WOMEN Special


「か、母さん!何だよ、その格好・・・」
年も押し迫った頃、家に珍しくいる母の姿に俺は声を上げる。
「何だはないだろう?」
はっきり言って、白衣を来ているのが常でそれ以外の時はジーンズだとか、とにかく着飾ることをしない人なのに。
「・・・どこか行くのか?この忙しい時期に?」
病院というのは、年末年始は休みのところもあり、それ故救急指定だったりする大きな病院は忙しいはずなのだが。
「いや、今日じゃなくてな。年明け早々に約束が入って、着物で行くことになったんだが、久しぶりに着るだろうから着れるかどうか試してたんだ」
俺の記憶にある限りじゃ、着物姿って初めてだな。
確かに母さんはキツイ系美人だが、俺は性格を知っているからこんなに見事に変わられると驚く。
…あ、中身はそのままだな、着飾っても。
「へぇ。自分で着れるのか?」
「まあな」



「あなた、どう?」
京子は帰宅した夫に尋ねる。
誂えたばかりの訪問着は、新年を迎えてすぐに日の目を見ることになりそうだ。
「いいじゃないか。新年会があるんだろう?」
「そうなのよ。あざみちゃんたちとね。それに雅さんもでしょ?楽しみだわ〜♪」
その集まりに訪れるメンバーを聞き、心なし利行は背中が寒くなった。
「あ、ついでに利恵も連れて行くわよ」
…何故か娘の将来が不安になった五十嵐利行だった。



「若葉ちゃん、今度何を着て行く?」
黒崎家のリビングで、この家と会社を切り盛りしている万吏也(まりや)とカノウの社長夫人・若葉が新年会へ何を着ていくかという相談をしていた。
「そうねぇ〜。世吏加ちゃんがつくってくれたお洋服を着たかったのだけれど着物で来て欲しいっていうことだから・・・」
万吏也の娘・世吏加はデザイナーをしている。が、流石に着物は手掛けていない。
「こうなったら彰子さんに相談しましょう。時間もあまりないし、だけど彰子さんなら・・・」


年が明け、その日はやって来た。


「「あけましておめでとうございます」」


藤代雅、黒崎万吏也、五十嵐京子、叶若葉、佐伯あざみ、そして五十嵐利恵。
この女傑・・・女王・・・たちといって謙遜ない女性たちは話し合いの末、数多くのホテルを有する若葉がいることもあり、“誰にも邪魔されることなく”、“広々とした空間”で新年会を楽しむ為にカノウ系列のホテルへと集まった。

雅は手描き京友禅に名古屋帯、万吏也は絞り訪問着に紹巴織袋帯、京子は京加賀染めで薄水色の訪問着に西陣袋帯、若葉は美術友禅で名前の通り若葉色の訪問着に西陣名古屋帯、あざみは暈した紫の螺鈿訪問着に創作袋帯、利恵は絞り四つ身訪問着で後ろの帯を文庫結びにしていた。


着物の話やそれぞれの近況から始まり、どこからともなく隠れた共通点――息子・甥・孫に、同性の恋人がいること・・・が露見して来る。

「あざみちゃん、よかったわね!研究対象が周りにたくさんいることがわかって」
京子は我がことのように喜んだ。
京子とあざみは夫が医者で専門も同じことから家族ぐるみの付き合いがある。
「「研究って?」」
「男が男に与える快感がどう脳に影響を及ぼすのか。夫がよくそっちに間違われるものだから思いついたんだが、面白そうじゃないか?」
あざみのそんな提案に――怖いことに誰もが乗った。
「それ面白そうね〜。皇紀も裕紀も愛されてていつもお肌キレイだし」
「ウチの魁でよかったらどんどん協力させるわよ」
息子同士がカップルである若葉と万吏也も。
「龍也は克己さん以外目に入ってない様子ですしね、これくらい遊ばせてもらわないと」
とても楽しそうに笑う雅も積極的だ。
すると、
「克己兄さんだけじゃなく尚樹兄さんもそういう相手がいそうなのよね」
と呟いた利恵に視線が集まる。
「そうなの?利恵」
「間違いないわ」
と、このメンバーの中でも引けを取らない発言。
「とにかく助かる。一気に研究が進みそうだ。ところで事例を聞きたいと思うのだが・・・」
「「知ってることだったら何でも聞いて!!」」
新年会はかなりの盛り上がりを見せることになる。



「まずはセックスの頻度だな」
恥じらいなどという言葉は、あざみには無用だ。
「私、知ってるわ。ウチの息子と皇紀くんは毎日、だそうよ」
「ええ〜?そうなの?万吏也ちゃん!どうして知ってるの〜?」
答えた万吏也に、驚いた若葉。
「前にね、魁から聞き出して(警察の尋問より怖い・魁談)、皇紀くんに確認を取ったのよ」
自慢気に話す万吏也に、それはいい研究対象になるとあざみは喜ぶ。
「毎日、と。ウチの孫もそうしたいでしょうが、如何せん、克己さんは医者ですからね」
「そうですね。克己は水曜が手術当番ですから、その前日はしてないと思います」
雅と京子は、龍也と克己が週に何回など知らない故に推理を始める。
「ところであざみちゃんのところの輝良くんは?」
「輝良は学校もあるし・・・週2回前後だな」


「・・・若葉さんのところは双子なのか?」
「ええ、そうよ〜。皇紀と裕紀って言うの。裕紀も男の恋人がいるわね〜。でもとってもお仕事が忙しいらしくて、私はお相手の方にまだ会ったことないのよ〜。あ、じゃあエッチも皇紀みたいに毎日じゃないと思うわ〜」
の〜んびり話のは若葉のクセで、この中で一番のお嬢様育ちと言える。
「双子か。じゃあ比較出来るな。いいことを聞いた」
「双子なら私の弟たちもそうよ〜。でもそれぞれ奥さんは、いるの」
ただし、滅多に妻とは会わず兄弟でいつも一緒だと言うと誰もが
「「そのふたり、出来てるんじゃないの?」」
と口を揃えた。
「そうねぇ〜、やっぱりそうなのかしら?そう言えば、弟たちはよく裕紀や皇紀にキスしてたわ〜」
・ ・・止めなかったのか?と一瞬誰もが疑問を持ったが、若葉はにこにこ笑っているだけだった。
あざみは裕紀と皇紀の性格なども聞き出し、双子の相違点も面白い結果が出そうだと考えていた。


「では、龍也&克己カップルだが・・・」
ある程度ネタが出揃ったところで、それぞれのカップルの特徴を
纏めていくことになった。
「年下攻めで、健気受け・・・そうよね、雅さん?」
「ええ、そうですね。龍也には注意書きで“絶倫”と付けておいてくださいな」
雅も楽しそうに笑っている。利恵は複雑な顔をしていた。


「次は魁&皇紀カップルと双子のことについて、だな・・・」
「雅さんのところの龍也くんは存じ上げませんけど、ウチの魁は皇紀くん相手なら常に“精力満々”だと備考欄に書いておいて欲しいわ」
「まぁv万吏也ちゃんったら♪」


「輝良たちは・・・」
「あざみちゃん、9歳離れてれば年の差よね!」
「それに話を聞いていると須賀さんってば主人に尽くす犬みたいだわvv」
「輝良くん、女王様?そうそう、確か強気受けって言うのよね?」


得られるだけの情報を手にしたあざみは、大層ご満悦だった。
今なら夫である貴織の小さな願い事くらい叶えてやってもいいと思うほどに。


「どうもありがとう。とても助かった」
「いいえ〜、どういたしまして〜」
「また何でも聞いてちょうだいね!それまでしっかり尋問しておくわ」
「こちらこそ、とっても楽しい時間を過ごさせていただきましたよ」
「あざみちゃんの力になれてよかったわ!」
「・・・私、今からこんな濃い会話に加わってていいのかしら?」
最後に利恵がこう呟いたとか、呟かなかったとか。


そして。

万吏也と若葉はそのままこの部屋へと泊まることになっておりふたりで話を続けた。
後日、若葉は双子の弟たち・蒼と葵に“あなたたち、出来てるの?”と相変わらずフリフリレースの洋服で、微笑みながら聞き、万吏也は息子・魁とその恋人・皇紀を家に呼び、不躾に直球の質問を繰り返したという。

雅と京子は、お互いの孫と甥についての交流を深め、ふたりは対象(龍也・克己)を目にすると、少しでも観察をしようとじーっと見つめる日が続いたとか。
龍也は視線に敏感で見られているということに不機嫌だったが克己は見られることに慣れていて、気付きもしなかった。
耐えきれなくなった龍也が“言いたいことがあるならはっきり言ってくれないか”とキレ、上手く策略に嵌り、克己との性生活を暴露させられる羽目になるのはそう遠くない未来―――。

あざみは、その日から早速得て来た貴重な情報を纏め始めた。
途中、仕事の休みが漸く取れた夫がやって来たが完全無視で、小さな望みなら叶えてやると一瞬考えたことも忘れ、研究に没頭していたという。


果たしてあざみの研究結果が明かされる日が来るのか、乞うご期待♪

End

Free Talk
皐月: 最強の女性たちによる談話、いかがだったでしょうか?
浅葱: BL系小説なのに、何故か女性優位。いやはや、やはり女は強い !?
皐月: 強いですよね〜。女性の方が。私もどちらかというと強いタイプですし。(笑)
浅葱: ええっ? そうなんですか? 私は…ご想像にお任せしましょう。
皐月: あははっ!その女性たちの中でも最強なのが、一番若いあざみだったりするんですよね。
浅葱: そうですね! …あ、一番若いのは利恵ってのもいましたね。でもあの子はまだ…?
皐月: 利恵は女性というより女の子ですね。でも末恐ろしい感じ。(笑)環境が性格に影響しますし。
浅葱: …ていうか、既に影響してます(笑)。
皐月: 確かに、もう耳年増ですねvvこの話は女性たちの新年会ということで着物を着てもらいました♪
浅葱: そうですね。女性の着物姿…艶やかでいいんですけど、会話が恐いです。
皐月: Triangleの男3人より遥かにパワーがありそうですからね〜、皆さん!
浅葱: ホントに…。しかも言うことがはっきりしてますね。
皐月: ま、類は友を呼ぶ?ということでしょうか。
浅葱: もう一歩踏み込んで、「友を呼んで、増殖中」て感じ?
皐月: (笑)!ウチのキャラで今回出てないけど類友は、世吏加・氷上彰子(まだ名前だけ登場)・・・まだ増えそうです。
浅葱: うちも…何せ、珠樹(龍也ママ)が本編にもまだ出てませんからね。
皐月: 龍也ママ・・・出て来て欲しいです!さて、今回の情報提供ですが・・・。
浅葱: 珠樹はもうちょっと待っててくださいね。…で、情報提供? なんでしょう?(←おとぼけ〜)
皐月: あざみが得た、貴重な情報です。・・・わかってるでしょ?(笑)
浅葱: おおっ! そうでした。勿論「研究熱心な」あざみさんですもの。まさかこのままということは…
皐月: ないですよねvvやっぱり実例を聞いたからにはきっちり纏めないと!
浅葱: そうですね! 「研究結果」はきちんとまとめないと!
皐月: ええ、そうですよ!ということで・・・
浅葱: 密かに…ですね。ヒントは「あざみの○○○○」ですね 。
皐月&浅葱: では、次の話もお楽しみに♪


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