山は会釈をして部屋を出て行く。
一人残った海馬は、暫く胡散臭気にそのカップを眺めていたが、やがて手に取ると、
「…凡骨のクセに…まぁ悪くないな」
口の中に広がった甘酸っぱい香りは、どこか日向の匂いがするようだった。






Fin.

グレープフルーツ…唯一浅葱が一人で食べれる柑橘類です。
だって、他のは皮剥かなきゃ食べれないでしょ?
手が汚れるの、嫌いなんだもん。
(↑と同じ理由でカニも一人では食べられません・笑)
社長も、手が汚れたりするの嫌いそうですよね〜

2004.04.27.

Silverry moon light