天使たちのTea Party


暦の上では春でも、実際はいまだ冬の気配を残す如月のある日 ――
広い邸内では和やかな雰囲気の中、優雅に茶会が開かれていた。
出席者は、殆どが上下ともに黒のスーツや羽織袴の厳つい男性ばかり。それも、一種独特な雰囲気をもつ者ばかりで、和やかな雰囲気と相反する趣が無きにしも非ずである。

ところが、そんな邸内の最奥にある小さな東屋だけは、見るものの目を疑わせるような艶やかな気配に包まれていた。



「でも、正式に天さんが組を継いだってコトは、呉羽さんも色々と忙しいんじゃないの?」
手にした杯に甘酒を注いで貰いながら、克己はやや冷たく取り澄ましている呉羽にニッコリと問いかけた。
「いえ…僕は組のことは知りませんから。別に手伝う気もありませんし」
「あ、そうなんだ。僕も組のことは良く判んないんだよね。咲綺さんは?」
どこか取り付く島もないと言った雰囲気の呉羽であるが、それが拒絶を思わせないのは、ほんのりと頬に赤みを帯びているせいもある。そのため克己も全く気にせず笑顔で受けると、今度は酒を注いでくれた咲綺に話題を振った。
「私も…正毅さんはそんなことは気にしなくて良いって言ってくれますから」
「ふぅ〜ん、大事にされてるんだぁ〜」
「そんな…克己さんだって大事にされてますでしょう?」
「あはは…ま、ね」
外は肌寒い風が吹いているというのに、この東屋だけは華やかさと和やかさに満ちていた。
八畳ほどの座敷に火鉢を囲んで、中で杯を重ねているのは、まるで天女かと思わせるような美しい3人である。
天女のようにというのも ――
ラメの入った紺と薄紫地に、裾を濃紫でぼかした辻ヶ花独特の色合いで絞った優雅な振袖姿の克己。
裾をグレーにした黒地で、金彩のラインと小花をちりばめたシックな振袖姿の呉羽。
そして、エメラルドグリーンの地にラメを入れ、牡丹の花柄を多彩な色合いで描いた華やかな振袖姿の咲綺。
巷では極道界の三大奇跡と噂されている幻の「姐」達である。



元をただせば、この茶会は初代蒼神会会長であった藤代総一郎(龍也の祖父)が、宮家の血縁でもあった雅と一緒になったとき、その披露を兼ねて開いたというのが最初である。以降、毎年この時期に関東近隣の組幹部を招いての茶会が開催されてきたが、この席がいわば「姐」の披露の席と言っても過言ではなくなっていた。
とはいえ、毎年新たな「姐」が披露されるわけではなく、ここ数年はすっかり組長クラスの親睦界会に落ち着いていたのだが、
「華が足りないわね」
という、雅の一言で、急遽この三人が呼び出されたのである。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「ちょっといらっしゃい」
珍しく病院に訪れた克己が、誘拐されるように京子に引きずられて向かった先は五十嵐家の本邸だった。
「片づけをしてたら出てきたのよ。ちょっと着てみて」
と出されたのは、間違うことなく振袖 ―― 当然女物である。
「亜紀子に着せようと思って作ってたんだけど、結局袖を通すことがなかったから。ね、ちょっと着てみて」
言葉だけ聴けば「お願い」であるが、それには「何が何でも今すぐ、絶対に着なさい」という深い意味が隠れていることは必須である。
「…ま、いいけど、着物なんて着方がわかんないよ?」
「そうね、じゃ、雅さんに頼みましょう。さ、行くわよ」
と言われれば、勿論克己に拒否権は残されていない。
ちなみに亡くなった母である亜紀子用にと言う割には、デザインも生地も最新であったことなど気が付かない克己である。



「悪いな、咲綺。我侭を言って」
移動中の車の中では、組の者が見たら驚愕するような光景が繰り広げられていた。
「いいえ、お父さん。私でよかったら、いつでも言ってください」
ニッコリと微笑む咲綺はまるで可憐な花のようである。
「綾子は…幾ら言っても着てくれなくてな。いや、本当に一目で構わんからな」
「…はい」
綾子というのは、亡くなった咲綺の母親。正式には入籍しなかったので咲綺は私生児ということになっているが、咲綺の父にとっては唯一心から愛した女である。だが、当時は正妻が健在であったし、もともと物欲のなかった綾子は必要最低限しか金品の援助を潔しとしなかったため、当然、着物などというものに手を通してくれたことはなかった。
それが ―― 何のきっかけで思い出したのか、丁度、組の仕事で正毅が留守であったこの日、父はいつか着せたいと思っていた着物一式を前に、咲綺に一瞬でいいから袖を通してくれと頼みこんだのである。
母譲りの美貌を誇る咲綺に、その着物はとても似合いそうで ―― だが、当然着物の着方なんて咲綺にも、父にも判るわけがない。
「そういえばこの前、藤代の若組長と逢ったと言ってたな? あそこの雅さんなら着せてくれるだろう」
と、気が付けば車に乗せられていたというわけで、
ただその着物が、既婚者があまり着ることはない「振袖」であったということが咲綺にはやや腑に落ちなかったが…。



「天はいるか?」
天と呉羽が二人で暮らしているマンションに、その電話がかかってきたのは、天が出張に出かけた翌日のことだった。
「いえ…昨日から出張と聞いてますが?」
かけてきたのは天の父 ―― 緒方組の会長である。
「あ、ああ、そうだったな。そうか…参ったな…」
困ったような声のトーンに、呉羽は成り行き上尋ねた。
「何かあったんですか?」
「ああ、実は蒼神会会長主催の茶会があるんだが…それに天と呉羽さん宛てに招待状がこっちに来ててな」
緒方組の組長となった以上、本邸の管理も天に任されるのが筋ではあったが、諸事情から天は呉羽とともにマンションに住む方を選んでいた。勿論このマンションもセキュリティは完璧といえたが、だからといって公開というわけではない。そのため、天宛ての郵便物などは未だに本邸に届くものの方が多いと言っていた。
「仕方がない。今回は上納で済ませるか。500も送れば問題はなかろう」
電話の向こうで勝手に納得する様子に、呉羽は一瞬耳を疑った。
「ちょっと待ってください。500ってまさか…?」
「ん、どうした? 500万くらいは相場だぞ」
元々、呉羽がヤクザを嫌いになった理由が、多大な借金の返済のためである、お金を稼ぐということがどんなに大変かということは、苦労した呉羽にとっては身に染みて判っている。
それを ―― 簡単に言われると、
「いいです、僕が行けば良いのでしょう? 天さんは多分間に合わないと思いますが、僕が伺います」
「おお、そうか。助かる。じゃあ、車を回させよう」
そう応えた天の父の声が、妙に明るかった気がしたのは ―― 呉羽の気のせいではないはずだった。



そして ――
気が付けば3人は見事な振袖を着せられて、満足気に微笑む雅に引きずり回されていた。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「ほぉ…これは…」
雅に先導されるように、その後ろを3人のそれは見事な振袖姿が付いていく。
毅然としながら、冷たく取り澄ました呉羽。
少し不安げに、しかしそれが保護欲を煽ってやまない咲綺。
そして、周りの視線には全く動じることがなく、愛想のよい克己。
三人三様の美しさには甲乙などつけがたく、眼にする者たちも感嘆のため息をつかずにはいられなかった。
「これは、雅さん。今年は随分と綺麗どころをお連れじゃな?」
そんな誰もが声をかけるのを躊躇うような中、飄々と現れたのは ―― 仙台を拠点とする蒼神会系暴力団。黒鬼会の会長鬼塚義光であった。
「こちらが名代の…かな? いやぁ、噂にたがえぬ美人じゃな。これは眼福じゃ」
「まぁ、黒鬼会の。ほほほ…お眼鏡に適いますかしら?」
「そりゃこれほどの『華』じゃな。あとの2人も稀な華じゃな。いや、これは長生きする甲斐があるというものじゃ」
「そうですわね。これで3つの組も安泰というところでしょう」
ご満悦に話し込む2人を横に、言われている三人は気が気ではない。
元々、こういった華やかな場所には慣れていない咲綺は不安が隠せないし、振袖など着せられてしまった呉羽は不機嫌そのものである。
唯一、こういった策に嵌められ慣れている克己だけがかろうじて平然としているようである。
「雅様、流石に着慣れないせいかちょっと休ませていただきたいんですが?」
というと、
「あら、そう? ではこの一番奥に東屋があるから、そこをお使いなさい。関係者以外立ち入り禁止にしてありますからね」
「ありがとうございます。じゃ、呉羽さん、咲綺さん、行きましょ」
と見事脱出を図ったようで ―― 実は、それさえも計算の上だとは気が付かなかった。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


こじんまりとしたその東屋は手入れの行き届いた日本庭園の最奥にあり、ここが都内だとは全く思えないほどの静けさに包まれていた。
「克己先生、甘酒を持ってきました」
その東屋にいたのは、普段から克己の身の回りを担当している良介である。
「甘酒? 美味しいの?」
「ええ、それに身体が温まりますよ。雅様からの差し入れです」
確かに外は如月。かなり着こんではいるが寒さは一年で最も厳しい季節である。言われるままに克己が杯を傾けると、どこか緊張が解けないでいた咲綺や呉羽も手を出した。
「あ、ホントだ。甘くて…あったかいね」
「そうですね。温まります」
「確かに」
そして、身体が温まれば心も落ち着くというもので ―― 3人はいつしか気ままな話に盛り上がっていた。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


「だからね、正毅さんはいっつも私が作る料理を、ホントにおいしそ〜に食べてくれるんだぁ〜」
今までの緊張が嘘のように、満面の笑顔で惚気だしたのは ―― やはり咲綺が最初だった。
「大好きな人が、自分の作ってくれた料理を『美味いぞ』って言って食べてくれるのって、嬉しいですよねv」
「うん、それは僕も思う。天さんもいつも、『呉羽の料理が食べたくて、急いで帰ってきた』って言ってくれるから」
「そうそう! 正毅さんもそうなの。ね、そう言ってもらえると最高に嬉しいですよね♪」
これもある意味では酒乱というのか、酔うとその時々によって態度がかわる咲綺であるが、今回は惚気が出たらしい。可憐な花といった雰囲気ながらニコニコと嬉しそうに話す様は本当に幸せそうで、つい呉羽も引き込まれていた。
「天さんもそうですね。たまに片付けとかも手伝ってくれるし」
「へぇ、そうなんだ。正毅さんも手伝おうかって言ってくれることがあるけど…。でも私が正毅さんにしてあげられるコトってあまりないから」
だから、手伝っては貰わない。尽くすのが嬉しい ―― などと、臆面もなく言われると、呉羽も負けずと対抗していた。
「僕も大したことはできないけど…でも、側にいてくれって言われてるから。天さんの側が僕の居場所ですね」
ヤクザの仕事は手伝えないけど ―― といいながら、さりげなく惚気だす呉羽である。
「天さんは確かにヤクザだけど、本質はずっと優しい人だもの。あの人とならずっと側で生きていけるって、僕は確信してるから」
「うん、判るな。正毅さんもね。『俺が咲綺を必ず守る』って、いつも言ってくれるんだv」
「そうですね。それは天さんも言ってくれます」
―― と、呉羽と咲綺の話は尽きない。
一方、克己の方はといえば ――
「いいねぇ〜若いって…」
とすっかり聞き役に回っている。
何せ、料理など家事一般に関しては全くタッチしていない克己で、この話題には流石に入っていけないのだ。
この3人の中では最年長に当たる克己は、実は結構酒には強い。酔うと、最愛の龍也しか視界に入らないのだが、肝心の龍也がこの場にいないのだから、酔うに酔えないということもある。
(ま、いいか。僕だって龍也には大事にされてるもンね!)
とちょっと拗ねていた。



「でもねぇ〜正毅さんってベッドではたまにイジワルするんだよぉ〜」
散々パートナーのことを優しいとか言って惚気まくっていた咲綺が、今度はそんなことを言い出して ―― 流石に呉羽も克己も息を飲んだ。
「この前もね、お父さんたちとお酒を飲んだら、『約束を守れなかった罰だ』って、○○○なんか使って…。散々、私のことをいじめたりするんだからぁ〜」
といいながら、どこか嬉しそうなのは気のせいだろうか?
「もう、次の日に起きれなくなることとか、しょっちゅうだよねぇ〜」
「咲綺さん…それってヤバイんじゃ?」
正毅のいないところでちょっと酒を飲んだくらいでそんなお仕置きがあるのなら、この状態はかなりヤバイと思うのは、良介だけではないはずである。
「お仕置きか…そういえば、龍也も結構ヤキモチ焼きだよね」
もしかして、非情にヤバイ所にいるのではと気が付いた良介に、更に追い討ちをかけたのは克己であった。
「前に裕司さんと飲んだとき、大変だったもんね。髪に移った煙草の匂いにまでヤキモチやいててさ」
その時のことを思い出した良介は ―― サァっと血の気が下がるのを思い出し、慌てて席を立った。
そう、あの後は本当に大変でだったのだ。克己の寝顔を裕司に見せてもらった組の若い連中が2、3人程、暫く病院通いをさせられて ―― 。
「あ、あの…克己先生? 俺、ちょっと向こうの様子を見てきますね」
「え〜ちょっと、良介クン、聞いてってよ!」
「あ、あとでちゃんと聞きますから。ちょっと待っててください(汗っ)」
「…ふぅ〜ん。しょうがないなぁ〜」
すっかり酔って頬を紅く染めている克己は、はっきり言ってフェロモン全開である。それは咲綺や呉羽についてもいえることで ―― それぞれのパートナーの恐ろしさを知っている良介としては、これ以上ここにいるということは、間違いなく東京湾に沈められるか、新築ビルの基礎として深く埋められるかのどちらかである。



「この前もね、『上になって自分で動いてみろ』とか言って…すっごく気持ちよかったけど、流石に最初はねぇ〜」
と、一応恥ずかしげにそんなことを暴露する咲綺に、克己はピンと来るものがあった。
「あ…成程ね。それで…」
それは先日のこと、どこで用意したのかいわゆる『大人のオモチャ』を持ち出したり、騎上位を強制させたりと、同じようなことをした龍也を思い出し ―― それが元を正せば正毅からの入れ知恵だったということらしい。
そして、それを聞いていた呉羽が、負けず劣らず惚気を再開する。
「天さんは…そんなこと、しないですね。僕のことを大事にしてくれてるから。そんな鬼畜な真似はね」
「あ、酷いですぅ〜、呉羽さんってば! あのねぇ〜、こーいうのは、鬼畜って言わないの!」
「でもね、道具に頼るのは邪道だと思うけど?」
とは、自分も使われそうになったことのある克己である。
すると、
「でもね、道具の後に正毅さん自身に愛されると、凄く感じるんですよ? いつもとは比べようにならないくらいに」
と、咲綺はまるでそのときのことを思い出したかのように、ポゥっと頬を朱に染めた。



「龍也ってばね、外では『死神』とか言われてるみたいだけど、すっごいヤキモチ焼きなんだよね」
これなら自信がある克己は、今までの鬱憤を晴らすように饒舌になっている。
「例えばね、この前、ちょっとロスに出張に行ったら、もう帰ってきた日は大変でv。関空に着いたんだけど、その日は明け方まで寝させてもらえなかったし、こっち(東京)に戻ってくるまで一人で歩けないほどだったんだから!」
ちょっとロスに出張というのも ―― 咲綺や呉羽にしてみれば凄いと思うところなのだが、関西から東京までって…
「まさか、新幹線の中で…じゃないですよね?」
とは、この三人中では常識の残っている呉羽である。
すると克己は、
「やっだ、それは幾らなんでもねぇ〜。車だよ勿論。でも車の中でもす〜っと抱っこしてもらってたんだv」
と、更に煽ること煽ること…。
「もう、片時も離したくないって言う感じかな。ね、愛されてるでしょ♪」
と同意まで求められては、咲綺も呉羽も頷かざるを得ないというものである。



「天さんは…そうですね、僕がいないとダメみたいですね」
咲綺と克己の二人から煽られて、流石に呉羽も重い口を開かざるを得ない。
「僕のことをとても大事にしてくれるし…勿論、愛してくれるし。でも、僕は口下手なところがあるから、なかなか伝わらなくて…そういうときはやっぱり不安になるのかな?」
初めて天と結ばれて、流石にどんな顔で逢えばいいのか判らなくて、つい避けるようにしてしまったあの時。天の荒れようは酷いものであった。勿論、それほどまでに自分が愛されているということは、今では痛いくらいに判っている。
だから、
「天さんのお仕事を手伝うことはできないけど、でもそれ以外なら僕が支えて上げられることも在るかなって思いますね。例えばご飯を作るなんて些細だけど…でもそういうものじゃないかな?」
まるで自分と天は二人で一人 ―― みたいな台詞に、克己も咲綺も共感するところがあるのかうんうんと頷きあっていた。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


やがて ―― 冬の太陽がかげりを見せ始めた頃、
多くの客が雅に挨拶を告げて帰路に付く中、一種異様な雰囲気の男が3人姿を現した。
「あら…御揃いで。思ったより早かったわね」
その姿に一番に気がついた雅は、ころころと童女のようなあどけない微笑を向けて出迎える。
「雅様…このたびはうちの咲綺がお世話になっているようで?」
「来るのが遅れて済みませんでした。呉羽は…?」
3人中2人は、それでも一応社交辞令を欠かさないが ――
「…克己をどこへやった?」
実の孫である龍也に至っては、既に愛用のベレッタをホルダーから抜いて、眉間に狙いを定めている。
「まぁまぁ…なんて行儀の悪い。お客様の前でしょう? 全く…」
育て方を間違えたかしら?と首をひねる姿に、龍也のリミッターは既に解除済みである。
当然、周りの護衛の連中も慌てて止めようとするが、流石に銃までは持ち出さないまでも、正毅や天の鋭く威嚇する視線に、近づくことさえ躊躇われた。
「全く、もう少し華を愛でようと思ったのに…」
いくら身内とはいえ、これは流石に不味いと判断したのか、雅は諦めたようにため息をつくと、
「貴方たちの大事な人は、この先の東屋ですよ。別にとって食いやしてませんから、ご安心なさい」
それを聞くや否や三人は走るように東屋へ向かった。



「咲綺! 大丈夫か?」
「無事か、克己!」
「いるのか、呉羽!」
それぞれがそう叫んで襖を開けると、そこには振袖姿の3人の天使が幸せそうな顔で眠っていた。
「すみません…雅様のご命令で…」
生きた心地のしない良介が、全てを ―― 雅の企みで3人をここに集め、振袖を着せ、更に甘酒を飲ませたことを告げる。
「そうか…恨むなら、婆さんを恨めよ、良介」
カチャリと撃鉄をあげて龍也の銃口が良介の額に押し付けられる。
「あ、アニキィ〜」
「迷わず成仏しろ」
「ひぇぇぇぇ〜」
とその時、
「ん…あ、れ、たつやだぁ〜」
とろんとした濡れた瞳で克己が目を覚ました。
そして、
「あ、正毅さん? 大好きぃ〜」
「たか…し、さん? 逢いたかったぁ〜」
それぞれ目を覚ませば、つい今まで話していた最愛の人が眼の前にいるのだ。当然すっかり甘えモードになっていて、
「お仕事終わったの? じゃあ、帰ろうよ。僕、龍也の側がいいv」
「私も、正毅さんと一緒じゃなきゃやだぁ〜」
「出張は終わったの? じゃあ、一緒に寝てくれるでしょ、天さん」
いつもならベッドの中でも言わないような台詞で抱き付かれれば、嫌だとはいえないものである。
「咲綺、あれほど飲むなって言ったのに…またお仕置きだぞ」
「呉羽? 大丈夫か?気持悪くとかないのか?」
「飲みすぎだ、克己。全くお前は…」
つい今まで、怒り心頭に達していたはずの正毅・天・龍也の頬が揺るのも当然で ―― とりあえず気を取り直した三人は、酔って眠ってしまった恋人を、それこそ宝物のように大事に連れ帰って ―― どうお仕置きをしたかはいうまでもない。



一方、雅の方は ――
綺麗な華を堪能できたことを満足しながら、母屋の奥座敷にやってくるとそっと声をかけた。
「入りますよ?」
襖を開いて中にはいれば、そこは最新の器機が所狭しと稼動している。
そして、大画面のモニターの前では ――
「いや、雅さん。今日は本当にいいデータが取れた。感謝する」
「ほほほ…お役にたてて光栄ですよ。それにしても綺麗に撮れるものですね」
「ああ、全くだな…」
満足げに微笑んでいるのは、言わずと知れた佐伯あざみ。一応、ここに来るまではこちらも着物を着ていたはずなのに、この部屋に入った途端、いつもの白衣姿に着替えてしまったらしい。
だが、壮絶といってもいいほどの美貌に、これまた目もくらむような満足げな笑みを浮かべていたのは言うまでもない。

Fin.

Free Talk
浅葱: 天使たちのTea Party、いかがでしたか?
皐月: 雅さん、いいですね〜。私は(本編を読んだ)最初から雅さんにチェックをいれていたんですよ!
浅葱: あはは、ありがとうございます。雅サマはあらゆる面での黒幕なんですよ、うちでは。
皐月: ウチのあざみと似た感じですね。それに3人が振袖♪攻めたちは喜びますよ〜。
浅葱: そう、振袖! 一度着せてみたかったんです!
皐月: 似合うでしょうね、きっとvv実はイメージとして、咲綺は家の中で着物なんですよ。作中に書いてはいませんけど。
浅葱: おお、それは萌えですね♪。実は振袖姿って、似合うのもそうなんですが、もう一つは脱がすほうにも興味津々…。
皐月: はは、どこを解けば一気に脱がせられるというのを攻めは勉強しておかないといけませんね。
浅葱: それもありますが、着物って紐を一杯使うでしょ? ちょっとアブナイプレイなど…(きゃあ、何言ってんだか!?)
皐月: 使いますね、腰紐。(私が習っているのは殆ど使わないので苦しくないですけど)
・・・確かに攻めたちは遊びたがるかも?
浅葱: 天なら真面目にちゃんと解いて脱がしてくれそうですけど、龍也なんかアブナイですよね。絶対、途中で絡ませて拘束プレイ行きか、もしくはナイフでも持ち出して切っちゃいそう…。
皐月: 着物関係のものはどれもお高いものばかりなので切られそうになったら私は叫びますよ?(笑)切るくらいなら拘束プレイの方が断然OK!
浅葱: …ですよね? だから龍也イワク、「克己も(拘束プレイに)同意した」となるわけですよ(笑)。
皐月: 龍也、確信犯!(笑)
浅葱: そのかわり、流石に今回限りじゃないですかね。克己は二度と着てくれませんよ、きっと。
皐月: 3人の中でまた着そうなのは騙されそうな、嵌められそうな(スゴイ言われよう・笑)咲綺だけですかね。
浅葱: 確かに。でも咲綺は酔ってたら自分から脱いで、しかも丁寧に畳んで三つ指ついて、「おやすみなさい」って挨拶して寝ちゃいそうなイメージなんですけど?
皐月: あ、それもいいですね。正毅の顔が面白そう。でも咲綺は酔っていたら暑い〜って脱ぎながら誘いそうです。
浅葱: 「暑いから、正毅さん脱がせてv」って煽りながら、くぅ〜って寝ちゃうとか? どーもそっち路線ですね(笑)。
皐月: ええ!誘って、ひとりで先に寝ちゃう。面白そう♪(笑)さて、次は・・・
浅葱: カノウグループからのスペシャルプレゼントですね♪
皐月: そうですね。豪華なプレゼントvvしっかり受け取っていただきましょう!
浅葱: そして利用状況もかかさずチェック!ですね(笑)
皐月: ここにもあざみの手が確実に伸びてます〜。
浅葱: それはもう、お決まりですね♪
皐月&浅葱: では、次もぜひ楽しんでください(^-^)>"
(読者様へヒント! さて、攻3人はどんなふうに天使たちをつれて帰ったでしょうか? もしかしたらヒミツの扉が…)


それぞれのサイトへは↓のバナーからどうぞ♪ (別窓で開きます)
Wish  CRIMSON PASSIONS

wall:空中庭園 様
壁紙の提供元はコチラ↑