Re-challenge  by れん様(しっぽ屋駄文堂)

闇様→ユウギ、表様→遊戯で表記しています。
完全にパラレルでW遊戯はごく普通に双子です。


「なあ、相棒頼むよ、この通りだ、な、お願いします」亀のゲーム屋、二階から階段を降りている遊戯をユウギが追いかけていた。
「やだよ。絶対駄目。何度も言ったよね、そのお願いだけは聞けないって」普段は仲のいい双子なのだが、どうも今回はつれなくあしらわれているようだった。
「相棒〜、一生に一度の頼みなんだぜ?」
「もう何度も君の一生に一度のお願いは聞いたからね。締め切りました」
「あいぼ〜う…」
「情けない声出さないでよ〜、全米チャンピオンが…」呆れた遊戯がようやく振り返りユウギをみた。「大体、今度の大会『出たい』って言っても簡単に出れるわけじゃないんだよ?しかも締め切りすぎてから出たいって言われても無理だよ〜」
「無理言ってるのは分かってるんだ。でも、絶対この大会に出たい。相棒頼む、出場権譲ってくれ!」
「絶対やだ☆海馬くんとデュエルできるかもしれないのに」
海馬コーポレーション主催のデュエル大会は数日後に開催を控えていた。この大会では参加資格が規定されていて、海馬コーポレーションが指定したいくつかの大会でベストエイトに残ったことがあるデュエリストのみが参加できる。該当者には海馬コーポレーションから参加申込書が送られ、参加希望を出せば新型デュエルディスクが参加者に届き、これがデュエル大会の出場切符兼参加賞となっていた。
強豪揃いの大会は世間の注目集めたが、それを一層強めたのは海馬瀬人の出場だった。カードの貴公子として名高い彼だが、デュエリストとして参加することは滅多にない。出れば圧倒的な力を見せて優勝するのだが、ほとんどの場合主催者や主賓として特別席で観戦しているだけだった。これ以上無いというほど惨敗させられた対戦者は、『次こそは…!』と決意しても再戦のチャンスさえロクに無かった。けれど今回の大会ではその海馬瀬人が出てくるのだ。対戦したことがあるものも無いものも、『俺が一番最初に海馬瀬人を倒すんだ!』と誰もが海馬瀬人とのデュエルを夢見ていた。
遊戯も名の知られたデュエリストだったので出場権を持っていたが、中学のころからアメリカにデュエル留学をしていたユウギは全米チャンピオンのタイトルは持っていても、今回の海馬コーポレーションの参加規程とされる大会での実績は全く無かった。

「大体、なんだっていきなり出場したいなんて言い出すのさ」もともと優しい遊戯は断ることが苦手だった。ユウギもそれを分かっているからあまりしつこく頼むことは無い。なのに今回は違った。断っても断ってもユウギは頼み続ける。お陰で遊戯はちょっと不機嫌だった。「君が出るには物足りない大会なんだろ?出て、万が一負けたらどうすんのさ。全米チャンピオンの名前が泣くよ?」
「俺は負けないぜ。絶対優勝する」
「勝つことが分かってるならでなくったっていいじゃないか」
「何じゃ騒がしいのぉ」双子の会話に双六が割って入った。双六の手には宅配便の荷物が抱えられていた。「ほれ、ユウギにじゃ」
「あ、ああサンキュ、じぃちゃん」
「なに?それ…」送り主には海馬コーポレーションとなっていた。急いで包みを開ければ、そこにはデュエルディスクが入っていて、その上には署名のないカードが一枚…。『馬鹿者が。逃がさん』少し右肩上がりの整っている文字が、走り書きのようにカードに書かれていた。「これ、海馬くんの字じゃない?どうしたのさ、もう一人のボク!!」瀬人は遊戯のクラスメイトだった。あまり授業に出ない瀬人だったが、単位のためにレポートは常に提出されていて、瀬人の書いた文字は何度か目にしたことがあったのだ。そして、電話が鳴った。
『武藤ユウギさまでいらっしゃいますね?海馬コーポレーションの磯野と申します。今回のデュエル大会なのですが、参加されると社長から伺い、デュエルディスクを送らせて頂きました。大会参加に関しましての資料も同封しておりますので、当日は時間厳守でお願いいたします。もしよろしければ、当日お迎えに上がりますが…』
「い、いや、迎えは必要ないぜ。デュエルディスクも届いてるし。喜んで参加させてもらう」
『それを聞きまして安心いたしました。では社長にもその旨お伝えいたします。失礼いたします』
丁寧な応対ではあったが、かなり一方的に喋られて電話は切れた。受話器を置き、ユウギはデュエルディスクを見た。瀬人直筆のカードのほかに確かに大会参加要綱にデュエルディスク取扱説明書も同封されていて…ユウギはデュエル大会に参加できることになっていた。
「もう一人のボク!どういうことさ?何でキミに海馬くんから手紙が来るの?」
「う、あの」遊戯の剣幕にユウギはタジタジと後ずさった。遊戯にとって才色兼備・スポーツ万能な瀬人は憧れだった。喧嘩腰でくってかかる城之内の制止役をして、たまに『ふん』と見られるだけだったが、最近はようやく『まあまあ強いデュエリスト』と認めてもらえたのか少し言葉を交すことができるようになっていたのだ。それなのに、面識の全くないはずの双子の片割れは直筆の手紙(と言えるかどうかは謎だが)を受け取っている。「ま…舞に誘われてバイトに行った事があっただろ。あの時海馬とあったんだ。その時デュエルできなかったから、今度の大会で対戦しようって話になってさ…」
「『逃がさん』って?単なる大会のお誘いにしちゃ随分な誘い方だよね」全米チャンピオンのユウギを出場させれば大会にもプラスになるから特別に参加させようとする主催者側の思惑は分からないことはないが、それにしてもこのメッセージカードは行き過ぎだろう。こんなメッセージを送られたら、普通出ようと思っていても出たくなくなるだろうに…。
「あのときはあんまり出る気がなかったからさ、心配だったんだろ」
「だったらもっとお願いっぽく書くだろ?これじゃ脅しみたいじゃ…、!まさかキミ、なにか変な条件でも出したんじゃない?」…さすがに双子、鋭かった。
「あ…と、その…」いつの間にか遊戯に襟をつかまれてユウギは脱出不可能だった。しかもまっすぐユウギの瞳を覗き込むように問い詰める遊戯に誤魔化しが効くとも思えない。「実はさ…海馬が勝ったら俺の持ってるカードの中で好きなカードをやるって…」
「馬鹿じゃないの?キミ!!折角神のカード、コンプリートしたってのにもう手放す気?」
「俺が勝てば別に問題ないぜ?俺だって伊達にアメリカに行ってた訳じゃない。確かに海馬は強いかもしれないが、相棒は俺が負けると思うのか?」
「う…それはしてみなきゃわかんないけど…。でも海馬くん、本当に強いんだよ?」
「いくら海馬が強くっても俺が勝つぜ☆」その自信の根拠はどこにあるんだろう?海馬くんと対戦したことないくせに…遊戯は相変わらずのオレ様思考のユウギに頭が痛くなってきた。
「…まあね、キミが勝てば問題ないもんね…」きっと、いつもの傲岸不遜な態度で海馬くんをからかって怒らせたんだろう、と遊戯は想像した。でも…あれ?「ねえ、もう一人のボク…キミが勝ったときは?」一方的にリスクを背負うようなユウギではない。ブルーアイズでも貰う気だろうか?でもユウギはカードコレクターというわけではないし…、最強と噂されるブルーアイズをマジシャン中心のユウギのデッキに入れるにはデッキの再構築が必要となるし、ユウギにとってはあまり必要のないカードだろう。「海馬くん、ブルーアイズをアンティにするとは思えないけど…」
ギクリ、となったユウギを遊戯は見逃さなかった。できたら自分が勝った場合の賞品は教えたくなかったからうまく誤魔化せたか?と安心しかけていたのだが…。
「ねえ、キミが勝ったとき、海馬くんはキミになにをくれるの?」
「え…と、なんだったかな…」目線を逸らそうとするが遊戯は甘くなかった。
「な・に・を・くれるの?」相棒の追求からは逃れられない、そう悟ったユウギは開き直ることにした。
「…海馬本人…」ニヤリ、と笑って告げた。
「なにを約束してんのさ!キミは〜!!分かってんの?海馬くん、男だよ?男!貰ってどうすんのさ!!」思ったとおり、遊戯は真っ赤になってしまった。
「海馬以上に綺麗な奴なんて女だって見たことないぜ?ちょっと味見したけど極上だったしなv」
「あ、味見って…」遊戯はパニック寸前だった。アメリカに留学中に何を学んだのか、一から突っ込みたかったが何か恐ろしい答えがかえってきそうで迷ってしまう。
「ペガサスのお手つきじゃないかって、向こうじゃ噂だったけど違ってたぜ。男とも女とも経験なしだな、海馬の奴。ちょっと酔ってるトコを押し倒したけど、可愛かったぜ☆相棒達は強がってるトコしか見たことがないだろうから想像つかないかもしれないが…感度も良さそうだったし、さっさとモノにしとかなきゃ、横から掻っ攫われそうで心配なんだ」ユウギはそう正直に話したのだが、どうもこの辺の話になるとアメリカで好き勝手していたユウギと日本でごく普通の高校生活を送っていた遊戯とではかなりのギャップがあるようだった。
「もう一人のボク…ホモだったの?」
「違うぜ、相棒。基本的に俺は女好きだからな。けど海馬は別だ。あんな極上品なら性別なんて関係ないぜ☆」相棒もあの姿を見たら分かるぜ、とユウギは笑った。…見たくないかも、と遊戯は思ったが言葉に出さないだけの理性は残っていた。


瀬人は今回の大会でユウギの名前が参加者名簿に載っていないことに激怒した。大会参加資格が有ることなど、綺麗さっぱり忘れていた瀬人は、ユウギが神のカードを渡すのが惜しくなって大会にわざと参加しなかった、と思ったのだ。対戦しなければ神のカードは手に入らない。世界に一枚っきりしかないカードなのだ、手に入りそうなときに無理でも何でもして手に入れなければ、お目にかかることさえ難しいだろう。
主催本部に無理をいい、参加者を一名増やさせた。デュエルディスクを発送させ、秘書の磯野に出場確認の電話を入れさせた。そして…参加する、というユウギの返事に、ほっとしたのだった。
今回TV中継もはいるようになっている。トーナメントを少しいじって、決勝で自分とユウギが対戦すように組めば大会もきっと盛り上がるだろう。新型デュエルディスクのお披露目にも格好な舞台となった。
瀬人は自分の勝利を疑っていなかった。いつものように優勝してユウギからひそかなアンティとして神のカードを手に入れるののは瀬人にとって確実な未来だった。まあ…自分が負けたときの条件が気にならないことはなかったが、遊戯と賭けの話をしたときにはどうも酔っていたようだ。『お前を貰う』と言い出したユウギもきっと酔っていたに違いない。その…押し倒されもしたが、常識で考えれば男を押し倒す、というのも変な話だ。もしかしたらユウギは俺の持つブルーアイズが欲しいのかもしれない。あれも世界に三枚しかない超レアカードなのだ。そうだ、そうに違いない。『お前を貰う』などといっておいて俺の動揺を誘い、(絶対無いことだが)ユウギが勝ったときには『お前を貰うといってたが…ブルーアイズで勘弁してやるぜ☆』などとほざくつもりなのだ、ふふん、そうはいくか、俺が貴様を倒してやるわ、瀬人はそう結論を出すと、気分よく仕事に戻っていった。



大会当日、会場となった童実野スタジアムは熱気に溢れていた。強豪ぞろいの大会、おまけに海馬瀬人に全米チャンピオンの武藤ユウギまで出るとあっては興奮は増すばかりだった。順調にトーナメント戦を制していく瀬人とユウギの姿に観衆は熱狂した。決勝に備えてすべての手札をさらすような真似は勿論しない。それどころか瀬人にいたってはブルーアイスを使ってワンターンで瞬殺したデュエルもあった。実は瀬人にはさっさと大会を終わらせなければならなかった。海馬ランドの用地買収が進んでいない、と報告があったのだ。大会が終わり次第アメリカに飛ばなければならない。近くの飛行場にはブルーアイズ戦闘機が発進準備完了で瀬人の到着を待ちわびていた。
そして…いよいよ決勝戦になった。思ったとおり瀬人対ユウギでの決勝になった。遊戯も善戦したのだが、準決勝で瀬人のラ・ジーンとマジックランプのコンボの前に敗れ去っていた。
決勝戦を前にして遊戯は複雑な心境だった。今回ばかりはどうもユウギに勝って欲しい、とは思えない。ユウギの対戦相手が憧れの瀬人だからなのか、ユウギから今回のひそかなアンティを聞いてしまったからかは不明なのだが。(まあね…確かに、海馬くんはボクに知ってる人間のなかじゃ一番綺麗な人だし女じゃなくてもいいって思う気持ちも分からなくはないけど…海馬くん、こういうことに関しちゃまるっきり無知みたいだしなぁ。英才教育受けてたらしいけど性教育は科目に入ってなかったらしいし、どうするんだろ、もう一人のボクは…どうせなら負けて神のカード取られちゃたら、海馬くんのこと諦める気になるのかなぁ…)とため息混じりに考える遊戯だった。


デュエル開始前、お互いのデッキをカットしながら瀬人が声を掛けた。
「神のカードは持ってきたか?」
「ああ、俺のデッキにはいってるぜ。心配するなよ、お前が負けても後からゆっくり見せてやるぜ?」
「ふん…、見せてもらわずとも結構だ。これが終われば神は俺のモノなのだからな」
「ふふ、自信たっぷりだな…。負けた時の条件、忘れてないだろうな?」
「憶えている。まあ、忘れていても良かったがな」自分が負けることを考えていない瀬人は高慢な笑みを口元に漂わせた。

決勝戦は白熱した展開になっていた。瀬人の一見パワーのみで押してくるように見えながらもきっちりとトラップや魔法で相手の退路を断つ戦術にユウギは今まで経験したことがにほど苦しめられた。瀬人にしても、デッキ自体は遊戯に似ているが一層攻守自在で掴みどころのないユウギのデッキの攻略に苦心していた。わずかなミスが破局を引き起こすことをお互いが分かっているが、慎重すぎれば相手に良いように攻められる。一進一退の攻防はお互いのライフを少しづつ削りながらもとどめの一壁にはなかなか結びつかなかった。
それでもターンが流れていくうちに少しづつ瀬人が不利になってきていた。召還できたブルーアイズがユウギのトラップで墓地へと送られる。ライフも削られ、気がつけば瀬人は残り900、ユウギは1000となっていた。フィールドのモンスターも瀬人側にはダークエルフ、ユウギにはマグネットバルキリオンが攻撃表示・ビッグシールドガードナーが守備表示だった。このドローで瀬人が起死回生のカードを引かなければ、初めて瀬人が負ける…と会場が息を呑んだ。冗談じゃない!瀬人は叫びだしそうだった。このデュエルで負ければ、自分の半身と思っている青眼白竜が奪われてしまう!そんなことがあってたまるか!瀬人は祈るような気持ちでデッキへ手を伸ばした。
「ドロー!」瀬人の声が会場に響く。ドローされたカードは強欲な壷だった。「手札から『強欲な壷』を発動!」新たに二枚のカードがデッキからドローされた。その二枚のカードを見て瀬人の表情が一変した。追い詰められた獲物は一瞬にしてカードの支配者となった。「手札よりマジックカード『ハリケーン』発動!場にあるマジック・トラップカードをすべて手札に戻す!そしてマジックカード『使者蘇生』を発動!復活するモンスターは勿論…ブルーアイズ!」墓地から復活した白竜は嬉しそうに尻尾を瀬人に絡めた。トラップを吹き飛ばされたお陰でユウギは指をくわえてみているしかない。非常に嫌な予感がユウギの背中を行ったり来たりしていた。「マジックカード『融合』発動!場にいるブルーアイズ一体と手札から二体のブルーアイズを融合し…いでよ!ブルーアイズアルティメットドラゴン!!」
「げっ…」ユウギは絶句してしまった。青眼究極竜のカードがあることは知っていた。多分瀬人所有のカードだろうと考えてはいたが、まさかこの場面で対面できるとは思わなかった。
「ブルーアイズ!マグネットバルキリオンを攻撃せよ!アルティメットバースト!!」究極竜の三つの口から放たれた光球はマグネットバルキリオンを倒し…ユウギのライフをゼロにした。スケベ心がカードへの執着心に負けた瞬間だった…。


「嘘だろ…」神がかりのドローといわれた自分を上回る引きのよさを見せた相手をユウギは呆然と見た。瀬人は最後に出現した自身の最強の下僕を満足そうに眺めるとデュエルディスクの映像を切り、優雅な足取りでユウギに近づいてきた。
「全米チャンピオンというのは伊達ではないようだな。この俺に敗北を予感させアルティメットを出させるなど…初めてだ」強敵を倒した興奮がまだ、瀬人の瞳の中で踊っていた。キラキラと輝く青い瞳はユウギに手に入れ損なったものがいかに貴重だったか再確認させてくれた。ユウギが自分のデッキの一番上のカードをドローすると『オベリスクの巨神兵』が姿を現した。 …もう一回ドローできれば、このカードで状況は変わっていただろう。いや普通のデュエリスト相手ならここまでドローする前に自分の勝利で終わっていたろうに…ユウギはそんな思いを振り切るように瀬人にカードを差し出した。
「約束の『オベリスクの巨神兵』だ」
「これが…神のカードか」青い堂々とした巨体がカードを飾っていた。カードを受け取った途端、ユウギのことは眼中になく、惚れ惚れと眺めている瀬人は可愛かったが…ユウギは不満だった。こんなことになるんだったら前回無理にでも抱いときゃよかった、後悔の坩堝ではあったが、ユウギには瀬人を諦める気は全くなかった。次は絶対に勝つ、逃がしてなんかやらないぜ、と固く心に誓った。
「次はいつにするんだ?何なら場所を変えて今からするか?」そう話しかけたユウギを瀬人は不思議そうに見た。瀬人の視線がカードからユウギに移る。
「…次?」
「おいおい、何ぼけてるんだ?神のカードは後二枚あるんだぜ?それともお前はたかがオベリクス一枚で満足なのか?」すっと瀬人の瞳が細くなり剣呑な光が瞳に宿る。
「そんなはずは無かろう。貴様の持つ神のカード、すべて俺に渡してもらう。…しかし、今から俺はアメリカに行かなければならん。残念だが、貴様とデュエルをしている暇はない」
「忙しいんだな、社長様は」ユウギはかすかに笑うと、一枚のメモを渡した。
「…なんだ?」
「俺の携帯の番号。帰ってきたら連絡しろ。…今度は俺が勝つぜ」
「ふん…返り討ちだな」瀬人はメモを受け取った。
「なるべく早く帰って来たほうが良いと思うぜ。俺が神のカードをアンティに出す気でいるうちにな☆」もともと仕事さえ終わらせればさっさと帰って来る予定のアメリカ行きではあったが、この言葉は瀬人に大きな影響を与え、表彰式もそこそこに瀬人は会場を後にした。残されたユウギの微笑みの意味を考えることもなく…。



そして…。
「…何故こうなる…」瀬人はベッドの上で呟いた。昨夜散々鳴かされて声が少しかすれている。とんでもないところを中心に鈍い痛みが全身に広がっている。
アメリカでの仕事を終えて、帰国してすぐにユウギに連絡を取った。もうアンティに神のカードを出す気がないといわれるのが恐ろしくて記録的なスピードで仕事を終えて帰国したのだ。お陰でアメリカにいたのは一日に満たない時間だった。幸いユウギとの連絡はすぐに取れて、夜には海馬邸でデュエルディスクを装着していたのだが…。
「何故って…敗けたからだろう?」
「何故ここまでされなければならんのだ」悔しさに揺れらめく瞳だったが、その潤んだ蒼はユウギをあおる役目にしかなっていなかった。
「最初っからお前が欲しいって言ってたぜ、俺。ちゃんとアンティの条件だって『お前』って指定したし…覚悟できてたろ?」
「できててたまるか!男に抱かれるなど考えてもなかったわ!」
「でも、嫌じゃなかったろ?気持良さそうだったぜ☆昨夜」耳元に息をふきかけると瀬人の体が震えだした。白い肌が仄かに紅く染まりなんとも美味しそうな姿はユウギの理性を簡単に崩壊させた。
「ば、馬鹿者!!ええい、離せ!!」ユウギの手の中から逃れようと身をよじるが、その動きは艶かしくしか映らない。
瀬人の髪に触れていた手がゆっくりと動き、薄紅に染まった頬を柔らかく包み込む。熱っぽい瞳が瀬人を正面から覗き込んだ。「お預けが長かったせいかな…まだ足りないぜ…」
「ま…待て、もう朝だぞ?」ベッドの上でのしかかられて、おまけに昨夜から全裸の状態で。
「今日は休みなんだろ?アメリカでの仕事もかなりきつかったみたいだし、ゆっくり休もうぜv」相手はどうも経験豊富なのに比べて、自分は昨夜が初体験。たとえ少々自分の方が体が大きくても跳ね除けられるほどの力など元々ない上に、敏感な場所を探られては逃げ出すことすらできなくて。『貴様がいてゆっくり休めるはずなどないだろうが!』と怒鳴りたくても、口を開けばとんでもない声が出てきそうでどうすることもできなかった。
その日海馬邸の主の寝室のドアは昼過ぎまで開かれることはなかった。


そして…それ以降海馬邸にこまめに通うユウギの姿が見られるようになる。海馬邸ご自慢の警備システムにやられることもなく、嬉々として通うユウギの後姿を見ながら、『早めにつば付けときゃよかった…』と悔やむ人がいたとかいなかったとか…。


END

777番踏んでいただいた浅葱様へ
お待たせいたしました。「恋人も濡れる街角」の続編です。(多分)
やはり社長好きとしては一回ぐらい観客の前で闇様に勝つ社長を見てみたい、と思っちゃいまして…
(結局最後は美味しく頂かれてしまうんですが)
こんな粗末なものでよければ受け取ってやってくださいv ありがとうございました



ひそかに日参させていただいていたれん様のサイトで見事7,777Hitを踏んだので、ずうずうしくもお願いした作品です。
この元になった「恋人も濡れる街角」もうっとりモノです♪
れん様、こちらこそ、ありがとうございます♪
ああ、やっぱり、一度は見たい社長が闇様にデュエルで勝つシーン♪ もう、拍手喝采・思わずガッツポーズものでした。
そして…やっぱり美味しく頂かれてしまう社長v神のカードも、闇様の手にかかっては生餌状態ですね(笑)
本当にありがとうございました。

2003.11.29.

Atelier Black-White