29.ライバル (闇遊戯×海馬)


「兄サマのライバルって、やっぱり遊戯かな?」
そんな事をふと呟いたのは、海馬コーポレーション社長室で学校の宿題に頭を悩めていたモクバだった。
「突然、どうしたのだ?」
「ん…いや、丁度辞書で調べたら、書いてあったからさ」
そういって見せにきた分厚い国語辞書に書かれていた一文。
―― ライバル[rival]:互いに相手の力量を認め合った競争相手。好敵手。
その一文に、海馬は秀麗な眉を顰めた。
「シュレイダー家とかパラディウス社とかもライバル企業って言われてるけど、兄サマはあんな奴等の力量なんて認めてないでしょ?」
確かに。経営能力というものに関しては絶対の自信が海馬にはある。そのことで追従を許すものなど存在しないし、そもそも歯牙にもかけてはいない。唯一、企業で視界に入れているのはイリュージョン・インダストリアル社だが、アレは好敵手というよりは、提携企業だ。
尤も、いずれは乗っ取ってやろうと、株の動きには目を光らせてはいるが。
そして、
「兄サマが他人を認めるとしたら、遊戯のデュエリストとしての力量かなって思ったんだけど…」
唯我独尊、高邁無敵、独立不羈の海馬である。他人の存在を認めるなどありえないと言っても過言ではないが、それでも例外は存在する。
「うむ…確かに、ヤツのデュエリストとしての能力は、認めるところはあるな」
そう、それは間違いない。間違いないが ――
「だが、ヤツもデュエル以外では認めてなんぞおらんからな。デュエル以外のヤツは、常識のカケラも持たん、オカルトかぶれのセクハラ大馬鹿者だ」
そんな風に酷評する海馬だが、僅かにその頬に朱がさしていることをモクバは見逃さなかった。



そして、その夜。いつものように海馬の帰宅を見計らって忍び込んできた遊戯に同じ事を聞いてみると、
「それはちょっと違うな、モクバ。オレと海馬はラブラブの恋人同士。a pair of loversだぜ☆」
返ってきたその答えに、聞くんじゃなかったぜぃと思ったのは言うまでも無い。





Fin.

これがホントのSSですね。短って感じで。(苦笑)
言わせたかったのは、ライバル(Rival)ではなくてラヴァー(Lover)だというところ。
勿論、闇様の台詞です。
しかし、社長にとっては力量を認めたライバルなんていないだろうケド、
闇様には青眼とかモクバとか仕事とか、いっぱいいそうですね。

でもって、勿論、闇様のことは青眼もモクバもライバルだなんて認めてないんだろうな、とか?(苦笑)

2005.10.29.

Atelier Black-White