黄15:大嫌い(モクバ&瀬人(+遊戯))


「無理するなよな、全く…」
口調はあくまでも軽いが、その紅い目は真剣で。遊戯は軽々と兄サマを抱き上げた。
「な、何をするっ!」
「何って…歩けないんだろ?」
「誰がそんなことを言った! 降ろせっ!」
「あ〜もう、煩い。具合の悪いときくらい大人しくしてろ! さもないと…」
「 ―― !」
なにやら囁かれて、兄サマの白皙が薄いピンクに染まっていく。
と同時に兄サマの抵抗はピタリと止まって ――
「…大人しくしていればいいんだな?」
「ああ、大人しくしていれば、な」
意味深な会話のウラは何となくわかるけど ―― 判るだけに腹が立つ。
こういうことには全く鈍感な兄サマはともかく、遊戯の方はオレがここにいて聞いてるのが判ってやっているという、確信犯に違いないから性質が悪い。
挙句に、
「ん? どうした、モクバ?」
そんなオレに気がついたのか、遊戯はニヤリと不敵な笑みを浮かべてこちらを見た。
腕の中には兄サマがいて、口惜しさと ―― どこか照れたような気がするのはまぁいいとして。
コイツの勝ち誇ったような顔だけは大キライだ!
だ・か・ら、
「ク…何でもないぜぃ! それよりも遊戯、兄サマを落すなよ! お前の方が兄サマより小さいんだから!」
と、わざと気にしている(と思う)身長のことを言ってやるが、
「フン、生憎だったな、モクバ。ベッドに入れば身長は関係ないんだぜ?」
「 ―― ///!」
なんて事を恥かしげもなく言ってくる。
勿論、
「遊戯、貴様! モクバに何を言うっ!」
「え〜だって、ホントのことじゃ…うわっ、海馬、暴れるなって!」
「煩いっ! このセクハラ男がっ! 貴様など…」
「ちょ、ちょっと待てって、海馬!」
…ヤバイ、却って二人でじゃれてるみたいだ。



ワーカーホリックで、本当に倒れる寸前まで無理をしちゃう兄サマだから。
何とか休んで欲しいと思って遊戯を呼んだんだけど…でも、やっぱりコイツは大嫌いだ!



勿論判ってるさ。遊戯が兄サマにとってはオレとは違う意味で「特別」であることなんて。
でも…
(…オレは、絶対にお前のことを『義兄さん』なんて呼ばないからなっ!)






Fin.

…SSっていうよりも、VSS(very short story)になってます。
すみません、最近「結婚」話から頭が離れなくて…。
でももしもホントにそうなったら、モクバは絶対邪魔するでしょうね。
勿論それには青眼×3も加わって…?

2004.05.04.

Silverry moon light