27.砂嵐 (ファラオ×セト)


「くっ…また、好き放題やりおって…」
ゆっくりと身体を起こしながらも、刻まれた鈍痛は流石にその存在をはっきりと主張して。
セトは豪奢な寝台から起き上がると、忌々しげに隣で眠る人間をにらみつけた。
下級官吏辺りなら恐れをなして思わずひれ伏してしまうほどの冷たく怒りに満ちた瞳であるが、それも流石に眠っている相手には通用しない。
というか、そもそもこの相手に利いた試しはない。
「この…のうのうと眠りおって。一思いに息の根も止めてやろうか?」
幸せそうににんまりと笑みさえ浮かべている寝顔を見ると、本気で殺意もこみ上げてくるところだが ―― これでも一応はこの国の最高権力者である。
それがこんなに無防備に眠りを貪ってもいいものかとも思うところでもあり、緊張感が足りんわっ!と一括してやりたいところでもあるのだが ―― 下手に目を覚まされてしまえば、この後の予定にも差支えがあるというもの。
「フン、このまま惰眠を貪っておれ。二度と目を覚ますな」
本当にそんなことになればそれはそれで退屈極まりないことになるだろうが、それはそれ。
腹いせ紛れに布団を頭まで被せた上に枕を積み重ねると、足音を忍ばせて寝室をあとにした。



「…んっ…ううっ…ん」
はっきりとしたことは覚えていないが幸せな気分を味わっていたはずだった。
それが途中からこう、なんとなく息苦しくなって。
ついでにそれまで優しくしてくれていたはずの佳人の態度が急に冷たくなり。
そして、ついには ――
「うわっー!」
ピカッと煌く閃光と、全てを薙ぎ払うかの衝撃。
それはイヤというほど覚えのあるモノで ―― ユギは自分の叫び声で目を覚ました。
「あ、危なかったぜ…マジに喰らうところだった…」
夢だということはすぐに判った。でなければ、幾ら交わしたと言っても、こうまで部屋の中が静かなはずがない。
「ったく、青眼のヤツめ。夢の中まで邪魔する気かよ」
とはいえ、昨夜はその青眼を押さえ込んでセトを独占したのも事実。今頃は自分に対して怒り狂っているのも間違いはないだろう。その思い辺りがあるからあんな夢を見たのかと、ふと隣に手を伸ばせば、
「あ…れ? セト?」
確かに眠りに付いたときにはそこにいたはずの佳人は既になく、ほんの僅かなぬくもりも消えようとしている。
「…ったく、また逃がしたか」
どんなに無体な抱き方をしても、セトは夜明け前には必ず神殿へと帰ってしまう。
それが判っているから、それこそ一晩中身体を繋げて、気を失うまでにも抱いたはずなのに。
「アイツ、あんな身体でよく仕事なんかする気になるよな」
そう仕向けたのは自分であるのに、そんなことは思いっきり棚に上げているユギである。
「大体、仕事をしすぎなんだ、アイツは。俺が休めって言ったのに聞いた試しはないし」
それはファラオとして褒められる所ではないものだが。
「今日は一緒に朝風呂に入って、朝食にして、セネト(ゲームの一種)をして…って、思ってたのに」
漸く大祭も終わってゆっくりできると思っていたのに、ファラオである自分よりも神官としての仕事の方を優先させる恋人には困ったもので。
だが、このくらいでへこたれるユギではない。
(まずは朝風呂だよな)
勝手に立てた予定だが、既にトラップは仕掛けてある。
「出でよ、オベリスク!」
本来は召喚にも多大なコストを払うはずの三幻神であるが、ファラオであるユギにはたやすいことで、
「神殿に迎え、オシリス。「砂塵の大竜巻」で砂嵐を起こしたら、セトとオアシスでラブラブデートだぜv」



勿論そのあとで、セトだけではなくアイシスやマハードからも非難轟々となるのは目に見えているが、そんなことではへこたれないユギであった。





Fin.

……無理矢理お題にあわせているのが眼に見えていますが、この辺で勘弁してくださいませ。
絶不調で、ラブラブデートと混浴(←言うな!)しか脳内妄想に出てこない浅葱でございます。m(__)m

因みに浅葱のデッキには「砂塵」は3枚常駐ですv

2005.08.28.

Silverry moon light