特別室
Room No.1 〜皇紀&魁〜


「ねぇ、これは何かあると思わない?」
皇紀はパートナーである魁に訴える。

数日前――・・・。
魁の母である万吏也が、“とにかく黙って、皇紀くんと泊まって来い!” と魁に渡したのは、ホテルの特別室招待券だった。
しかし、そのホテルは皇紀が永久に部屋をタダで使える・・・つまりカノウの系列ホテルだった。
万吏也だってそんなことは百も承知だろうにと、ふたりは疑問に思ったが逆らえないこともあって、泊まりに来たのだ。

このホテルに皇紀が泊まる時に使う部屋とは壁紙、内装など全てが異なっており、新鮮さはある。
だが、それだけではない違和感が、皇紀にはとても強く感じられるのだ。

「・・・万吏也サンが何か企んでるのは当然だな」
しかしふたりはその違和感が何なのか未だ気付かない。

「あ、やっぱりいつもと景色が違うね」
万吏也がこんなことをした意図を突き止めようとしたが埒があかず、今はふたりでジャグジー付きのバスタブに浸かっているところだ。
「・・・そうか?」
圧倒的な高さから誇る夜景は、表現出来ない程の素晴らしさで、自分があたかも何者かになったような錯覚さえ起こさせる。
尤も、皇紀は世界中の一流ホテルに泊まったことも、これより眺めの良い景色を見たことも多々あり、そして魁は景色に感動するような感性は持っていない。
このふたりに限っては、高いところから見下ろす感覚に慣れてしまうという危惧は無用だった。

「この辺にな〜んか、視線を感じるんだけどなぁ?」
バスローブ姿で部屋を歩き回る。
「バスから上がって確認したら、この部屋のチケットは母さんが用意したものみたいだし・・・」
カノウの人間にしかわからない施しが、チケットにしてあるのだ。
「皇紀、いい加減にしろ。気にしなきゃいいことだろ」
「・・・そうだね」


「・・・っぁあ・・・っ・・・」
「どうした?今日はやけに敏感だな」
含み笑いの魁の吐息さえ、感じる要素になってしまう。
その理由は―――・・・。
「だって!わかんないけど、誰かに見られてる気がするんだよっ」
そしてそして。
「・・・感度がよくなるのはいいことだな。誰か知らないが感謝しよう」
「魁!・・・あっ・・・あぁーーーっ!!」
皇紀は見つけてしまいましたとさ。
視線の原因を。
しっかり1ラウンド魁に喘がされた後に。

「魁、これだよ」
皇紀が指を差した先には、本当に気をつけて見てみないとわからない程小さなカメラが埋め込まれている壁だった。
「・・・万吏也サンだな。この前も俺と皇紀を呼び出して根掘り葉掘り聞いて来ただろ?」
「あ、ああ、アレね」
万吏也は少し前、魁と皇紀を家へ呼び付け、ふたりの性生活についてかなり踏み込んだ部分まで尋ねて来たのだ。
「他の、例えば裕紀が相手とかなら何でも話せるけど、万吏也さんだとね。女性だし、何より魁のお母さんだから恥ずかしかったよ」
という割には、嬉しそうに楽しそうに暴露していたように思うが・・・と魁は心の中で呟く。

「で、どうする?コレ」
「・・・俺は別に見られても構わないからな。皇紀次第だ」
皇紀は暫らく悩んだ後。
「よし!後でダビングしてもらおう♪」
このままエッチを続けることにしたようだ。

そのカメラには、裸でピースサインをする(魁は皇紀に言われて、させられている)ふたりや、ワザとディープキスをする様子、最後にはカメラの存在も忘れてふたりの世界に入り込んでいる皇紀と魁が収められていたとか、いないとか・・・。

ちなみに裕紀とその恋人・聖も同様に試した結果、ふたりはカメラの存在に欠片も気付くことなく、愛を語り合っていたとか・・・。
双子でも違いがこんなところにまで出るのだと、カメラを提案したある女性は、いい資料を得られたと喜んでいた。
カメラはとても小さいにも関わらず、画像は驚くほど綺麗だった。

Next Room


それぞれのサイトへは↓のバナーからどうぞ♪ (別窓で開きます)
Wish  CRIMSON PASSIONS

wall:STUDIO BLUE MOON 様
壁紙の提供元はコチラ↑