02.ワハハハハ! (ヘンリー×クリス)


「出でよわが僕、青眼の白龍 ―― !」
石版も召還の陣も必要とせず、いきなり最強の僕を呼び出すと、クリスは壮絶な笑みを浮かべた。
「わーっ、ちょ、ちょっと待て、クリス!」
既に殺る気満々の青眼は、その長い尾でクリスを守るように擦り寄りつつ、ターゲット・ロックオン状態で大きな口をヘンリーに向けている。
「何だ? 辞世の句ならば聞いてやるぞ?」
「そんなわけないだろう! お前を残して死ねるかっ!」
「心配するな。俺にはこの青眼さえおれば他にはいらん」
「えーっ。だって青眼とじゃあ獣姦…」
「滅びのバーストストリーム!!!!」
躊躇いなく命令されるその声に、青眼は寧ろ嬉々として最強の攻撃を放ち、その場は光の渦に包まれた。



―― ドッカーン!
炸裂する光に一瞬遅れて、轟音とともに天守の一部が崩壊する。
そのありさまをみながら近衛指揮官であるジョーノは頭を抱えていた。
「あー、またやった」
既に離宮を3つに城壁の一部が修復作業中である。
幾ら人的被害には及んでいないとはいえ、こうもたびたびでは国としての威厳に傷が付く。
とはいえ、戦争が終わったことによる経済の復活と戦上手と名高い国王の存在が、列強の枷になっているのは間違いない。
なにせイングランドの現国王は、「神をも使役する預言の王」であり ―― 。
その隣に侍る王妃は、「伝説の白龍に愛されし姫」であるから。
尤も、それだからこそ ―― 本来なら他愛もない痴話喧嘩のはずが、王宮内に知れわたるほどの大事になるのだが。



「ワハハハハ…思い知ったか、ヘンリー! 口惜しかったらさっさと政務を片付けろっ!」
王宮内に響き渡るような笑い声と罵声に、どうやらケリが付いたらしいと知れるのはいつものことで。
相手は仮にも国王なのにと思いつつ、その後を引かぬ清々しさに小気味のよささえ感じてしまう。
元々ヘンリーが国王に付いたのは、最愛のクリスを手に入れるというそれだけの理由だから。
手にいれた今となっては ―― 一日中でも側にいて、イチャイチャとしていたい、むしろそれしかしたくないというのが本音であって。
政務なんかやってられるかっ!というのが心の叫びであるのだが。
「嘘だろ? なんでこんなに仕事ばっかりやんなきゃなんないんだよ」
「貴様、国王だろうがっ! 少しは王としての自覚を持て!」
「…別になりたくてなったわけじゃ…」
「何かいったか?」
「イエ、ナンデモ」



クリス相手には、一応「神」を出しても防戦一方。
その柔肌に傷一つつけることなどできないし、それに、
「やっぱ、最強はあのお姫様だよな」
「神」は使役できても、最愛の「お姫様」を跪かせることなんてできやしない。
細腰に手をあて高笑いをするときの、本当に楽しそうな顔が好きだから。
天上の青より濃いセレストブルーが見つめる先は、紛れもなく自分だから。
「クリス〜。まさか一人で片付けろ何ていわないよな?」
イングランドにおける国王と王妃は共同統治者。そのために婚儀も王位継承の儀式と一緒に行ったのはヘンリーの意向だったから。
「フン、判っておるわ。貴様一人に任せておいては、10年たっても政務など終わるものか。役所仕事などと官吏に言われるのも癪だしな」
もともと政務の効率を考えれば、クリスのほうが処理能力は優れている。
「この程度の政務など、俺にかかれば1時間でケリが付くわ!」
颯爽と歩き去る姿も高邁無敵な態度も全てがクリスそのもので。
そうしてイングランドの一日が始まるのは ―― いつもの日課であった。





Fin.

駄文だ。マジに。
なんなんでしょう、何が言いたいわけ、自分っ!
…ま、姫は王サマにも官吏にも遠慮ナシで、
常にGoing My Way 驀進中!と言いたいらしい。(←多分っ)

2004.06.02.

rainy fragments